お前しかいない

菫川ヒイロ

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「ここでいいの? 」


 渡辺さんはドアを開けて入って行った。
 
 
「ウシッ」


 俺は小さくガッツポーズをする。
 まずはここまで連れてくる事に成功したのだ、
 第一関門はクリアだろ。
 
 
 まあ、ここからが大変なんだろうけど……
 
 
「何も無いわねここ。本当に活動しているの? 」


 渡辺さんは中を見渡しながらいろいろと言ってくる
 
 
「入部希望の人ですか? 」


 鈴がいきなり入ってきた渡辺さんに聞くが
 
 
「違うわ、あの人がどうしてもって言うから見に来ただけよ。
 って、何勝手に撮ってるのよ! さっさと消しなさい」
 
 
 カメラを向けた立花さんをすぐに注意する。
 
 
「嗚呼、はい。すみません」


 この人は学習しない、というかワザとやっているのか?
 立花さんはすぐにカメラを下ろした。
 
 
「で、あと一人はどこにいるの? 」


「あと一人とは? 」


「あんたさっき4人居るって言ったじゃない。
 でも、1、2、3人しか居ないでしょ? 」
 
 
 渡辺さんがそういうので俺は数えてみた。
 
 
「1、2、3、4」


「はあ? 何勝手に私も数にいれてるのよ! あんた馬鹿なの!
 それにね、4人で何が出来るって言うのよ! ナメてるでしょあんた達! 」
 
  
 渡辺さんがまくし立てて来るが、鈴は無視、立花さんはカメラを見ている
 そしていきなり大きな声を上げると
 
 
「あ! 何か見た事あると思ったら、あなたモンブランじゃない! 」


 手でジェスチャーしながら言う。
 
 
「だったら何? 」


 渡辺さんは反応する。
 
 
「モンブランって嗚呼、なんだプロか。さすがプロは言う事が違うわね。
 でプロならすぐに出来るわよね。これやってみてよ! 」

 
 鈴が渡辺さんに一枚紙を渡す。
 
 
「何ですかそれ、もしかして加納さんが書いた脚本ですか?
 私にも見せてください! 」
 
 
 立花さんが飛びつくが
 
 
「あんたはいいから、さっさとカメラの準備しなさいよ! 」


 鈴は立花さんには見せないようにする。
 渡辺さんは紙に書かれた文章を読んでいた、ブツブツとつぶやきながら。
 
 
「いいわ、やってあげるわよ。見ておきなさい愚民ども! 」


 大見得切ってそこに立つ渡辺さんは、流石に雰囲気があった。
 
 
「回すよ」
 
 
 立花さんがカメラを構えると、そのカメラに向かって渡辺さんは台詞をいう。
 
 
「だから言ったでしょ、イチジクは痔に効くって! 」









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