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しおりを挟むムロはどうしていいのか分からなかった。
だから何もしないという事を選んだ。
それはムロが今まで生きて来た中で行って来た行動原理である。
魔界に来てもそれは変わらない。
自分から何か行動するという事が身の危険につながると思ったムロのこの選択は
結果的に良い方向へと導いてくれた。
抵抗しないと認識されたムロは牢屋から出され、部屋が用意されたのだ。
ただそれはムロが自由に生活出来る事とは関係がない事ではあったが、あの
冷たい場所での生活をする事を考えればこの差は大きい。
「ああ、また始まるのか…… 」
トカゲ顔の奴が部屋まで迎えに来たのでムロは後について行くと、そこには
一人の男が待っていた。
その男の名はジルンバ、魔王に召喚された者である。
ムロ以外にも魔王に召喚されたものが5人おり、この男もそのうちの一人だ。
「んじゃあ、始めますよ! よろしくお願いします」
首をポキポキと鳴らし、肩をグルグル回しながらジルンバは言う。
そうして放たれる炎にムロは焼かれるのだ。
ジルンバは炎の適正を持っていた。
召喚者にそれぞれ適正があり、炎、氷、風、土、雷とそれぞれが使うが、
ムロの適正は眠るである。
攻撃の面で見れば何の威力もなく、使えば術者が眠ってしまう為に
意味の分からない適正ではあるが、実際そうなのだから仕方がない。
ただこの眠るという能力はいかなるダメージも全て回復してしまうのだ。
だからムロはこうして他の召喚者達の術の練習台として使われている。
そしてムロはすぐに眠るを発動する、いくら自動回復するとはいえ、攻撃されれ
ば痛みを伴うからだ。
ムロは痛いのは嫌いだった。
だからすぐに眠るを発動して逃げるのだ、夢の中へ。
そうやってどうにか自分を守っていた。
そしてまたムロは部屋のベットの上で目が覚める。
どうにか生き延びた。まだ生きている。死なずにすんだ。
目が覚めるといつもその言葉がムロを支配して、ムロは涙を流す。
ガチャっとドアが開けられれば、またムロはトカゲ顔の奴について行く事になり
それがこれからもずっと続く事をムロは受け入れなければならなかった。
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