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そして天使がやってくる
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しおりを挟む「まあ、そうなるわな」
勇者御一行がやられる場を見ていたその男は特に興味もなさそうにそう言った。
まあ実際は少しばかりは興味があったのだが、そんなそぶりを見せるなんて事を
するなんて恥ずかしすぎるのでやらない。それが彼なりのルールであり、それが
カッコいいと思っているのだから仕方が無い。
腕を組み遥か上空から見下ろすというのが彼にとって今すべき事である。
だから悪魔大公に殺されそうになっていた弟子でさえも見捨てたのだ。
そもそも助けに入るなんて事を1ミリも考えてはいなかったし、死んでしまった
からといって悲しむなんてこともなかった。誰だって生まれたからには死ぬもの
だという考えもあるが、そもそも勇者と呼ばれていた者を弟子だとは思ってはい
なかったというのが一番の理由だった。
彼等の間には力の差が明らかにあった。
それを数値で表すのであれば勇者御一行が384だとしたら、悪魔大公はという
と3万を超えている。それぐらいの力の差があったというのにどうして戦いを挑
んだのかが分からない。寧ろ死にたがりなのでは? とさえ思ってしまえたから
傍観していた。
分かり切った当然の結果。
そんなものを見て喜ぶような年寄りの感性ではないから何も面白くもなかったが
ただただ特別な事が起きるのではないのかという淡い期待を抱いていた。それは
アタリなんて存在しないガチャを本当は当たるのでないかと引き続けるような感
覚。結果はなにも起こらずじまいで、アタリなど存在しなかった事が証明された
というだけだった。
「お前は一体どういうつもりなんだ? 」
丁度横で同じようなポーズをとっているそいつには羽がついていた。
そんな事を天使に聞かれた所で答えるつもりもなかった。これはこちらの不備で
はなくそっちの不備なのだから、どうにかしたいのであればそれはそっちでどう
にかするのが役割というものであろうという思いから無視をした。
そのまま地上へと降り立った時にはもう、そこには勇者御一行の残骸しか残って
いなかったがそれでも降りたのは後始末をする為だった。
「なんだお前は! 何処から来た? 」
突然の出来事に驚いた悪魔大公。でも彼にとってそれはどうでもいいような些細
な事でしかなかったので無視。そんな事よりもやらなければならない事が彼には
あったから手を払う仕草をし、悪魔大公もそれだけで彼に道を開けた。
「おい、急にどうした? 何をしている? 」
「見ればわかるだろう、墓を掘っているんだ」
「墓? 何の為に? 」
「こいつらは名を馳せる前に死んじまったからな、せめて誰かに知っておいて欲し
いんだよ俺は。それっぽいものが残っていれば誰かが思い出すかもしれないし、
墓参りとかしたいだろ? それに金の匂いがすれば有象無象が寄って来てお前達
にとってもいい事だろ? 」
「それはそうかもしれないが……」
「まあ、死んだやつからしれみればどうでもいい事だろうとは思うけどな。あいつ
等にも家族ぐらいはいただろうからな、少しの足しにはなるだろうよ」
そう言いながら自作のスコップで穴を掘っているとついつい必要以上に掘ってし
まうのは悪いクセが出てしまった為で、何かしらの修行をしているつもりになっ
てしまったらもう止める事が出来なくなってしまうのだ。ザックザックザックと
掘り進む速度は衰えない。
「おい、もういいだろ? そんなに掘ってどうするつもりだ! 」
そんな声が頭の上から聞こえてきて漸く手を止め、上を見上げれば天使の顔が大
分小さく見える。どうやら少し掘り過ぎてしまったらしい。もっと早く止めるべ
きだっただろうとは思ったが、まあいい。これは貸しだからなと天使に勝手に貸
しつけておくのも彼らしいがもちろん天使はそんな事など知りはしない。
上に戻る為に魔法を使えばよかったというだけの事だったが、そうせずに飛んだ
事が良くなかったのだろう。少しばかり踏ん張っただけで、それは飛ぶためには
必要な動作だったのだ。だから彼には何ら悪意なんてものは存在しない。
ゴゴゴゴゴゴ! と地面が鳴いたと思ったら穴から男と一緒に水も噴き出したの
だ。それはただの水ではなく、温かい水。乳白色の温泉を掘り当ててしまった。
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