お前しかいない

菫川ヒイロ

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 何処かで聞いた事のあるようなその名前だったが、思い出せずにいる俺。
 
 
「昔、子役で有名やった子や。ほら、あのお菓子はモンブランのやつ」


 三田村は手でジェスチャーをしながら言う。
 俺はそのジェスチャーを見てようやく思い出した。
 小学生だった頃にCMがよく流れていたっけ。
 
 
 じゃあそのCMに出ていた子が!? 
 まさかそんな大物がこの高校に居るなんて!!
 
 
「それって本物って事? 」
 
 
 三田村に念押しする。


「そやで、本物の役者や。今はもう活動してへんのちゃうかな。
 最近は見いひんしな、それに活動しとったらこんな所来てへんやろ?
 それでも一応は女優やっとったんやし、渡辺千里なら文句はないやろ? 」
 
 
 文句とかそう言う事ではない気がするが……
 そりゃあ映像部に入ってくれるのであれば文句はないし、ありがたい。
 でも、
 
 
「もう、演劇部とかに入ってるんじゃ」


 だいたいそういう人を放って置く事はないと思う。


「いやそれが入ってないねん。演劇部の部長さんがじきじきに勧誘に来た
 らしいけど断ったって言ってたわ。そやからチャンスやろ」
 
 
「チャンスって、そうなのか? 」


 何か滅茶苦茶な事を言っているが、断られるとしても一度、
 聞いてみるくらいはいいかもしれない。
 俺は三田村に渡辺千里の居場所を聞いてさっそく会いに行った。
 
 
 
 
 *****
 
 
 
 
「あの、渡辺さん、ちょっと話いいかな? 」


 恐る恐る聞いてみる俺。
 最初は低姿勢で行くべし。
 これは三田村の助言だった。
 
 
「何よあんた、告白なら間に合ってるわ。他の奴にしなさい」


「そうじゃなくて部活の話なんだけど」


「部活? 入らないわよ私は演劇部なんて! 」


「映像部なんだ、僕達は映像部。
 よかったらちょっとだけ見に来たりしないかな? 」
 
 
 話に興味をもったなら、次はとりあえず教室まで連れて行く事。
 これも三田村の助言。
 
 
「映像部? そんな部活この高校にあった? 」


「一応は、まだ部活認定はされてないんだけど、あるにはあるんだ」


「そう、人数はどれくらいいるのよ」


「えーと、3、4人ぐらいかな? 」


「何よそれは、まあいいわ。見るくらいなら行ってあげるわよ。
 ちょうど暇だったし、案内しなさい」
 
 
 俺は渡辺さんを映像部へと案内することに成功する。
 ありがとう三田村!
 
 









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