41 / 48
2章 学園編
35話「不器用だから‥」
しおりを挟む
カルマ視点
===== ====== ====== ======
俺は昔から兄クライスと比べられた。
当時からアニキは天才と謳われ、5歳にして勉学は学生と比べても群を抜く賢さで、魔法に関しても5歳で習得し、皆から【天才童子】と謳われていた。
そんなアニキを持つ俺はアニキを尊敬し誇りに思っていた。
だが周りの目は違った。
始めは俺に対し、兄が天才故の期待を乗せられる。
だが、アニキとの差が歴然と離されていくにつれ、俺に対しての目が変わっていった。
勝手な奴らだ。勝手に俺の背中に期待と言う名の重しを付けて愕然とするあの大人の目にはウンザリだった。
挙句に同世代からは「才能無しのクズ」「兄から才能全てを奪われたゴミ」と心も無い言葉をかけられた。
だから俺は誰よりも鍛錬し、強さを得ようとした。
バカにする奴はすぐに殴りかかり喧嘩した。
おれは強い!俺は強いんだ!と証明するかの様に。
そんな矢先にアルが頭を打ち意識を失うといった事件が起きた。
その当時、そんなに違和感を感じなかったが、目が覚めるとアルは別人の様だつたかもしれない。
根本的に違ったのはともともと好奇心旺盛な感じだったのに、3歳とは思えない程、物事に対しての執着心が無くなってしまった。と言うよりも何をするにも何かに怯えている様だった。
別人と言えばそう言えるかもしれないが、今までの物事の記憶を辿れば間違いなくそれはアルだった。
それからだったか?
アルが俺とアニキとの差を気にしだし、人と目を合わさなくなったのは‥。
そして留めはアルが6歳の時だ。
魔力測定でアルの魔力が全くの無だったのだ。
正直。俺がアニキに対し、劣等感を感じるよりも、アルに対し俺は不憫に思った。
そして、とうとうアルは家出を図り帰ってこなくなった。
アルの気持ち。俺には痛い程わかった。
期待の重り。出来なかった時の皆から向けられる視線の恐怖。
前に進むには余りにも強大な壁だ。
だから俺は必死に探した。親父、母さん、アニキも必死に。
親父と母さんが見つけて帰って来た時はホッとしたんだ。
そしてアルとアニキが寝静まった時、親父が俺の部屋に入ってきて俺に言った言葉は今でも忘れない。
「アルを探してくれてありがとうな。お前はアルの気持ちを誰よりも分かってあげれる子だ。人は生まれや育ち、兄弟でも生まれた時から平等に何かがあるわけではない。何が出来るから素晴らしいとかじゃなくて人それぞれの個性、それが素晴らしくて美しいんだ。綺麗毎かもしれないが、俺はそう思っている。お前もたまには肩の力をぬけ。誰が何と言おうと、俺達は家族なんだからな。」
親父は分かっていた。いや分かってくれていた。
俺の気持ちを。
俺は頭が良い訳でも魔力が高い訳でもない。ほんとは只の凡人にすぎない。だから頑張ってるんだって事を。
その言葉を俺に告げ、ポンと俺の頭に手を置き、頭を撫でた。
俺は親父とは目を合わさず、目線をそらすと、親父は一度俺を抱きしめ背中をポンポンと叩くと、満足そうに部屋を出ていった。
俺が物心ついてから始めて涙を溢れ出した一瞬だった。
それ以来、俺の肩の荷は軽くなり、相変わらず喧嘩などは日常茶飯事だったが、俺自身も心の余裕はできた。
ただ鍛錬に関しては元々の負けず嫌いもあり鍛錬量は減らさず今でもかわらない。
だがそんなある日。思わぬ現実を知らされる。
アルが学園での入学式で思わぬ学園トップという数字を叩き込んだ。
皆が喜び中、俺はボーゼンと立ち尽くし、褒めるよりも驚きが大きかった。
何故なら信じられなかったのだ。
アルは6歳の時に魔力測定をしていて、魔力量が皆無だった。
なのにそれが魔力測定器を破壊する程の量が出るなんてことは考えられない。
だが、アニキとの試合や、サーベルリザードとの戦闘時で知らされてしまった。
アルの才能を。
正直。妬みが無いと言えば嘘になる。
俺はその才能が無い為、今まで死ぬ思いで努力し、この地位まで駆け上ったんだ。
何がきっかけでこうなったかはわからない。
親父の言葉も心に確かに焼き付いてられてはいる。
だが納得いかないだよ。
ムシャクシャした気持ちが抑えきれねぇーんだよ。
確かに人それぞれの個性は素晴らしいかもしれないがあんまりだろ!?
考えれば考えるほど自分が虚しくなる。
自分の持つ器の小ささが垣間見えるからだ。
アル。俺はどう言ってお前と話せば良いかがわからなくなった。
だから俺と戦ってくれ。お前がもし嫌がったとしても、その時は殺す訳はないが殺す気持ちで攻め込む。
こんなやり方でしかお前と向き合えないアニキを許してくれ。
そして俺はきっとお前に負けるだろう。
===== ====== ====== ====== =
不器用なカルマでした。
カルマの心情では別にアルが憎い訳ではないです。ただ自分の人生に足掻き踠いている。一緒の事かもしれませんが答えの定まらない何とも言えない心情なんです。
〇〇
不思議な事に、世の中暴力で分かり合おうとする奴は本当に存在するんです。
なんだかムシャクシャする。だから殴りあってスッキリする?
普通なら理解不能な行動で近寄りがたい存在ですが、以外と人情深い所もあって、憎めない性格の人も多いような気がします。
次は決着です。果たしてどうなるのでしょう?お楽しみに。
===== ====== ====== ======
俺は昔から兄クライスと比べられた。
当時からアニキは天才と謳われ、5歳にして勉学は学生と比べても群を抜く賢さで、魔法に関しても5歳で習得し、皆から【天才童子】と謳われていた。
そんなアニキを持つ俺はアニキを尊敬し誇りに思っていた。
だが周りの目は違った。
始めは俺に対し、兄が天才故の期待を乗せられる。
だが、アニキとの差が歴然と離されていくにつれ、俺に対しての目が変わっていった。
勝手な奴らだ。勝手に俺の背中に期待と言う名の重しを付けて愕然とするあの大人の目にはウンザリだった。
挙句に同世代からは「才能無しのクズ」「兄から才能全てを奪われたゴミ」と心も無い言葉をかけられた。
だから俺は誰よりも鍛錬し、強さを得ようとした。
バカにする奴はすぐに殴りかかり喧嘩した。
おれは強い!俺は強いんだ!と証明するかの様に。
そんな矢先にアルが頭を打ち意識を失うといった事件が起きた。
その当時、そんなに違和感を感じなかったが、目が覚めるとアルは別人の様だつたかもしれない。
根本的に違ったのはともともと好奇心旺盛な感じだったのに、3歳とは思えない程、物事に対しての執着心が無くなってしまった。と言うよりも何をするにも何かに怯えている様だった。
別人と言えばそう言えるかもしれないが、今までの物事の記憶を辿れば間違いなくそれはアルだった。
それからだったか?
アルが俺とアニキとの差を気にしだし、人と目を合わさなくなったのは‥。
そして留めはアルが6歳の時だ。
魔力測定でアルの魔力が全くの無だったのだ。
正直。俺がアニキに対し、劣等感を感じるよりも、アルに対し俺は不憫に思った。
そして、とうとうアルは家出を図り帰ってこなくなった。
アルの気持ち。俺には痛い程わかった。
期待の重り。出来なかった時の皆から向けられる視線の恐怖。
前に進むには余りにも強大な壁だ。
だから俺は必死に探した。親父、母さん、アニキも必死に。
親父と母さんが見つけて帰って来た時はホッとしたんだ。
そしてアルとアニキが寝静まった時、親父が俺の部屋に入ってきて俺に言った言葉は今でも忘れない。
「アルを探してくれてありがとうな。お前はアルの気持ちを誰よりも分かってあげれる子だ。人は生まれや育ち、兄弟でも生まれた時から平等に何かがあるわけではない。何が出来るから素晴らしいとかじゃなくて人それぞれの個性、それが素晴らしくて美しいんだ。綺麗毎かもしれないが、俺はそう思っている。お前もたまには肩の力をぬけ。誰が何と言おうと、俺達は家族なんだからな。」
親父は分かっていた。いや分かってくれていた。
俺の気持ちを。
俺は頭が良い訳でも魔力が高い訳でもない。ほんとは只の凡人にすぎない。だから頑張ってるんだって事を。
その言葉を俺に告げ、ポンと俺の頭に手を置き、頭を撫でた。
俺は親父とは目を合わさず、目線をそらすと、親父は一度俺を抱きしめ背中をポンポンと叩くと、満足そうに部屋を出ていった。
俺が物心ついてから始めて涙を溢れ出した一瞬だった。
それ以来、俺の肩の荷は軽くなり、相変わらず喧嘩などは日常茶飯事だったが、俺自身も心の余裕はできた。
ただ鍛錬に関しては元々の負けず嫌いもあり鍛錬量は減らさず今でもかわらない。
だがそんなある日。思わぬ現実を知らされる。
アルが学園での入学式で思わぬ学園トップという数字を叩き込んだ。
皆が喜び中、俺はボーゼンと立ち尽くし、褒めるよりも驚きが大きかった。
何故なら信じられなかったのだ。
アルは6歳の時に魔力測定をしていて、魔力量が皆無だった。
なのにそれが魔力測定器を破壊する程の量が出るなんてことは考えられない。
だが、アニキとの試合や、サーベルリザードとの戦闘時で知らされてしまった。
アルの才能を。
正直。妬みが無いと言えば嘘になる。
俺はその才能が無い為、今まで死ぬ思いで努力し、この地位まで駆け上ったんだ。
何がきっかけでこうなったかはわからない。
親父の言葉も心に確かに焼き付いてられてはいる。
だが納得いかないだよ。
ムシャクシャした気持ちが抑えきれねぇーんだよ。
確かに人それぞれの個性は素晴らしいかもしれないがあんまりだろ!?
考えれば考えるほど自分が虚しくなる。
自分の持つ器の小ささが垣間見えるからだ。
アル。俺はどう言ってお前と話せば良いかがわからなくなった。
だから俺と戦ってくれ。お前がもし嫌がったとしても、その時は殺す訳はないが殺す気持ちで攻め込む。
こんなやり方でしかお前と向き合えないアニキを許してくれ。
そして俺はきっとお前に負けるだろう。
===== ====== ====== ====== =
不器用なカルマでした。
カルマの心情では別にアルが憎い訳ではないです。ただ自分の人生に足掻き踠いている。一緒の事かもしれませんが答えの定まらない何とも言えない心情なんです。
〇〇
不思議な事に、世の中暴力で分かり合おうとする奴は本当に存在するんです。
なんだかムシャクシャする。だから殴りあってスッキリする?
普通なら理解不能な行動で近寄りがたい存在ですが、以外と人情深い所もあって、憎めない性格の人も多いような気がします。
次は決着です。果たしてどうなるのでしょう?お楽しみに。
14
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
俺、何しに異世界に来たんだっけ?
右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」
主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。
気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。
「あなたに、お願いがあります。どうか…」
そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。
「やべ…失敗した。」
女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う
シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。
当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。
そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。
その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる