お前しかいない

菫川ヒイロ

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 困った時はどうするかなんて事は決まっていた。
 今までずっとそうやって来たのだから、今回も当然のように
 俺は赴いた、三田村の所へと。
 
 
「ほう、そうかそうか。でも流石に今からやと、ちょっと難しいな。
 それに渡辺さんと張り合えるレベルとなると尚更やで。
 プロレベルの演技が出来る一般人なんてそうそう居らんからな。
 そうなると、やっぱ演劇部から引っ張ってくるしかないんとちゃうか? 」
 
 
 確かに演劇部ならそれなりの演技は出来るのだろうが、ただ問題があった。
 
 
「でもあかんか、渡辺さん演劇部の勧誘を大々的に断ってるからな、
 向こうさんが嫌がるかもしれへんな」
 
 
 そう、そこが問題なのだ。
 とは言え一般人で探すとなるとなかなかに難しい。
 
 
「まあ、しゃあないな。君らとは何かしら縁があるからな、聞くだけ
 聞いてみるかな。あんまり期待せんと待っといて」
 
 
 三田村はいつもの笑顔でそういうと行ってしまう。
 本当に三田村はの笑顔は最高にかっこいい、惚れてしまいそうなくらい。
 
 
 
 
 *****
 
 
 
 
「そうね、こっち側に来れる可能性はあるとは思う。
 その片鱗は十分に見せてもらったからね、
 でもこっち側に来るって事の意味は分かってるんでしょ?
 だからこんな脚本にしたんでしょ?
 鈴はもう腹をくくるべきよ、だって私達は生み出す側の人間なんだから
 どうしようもない生き物なのよ私達は! 」
 
 
「何よ急に、何でそんな話してるの? 」


 私は二人がいきなり話だした事について行けずに戸惑う。
 
 
「千里は気にしなくていいよ、これは鈴と栄ちゃんの問題だから。
 それに私が首を突っ込んだだけ、余計な事してるの」
 
 
 虹子はそう言うけど私だって言いたいことはあるのだ。
 
 
「分かった、分かりました。だから今回はこのままで行かせて。
 最後くらい私の我が儘、通させてもらってもいいでしょ?
 これくらい許されてもいいでしょ? 」
 
 
「そう、それならいいわ! 今回は納得した事にしとく」


 鈴も虹子も私の知らない所で勝手に話を始めて、終わらすとか
 本当に何なのだろうか、私って?
 この二人にとって私の存在価値はどうなっているの?
 
 
「ねえ、二人とも私の事どう思ってる? 」


 気になった事はすぐに聞くに限る。
 
 
「なによ急に。友達に決まってるでしょうが! ねえ? 」


「当り前よ! 何で今更そんな事」


 そんな二人の返事に私は言葉が出ずに結局、


「ねえ、もう一個ケーキ頼まない? 」


 なんて言ってしまうのだ。
 

「まだ食べるの? 」


「私も頼もうかな? 」


「じゃあ虹子はいらないのね」


「もちろん食べます」


 こうして私達は今日も姦しく過ごすのだ。





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