お前しかいない

菫川ヒイロ

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「あのさ、ちょっといい? 」


「どないしたんや、深刻な顔して。闇金にでも手出したんか?
 あれはな、取り立てがきついから大変やろ。俺の所に来とけば
 友達金利で貸したのに、残念やったな」
 
 
「いやいや、そんなものに手は出してないから大丈夫だよ。
 遅くなったけど、渡辺さんの件はありがとう。アドバイス、役に立ったよ」
 
 
「かまへんかまへん。上手い事いったんは君の力や、お礼言われるほどの事や
 ないわ。それで、なんか用か? 」
 
 
「嗚呼、そうなんだ。ちょっと聞きたいんだけど…… 」


 俺は三田村に撮影に適した場所を知っていないか聞きに来たのだ。
 
 
「なるほどな。そういう事やったら…… 」
 
 
 謎の情報力は今回も発揮され、三田村はわざわざ地図を書いて教えてくれた。
 本当に何でも知っている奴である。だから俺もついつい頼ってしまうんだ。
 そして俺は早速その地図の場所へ行ってみた。
 
 
 
 
 *****
 
 
 
 
「悪くはないかな」


 多少イメージと違う所はあるが、俺の注文通りの場所ではある。
 ここでなら周りの目も気にする事なく撮影出来るだろう。
 俺は他の場所も一通り確認してから学校に戻る。
 
 
「やっと来た。一体何してたのよ! あんたが居ないと始まらないでしょうが! 」


 教室に入ってそうそう渡辺さんが言って来たので、今日もいつも通りだなと
 感じながら席に着く。なんだか少し彼女の事が分かって来た気がした。
 
 
「えーと、外での撮影場所が決定しました、ここです! 」


 俺は三田村に書いてもらった地図をみんなに見せる。
 
 
「ここのスペースはどれくらいあるの? 結構距離とるよね? 」


 立花さんがいろいろと聞いて来るが、二人は興味がないようだ。
 俺はいろいろと説明しながら、立花さんも連れていけばよかったと
 今更ながらに思う、やっぱり経験の差だろうか?
 
 
「私も今度行ってみるよ、確認しといたほうがいいだろうし」
 
 
 こうやって時間が減って行くんだなと実感する。
 そこまで頭が回らなかった事はちゃんと覚えておかないといけない、
 俺の失態だった。
 
 
「栄ちゃん、次はどうするの? 」


 鈴に言われて、こんな所で止まっていてはいけない事を思い出す。
 今後もこんな事は何度もあるのだろう、それでも俺は良い物を作りたいし
 成功させたいから前へ、前進あるのみである。
 
 






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