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しおりを挟む車に乗り込み、水を飲んでようやく落ち着いた私は考える、これからの事を。
家族の事が頭に浮かんだがもうどうでもいいと思えた。もう疲れたのだ。
今まで私がどれだけあの人達に尽くして来たのかと考えれば十分に役割は果た
したと思う。もう自由にさせて欲しかった。
そう、自由に。
その言葉が私にもたらしたものは結局何だったのだろうか?
この男の家に上がり込み勝手に振る舞ってみたが何も言われず、何かをされる
訳でもなかった。
ある程度の覚悟はしていたが、臆病なのか? ただのいい人なのか?
おそらくはただのいい人なのだろうと思う、だから私はそんな男に付け込む事に
したのだ。それが碌に眠らずに考えた答えだった。
とりあえず目覚ましはさっさと止めた。
この男に何処かに行かれては困るのだ、そして腹ごしらえをする。
昨日から何も食べていない、取り敢えず何かを腹に入れたかったのだ。
勝手に冷蔵庫を漁って料理をした。
久々の食事みたいな感覚で、とにかくがっついてしまった。
だからケチャップが手についてしまったが、何だか受け入れがたくてすぐに
拭いたら男が眉を寄せた。気持ちは分からなくはない、下の子たちがそんな事を
したら確実に叱っていた事だろう。でも男は怒る事はせずに私をドライブへと
誘ったのだ。
ドライブに出てからしばらくして不審な車がついて来ていた。
それがあの男の家の者だという事は車をみればすぐに分ったが、
まさかこちらが止まるなんて事は考えてもいなかった。さらに降りた来た男達を
見て私はここで終わりかなと思った。
いつもならそこで諦めていただろう、でも私はもう自由だった。
だから言ったのだ「死にたくなければ今すぐ車を出しなさい」と、
そして彼は車を走らせる。見事な運転であった事は確かだった。
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