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第三章 学園編

第五十六話 クラス発表

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暗闇の中を歩いていた。
一寸先すら見えないのに俺は歩き続ける。
するとボッと2つの光が現れた。

「モモ、ベル・・・」
2つの光の名前を呼んで必死にその姿を追った。
走って走って、でも一向に二人との距離は縮まらない。

こっちは全力だってのに・・・なんでそんな涼しそうな顔でいられるんだよ。

ぜえぜえ、と徐々に息が切れてきて、それとともにスピードも落ちていく。

「待って、くれよ・・・」
埋まらなかった差が、無慈悲にも広がっていく。
膝をつき、なんとか手を伸ばしても彼女らが止まることはなかった。

「俺を置いてっ」
そこまで言いかけた時、不意に二人がこちらを振り向いた。

「え・・・」
そのときの二人がしていた表情は、俺がこの世で一番見たくないものだった。
細く薄められた視線。
冷ややかな、そして見下すような視線。
気づけば、伸ばしていたはずの手は力を失ってぱたりと地面に着地していた。

もう・・・身体が言うことを聞かない。
供給されていたエネルギーが突然遮断されたかのように全身から力が抜けていく。

俺はまた、この世界でも・・・


/////


「・・・っ、ここ、は?」
そこは見覚えのない部屋だった。
清潔さが見て取れる白の掛け布団からそっと抜け出し、あたりを見渡してみる。

ただ、俺の寝ていたベッドと同じものがいくつか並んでいる以外には特筆すべき場所はなかった。
どうやら、現代で言う保健室? みたいなところか・・・

「はあ・・・」
あんな夢を見たせいか起きたばかりというのに、どっと疲れが押し寄せてきた。
普段、夢なんてすぐ何見たか忘れるのに、今も色濃く鮮明に思い出せてしまう。

「あ、カインさん! 目覚めたんですね」
「ああ、ウィル・・・とそちらの方は?」
見知った声がしたので振り向くとそこにはウィルともう一人、きれいな桜色の髪がよく似合う白衣に袖を通した女性が後から入ってきた。

「そういえば、あなたにはまだ自己紹介をしていなかったわね」
すると女性は豊満な胸に手を当てて、ニコリと笑った。

「私の名前はルリエ。このグレースにおいて治癒魔法を教えているわ。あとは、ほらここの生徒たちってすぐ怪我しちゃうから、いつもここでそういった生徒たちの手当をしているの。こう見えてもけっこう凄腕なのよっ!」
ふんっと力こぶを見せるようなポーズを取っているが、なんだろう、この先生からは逆に教育が悪そうな感じがぷんぷんする。

「そうだ、カインさん。病み上がりのところ申し訳ないのですが広場でクラスの発表がされるそうなので見に行きませんか?」
「えっと、それは良いんだけど、クラスの発表って一体・・・」
「もちろん説明しますよ。ただすぐ人が集まってしまうので広場に向かいながらでもかまいませんか?」
「あ、ああ」
「あら、もう行っちゃうのね」
ウィルが珍しく強引に俺の袖を引っ張ってすぐにでも行こうと急かしてくるのに抗えず、俺は流れるままに部屋を出た。


//////


「ウィル、そんなに急いでどうしたんだ」
「・・・カインさん、つかぬことをお聞きしますが、僕のこと、どう思いましたか?」
「それは、いったいどういう・・・」
「いえ、やっぱりなんでもないです」
どうしても意図が理解できず、首をかしげてしまう。
なんで、いきなりそんなことを聞くのだろうか。
どちらかと言えば俺のほうがどう思ったか気になるくらいなのに。

「すみません、変なことを聞いてしまって。たしかクラス分けについての話でしたね」
ウィルはこちらを振り返ること無く淡々と続けた。

「ここグレースでは、先程の実技試験の他にも各々の力量を試す試験がいくつも行われていて、それによって得られた結果をもとに、実力順でグループ分けがされることになっているんです。上からAクラス、Bクラスといった順になっていて、後になればなるほど実力という面では劣っている、ということになりますね。あ、ちなみに教師に見事勝利したベルさんはおそらくAクラス配属になっているでしょう」
「・・・それで、俺たちはどのクラスに配属になっているんだ?」
「それは・・・見てもらったほうが早いでしょう」
ウィルの視線の先に、なにやら紙が張り出された掲示板らしきものと、それに群がるようにして人混みができていた。
そこにはもちろん、二人の姿も。

「あ、もう身体は大丈夫なんですか?」
「心配だった」
「ごめんごめん、でも、もう大丈夫だよ」
あんな夢を見たせいか、胸のどこかがざわついている。

「二人はもうクラスどこか見たのか?」
「はい! 私はBクラスでした」
「私はA・・・」
「ははっ、当然の結果だな」
どんどん大きくなるざわつきを俺は下唇を噛んでぐっと堪える。
そして、ふと、手先が震えていることに気がついた。

なぜ震えているのかなんて心当たりがありすぎて困っちまうな。
これから直面する現実が恐いのか、それとも、あの夢が正夢になるのが恐いのか。
もしくは・・・。

「さて、俺とウィルはっと・・・」
俺は気を紛らわすようにして自分の名前を探した。

「お、あったあっ・・・た」
何十にも及ぶ文字列から思ったよりも簡単に見つかった。
そして名前の横には他の受験者と同じ、ひとつのアルファベット。

「なあ、ウィル・・・」
「はい」
俺はなんとか平静を装おうとした。
でも、無慈悲にも突きつけられた現実を前に、俺は・・・

「Dっていうのは・・・」
「ーーーカインさんのご想像通りですよ。どうやら僕たちは・・・」
『最低クラスに配属のようですね』

立ち尽くすことしかできなかった。
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