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犯人は私
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しおりを挟む私が犯人ですと告白した時の彼の顔ときたらそれはもう、笑ってしまうぐらい
だった。彼にとってもそれが予想外の出来事だったという事なのだろうけど、
探偵と名乗るからにはそれはダメなんじゃないのか? と思う訳ですよ私は。
彼がそんな事すら予想出来ない程度の探偵であったと言ってしまえばそれまで
なのだが、でもこの人は一応は名の付く探偵なのでしょ? それとも迷の方の
探偵だったとでもいうつもりなのでしょうか?
まあそんな言葉遊びはどうでもいいですよね。それよりも理由の方が知りたいの
でしたよね? 確かに理由を知りたいという気持ちは私にも分かります。だって
私自身、どうしてこんな事をしでかしたのかがよく分かっていないのですから。
*****
その日は朝から頭痛がしていたのだ。
流石に昨日は飲み過ぎたのかもしれないし、自分で言いたくもないが歳なのかも
しれないなと思ってしまった。
「先生、仕事ですよ? 早くしてください」
助手のエムデルがそう言って私をソファの上から動かそうとするが、私は動きた
くないのだ。もう少し労わってくれてもいいだろうに、彼女が私の助手として
ここへ来るようになって三カ月でもうこれだ。
私の助手になりたいとやって来た時はあんなにも可愛らしい田舎娘だったのに、
今ではこんな擦れた女になってしまった。ああ、世間とは世知辛い。あの頃の
エムデルなら私にこんな無体を働く事は無かっただろうに。
「それは私が行かないといけない仕事なのかね? 」
「ええ、そうですよ。仕事をしてもらわないとたまった先生のツケが払えなくなり
ますからね。それでもいいのなら私も無理にとはいいませんが? 」
一体何時からこんな事になってしまったのか?
これでは私がまるでただの飲んだくれのようになってしまうではないか!
だから私は仕事へ出かける事にした。
「場所は? 」
「クリンツクツ通りのマンションです」
やっぱり行くのを止めようと思った。
*****
「先生、着きましたよ」
「ああ、やっとか。疲れたな」
クリンツクツ通りまで自転車でえっちらおっちらと1時間の長旅だった。
「何をいっているんですか! 先生はほとんど漕いでいなかったじゃないですか!」
タンデム式の自転車はなかなかの発明品だと私は思っている。
「で? ここの何階かね」
「最上階です」
「五階か」
「六階です」
確かに間違えた。
でもそんなにすぐに言い直さなくていいんじゃないのか?
だいたい、相場は5階だろ? どうして6階なんだ?
というかワザと最上階って言ったよね、エムデル?
私が間違えるのを狙ってたよね?
言い直すの狙い撃ちの速度だったよね?
「行きますよ、先生」
当たり前のように私の前を歩くエムデル。
私はエムデルの後について行くが、もちろん彼女が私の助手である。
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