32 / 50
32
しおりを挟む「どうも初めまして、小暮洋といいます。よろしくお願いします」
その日、やっと私の相手役が決まった。
一応、元演劇部員らしいが実力はの方はまったくわからない、
未知数であり、そこをどうにかするのが栄ちゃんの今回の課題である。
だから私は自分の演技に集中しようと思っていたのに……
撮影が始まれば、カット、カット、カットの連発で全く進まない。
こいつ本当に演劇部員だったのか? と疑いたくなるくらいのポンコツ具合に
私は呆れていた。
「すいません! 緊張してるんすかね? 」
何度も聞いたその言葉に「お前の台詞はそれじゃねえだろ! 」
と言いたくなったのはきっと私だけではないはずで、そもそも緊張って何だ?
そんなものする余裕がお前にあるとでも思っているのか?
まったく使いものにならないポンコツを一体何処から拾って来たんだ
栄ちゃんは? 今すぐ返しに行って欲しいくらいだ。
「大丈夫っす、大丈夫っす。これでも一応、主役張ってたんで
きっちりやってみせますから。 あーはいはい。大丈夫っす、大丈夫っす。
しっかり頭に入ってるんで見といて下さいよ
時間もったいないんですぐやってしまいましょう! 」
栄ちゃんの説明もろくに聞かずに、調子のいい事ばかり言って
結果、ろくに内容も理解出来ておらず、台詞もすぐに飛んで
お前の頭の中には何が入っとるんじゃい、スカスカじゃねえか
どんだけ時間を無駄にすれば気が済むのか、嗚呼、マジで殴りてぇ
*****
「栄ちゃん、千里がもう限界みたい」
鈴に言われて見てみればかなりまずそうだったので
「一旦休憩します」
さすがに無いとは思うが、千里が崩れてしまってもいけないので
間を置く事にした。
それにしてもこんなに酷いものとは思って無かったので、
正直驚きすぎて何もできずに、ずっと見てしまっていた。
俺にとって役者の基準が千里になっていたので、まさかこんなに何も
出来ない奴が居るなんて思ってなかったのだ。
始めはわざとやっているのかと思って仕方なく見ていたが何も出ず、
ここから何か出るのかと思って待ってみても何もでない、
せっかく三田村が見つけて来てくれたのに、どうしてこんな事になったのか?
「千里、お前って凄かったんだな」
だから俺はしみじみと彼女に言ってしまった程だった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
6
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる