お前しかいない

菫川ヒイロ

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「えっと、じゃあまず今回の撮影は基本的には渡辺さんを左側からずっと
 撮り続けます。撮影場所はこの部屋でほとんど撮りますが、
 主人公が叫ぶシーンだけは別の場所で撮りたりと思っていますが
 今の所まだ決まっていません。
 何処かいい所があれば言って下さい。
 あと、スケジュールを一応立ててみたので確認お願いします」
 
 
 俺は今後の予定を三人に説明したが、何か感じがいつもと違っていた。
 
 
「編集の時間もうちょっと取ってもらえますか? 私、余裕持ってやりたいので」
 
 
 立花さんがさっそく注文を付けて来た。
 
 
「そうね、でも私が主演なんだから撮影はすぐに終わるわよ。
 虹子は私を綺麗に撮る事だけを考えなさい! 」
 
 
「いやいや、千里がすぐに終わるなんて事がある訳ないから。
 そうね、最悪どこか切ってもいい所は決めておくべきかも知れないわね。
 今のうちに決めておけばもたつく事もないだろうし」
 
 
「はぁ? 私がそんなに下手糞な訳ないでしょうが! 」


「私は時間さえ貰えればいいんだけど? 」


「これは栄ちゃんと千里の問題だからそっちで決めなさい。
 でも時間が足りませんでしたなんて言って中途半端なものにしたら
 分かってるよね? 」
 
 
「分かってるの、栄ちゃん! 」


 なんだかんだで俺の方に話が来てしまったが、
 確かに祭りまでには完成させる事は絶対にしないといけないし、
 中途半端なものになんかにしたくわないが、
 いきなり妥協をしたくないのが本心だ。
 
 
 とは言え、これが初めてなので、これからどうなるかなんて何も
 分からない中でやって行かなくてならないのも事実で
 さっそく今も問題が起こっているし。
 
 
「これは別に妥協ではないよ栄ちゃん。ただの取捨選択」


「鈴ってそういう所シビアでいいよね」


「私だってそれくらいは分かってるわよ、栄ちゃんが決めればいいんじゃない。
 あんたの映像部なんだから」
 
 
「ちょっと待って千里。映像部は私が作ったですけど」
 
 
 なんだかこの三人を見ていると姦しいなと思ってしまい
 いつの間にこんなに会話をするようになったのかと考えていたら
 やっと分かった。
 
 
「嗚呼、みんな名前で呼んでるのか! 」


 俺はやっと違和感の正体に気づいた。
 
 




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