ワイが天下無双の浪速の虎!!響也様じゃぁ!!

桂木 鏡夜

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いけすかんやっちゃの。

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 夕方6時頃。

ドカッ!バキ!

 鈍い音が学校の体育館裏で鳴り響き、地に崩れ落ちていく緑色のブレザーを着た他校生。

 そして、その前に堂々と佇む黒い学ランを着た一重で口角がやけに上がりニヤケ顔の男がいた。

 身長は173センチで細身の筋肉質。

 そして特徴的なのがボウズの髪を真っ赤に染め上げ横に三本のソリコミラインと両耳にピアス。

 それともう一つ、いつも首にヘッドフォンを着用していて耳当てには虎と書かれた何ともダサいファッションだ。

 彼こそは高校一年にして巷まで名の轟く喧嘩最強【浪速の虎】と二つ名を持つ神崎 響也カミサキ キョウヤだ。

「がはははは!!何回挑戦したかて無理や!ワイは強い!最強!天下無双の王様じゃぁ!!」

〇〇〇〇

  あれから2時間後。


ガタンゴトンガタンゴトン!

 電車の音が鳴り響く高架下は陽が落ちると昔ながらのスナックやらのネオンが灯され、飲屋街となる。

  そんな中でジュウジュウと美味しそうな匂いを立ち上がらせる小さなホルモン屋に響也はいた。

 時間も時間なので客席は満席だ。

「あんたまた店番サボって何処ほっつき歩いとったんや!?」

「あーあー。相変わらずオカンは煩いのぉ。喧嘩や喧嘩。」

 タバコを堂々と蒸す響也は力こぶを自慢げに見せびらかすと、ガコン!と母の鉄槌が響也の頭頂部に落ちる。

「ぬぅぉ!!いったあぁ‥。何晒す!!?」

「店でタバコ吸うなゆうたやろ!!それに喧嘩ばっかしてやんと早よ配達行ってこい!!近所のスナックキズナさんに出前頼まれとんねん。」

「えー、キズナぁ‥。」

 響也は頑なに嫌そうな顔を浮かべる。

 何故なら、そこのママは何故か響也の事をかなりのお気に入りで、やたらと触ってくるのだ。

 ママ自体は30代後半で中々の美人ではあるが、響也からしてみれば自分の母と変わらないオバちゃんな訳で正直、キモいの一言だった。

 響也が嫌そうな顔を浮かべるのを無視して母は響也に串焼きを手渡し、「ゴタゴタ言わんと早よいってこい!」と言い放った。

「うぃ~。」

 涙目になりながら響也は手に持つタバコを灰皿に擦り付け、串焼きを持ち店から出ようとする。すると常連のオッサンが「うししし、またこっ酷くやられとるのぉ。ここで飲む酒はええ肴付きや!」と面白そうに冷やかした。

「人を肴にして楽しむなオッサン!俺はいっこも面白い事あらへんぞ!」

 そう言い残して扉をバン!っと強めに締めると、響也はスナックへと向かった。

 響也の家系は母1人、子1人の母子家庭だ。父は物心つく前に亡くなっていて、男勝りな母1人で育てた。

 焼き鳥屋は元々、父の両親が商いをしていたが、腰を痛めて療養となり、一度締める寸前だったが、その当時一緒に働いていた母と父がその後を継ぐ事となった。

 しかし、しばらくして父は倒れ、そのまま亡き人となったが、父と2人で頑張った思い出の店を潰したくは無いと母1人で必死に切り盛りをし、今に至る。

 母の男勝りな性格のおかげか、母との会話を楽しむ為に来る客も多く、売り上げも赤字にはならず繁盛し毎日を忙しく過ごしていた。

 だが飲み屋なので、夜が基本となる為、母は響也と少しでも一緒に居る時間を増やす為に、焼き鳥屋の上を家にした。

 だから否が応でも帰れば焼き鳥屋を響也は手伝う事となるのだ。

 ガチャ、っとキズナの扉を開く響也。

「ちーす。配達もってきたでぇ。」

「あら、響也ちゃんやない。相変わらず可愛いわぁ~。」

 入るなり直ぐにキズナのママが擦り寄ろうとしてくるので、近くにあった椅子で其れを阻止する。

「ちょっと、なんやのこれ。釣れないなぁ~。私こう見えてめちゃくちゃモテるんよ。」

「オカンと一緒の歳のオバハンに何も思うかい!!それより焼き鳥コレここ置いとくで。」

 響也はそそくさとカウンターに焼き鳥を置くと、逃げる様に店から出た。

「本間にええ男なったわぁ‥。」

 帰りの道中。

 ドカドカ!と飲み屋の裏側で騒がしい音と大きながなり声が鳴り響く。

「なんじゃこのクソガキ!!」

「すみませんね。これでも僕の父なので。」

 響也は勿論、喧嘩と知れば急いで観戦しに行く。

 どうやら酔っ払いのイザコザの様だ。

 酔っ払いが3人に一人は倒れていて、その倒れた爺さんを庇う様に前に立ちはだかる少年がいた。

  歳は響也と同じぐらいだろうか?キレイな顔立ちにメガネを掛けている。

「ガキが調子こいとったらあかんぞ。」

真司シンジ!危ないから下がってなさい。」

「父さん。こんな酔っ払いに頭下げる必要なんかないさ。それに先に手を出したのはあっちだろ。」

 その少年はそう言って側にいる父にメガネを託すと構えを取った。

「ガキが大人に勝てる思うなよ!!」

 酔っ払いの一人が真司に躍り出ると、ヒラリとその攻撃を躱し、真司の拳が酔っ払いの顔面を捉えた。

 バギィ!!

 鈍い音が鳴り響き、酔っ払いは吹き飛ばされ、ゴミ袋が積み重なった場所にガラガラと倒れ込んだ。

 酔っ払いは先の一撃で気を失った様だ。

(あいつ、見かけに寄らず強いやないかい。)

 響也は強い奴を見るとワクワクするタイプだ。

 「こんガキ、何かやってんぞ!同時に行くぞ。」

酔っ払いは2人がかりで襲い掛かる。

 だが同時に響也も躍り出て一人の酔っ払いに飛び蹴りをかました。

 響也が真司のほうへと振り返ると真司ももう一人の酔っ払いを片付け終わった所だった。

 チラっと真司は響也を見たが、直ぐにそっぽを向いて父親の腕を自分の肩に回し状態を起こすと直ぐに、その場を去ろうとした。

「ちょい待てや。ありがとうの一言もあらへんのかい?」

 響也がそう言うと真司はまたチラッと響也を見ると「別に‥。僕一人でやれたんだ。礼を言う筋合いはないね。」

 真司の素っ気ない態度に響也が機嫌を悪くしない訳が無かった。

「ほう。自分がどんなけ強い思っとんかしらんけど、ワイにようそんな口聞けたの。勝負せいや!!」

「バカ猿とは勝負せん。俺がやるのは人間だけだ。」

「ムキー!!!てめぇ!誰がバカ猿だゴラァ!!」

 真司のペースに乗せられるままの響也は真司に飛び交った。

 咄嗟に真司は父親を置き響也の拳をいとも簡単に交わす。

 (な!!?)

 「なろぉ!!」

 また響也は拳を振り回すがこれも空を掠め、なおガムシャラに拳を振るい続けるが掠りさえもしない。

 響也の息は上がり、肩を鳴らす。

「はぁ、はぁ。何でや?何で‥当たらんのや?」

 真司は冷たい視線で響也を見つめる。

「そんな大振りのパンチが当たる訳ないだろ馬鹿猿。」

「また言いよったなクソガキャァ!!!」

 怒り奮い立たせ響也が渾身の拳を真司の顔面目掛けて放つと、真司も拳を放ち、クロスする様に響也の顔面を捉えた。

バギィ!!!

 響也の体が崩れ落ちる。

「お前もガキなんじゃないのか?」

 真司はその一言を残し、再び父親を抱えてその場を去った。

 響也は薄れゆく視界の中で、ただ動けずその歩む後ろ姿を見るしかなかった。

「い‥いけすかん‥やっちゃのぉ‥。」
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