神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました

土広真丘

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第6章

18.変な押し売り念話が来ているらしい

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「は……? い、愛し子ですか? 神使ではなく?」

 アマーリエの顎がカクンと下がる。神使選定が続いている現状、使役にして欲しいというアピールは許可されているが、愛し子となると全く話が別だ。そんな分不相応な請願など有り得ない。

『帝都中央本府の神官だと言っていましたが、数年前まで地上にいた私やローナたちも聞いたことのない声でした。きっと入府したての新米が何か勘違いしているのだろうと、神々は全員無視しています。現段階では、相手にする間でもない些事さじという認識ですね』
『主任か副主任あたりにどういうことか聞いてみるか、パパッと神威で見通しちまおうって意見もあったんだが。ちょっと待てばユフィーたちが一時昇天することになってたからな。そん時に折を見て確認すれば良いかってコトで、スルー対応維持になったんだ』

 愛し子にして下さいとはすなわち、その神にとっての〝特別〟にして下さい、自分に神格を下さい、自分を神々の身内にして下さいと言っているわけだ。とんでもない内容である。人間の側からねだって良いことではない。

『ご不快に思われる神々もいるでしょうから、危うそうであれば密かに声を下ろし、注意を促すつもりでした。しかし神々は、誰も怒ることなく無視で済ませていました。訳の分からない交信よりも、可愛い聖威師たちの一時昇天が近付いていることで心がいっぱいだったのでしょう』
『とまあ、セインが言ってる通りの状況なんだぜ。何か知らねえか、ユフィー?』
「い、いいえ、何も……」
『今の話を聞くに、主家と正妻の子どもが怪しい気がするがね。神に見初められるのは自分たちこそが相応しいだとか、自分たちはこれほど凄いだとか、色々と言っているらしいよ』
「申し訳ありません、何も把握しておらず……。この後主任に報告し、全神官に注意の念話を送るなど対応をするよう伝えます」

 文字通り頭を抱えるアマーリエに、フルードが憂いげな視線を向けた。

『よろしくお願いします、アマーリエ。私はもう、以前のように地上や神官たちに関わることができません。あなたたちに託すしかないのです』
「承知しております」

 一礼すると、透き通った碧眼がふっと意味深な光を宿した。

『ありがとう。では、新しい聖威師たちも紹介してもらいましたし、この話題はここまでにしましょう。……アマーリエ。少し場所を移りませんか。新旧の大神官同士、思い出話など花を咲かせたいこともあります』
「――分かりました。では……」
『いや、そろそろ私の元に戻って来ておくれ、セイン。酒の相手をして欲しい』

 だが、アマーリエが言い切る前に、狼神が微笑んで口を挟んだ。手に持ったグラスを軽く揺らしている。

『ハルア様、少しだけ……』

 フルードが懇願するように言いかけるが、灰銀の神は優しく相好を崩したまま首を横に振り、繰り返した。

『セイン、おいで』

 そこで、グラスにドバドバッと赤い酒が継ぎ足された。豪快な酌をしたのは、神酒の瓶を持ったフレイムだ。

『相手なら俺がしますよ。セインは酒に弱いんだし。ほら、じゃんじゃん飲みましょう』
『…………』

 狼神がクルリと振り向く。保った笑顔の下からジトッとした目を向けられても、フレイムは怯まない。カラリとした顔で言う。

『あー、こっちの白酒も注いどきましょうか。水と氷とか、果物も入れるんならやりますよ』
『……仕方ありませんなぁ。では焔神様にお願いするとしますか。――あなたはやはり妻と弟に甘い』

 最後はボソッと呟いた狼神が、愛し子を見る。

『少しだけだ。すぐに戻って来るのだよ』
『ありがとうございます、ハルア様……お兄様』

 パッと瞳を輝かせたフルードが、次いで見たのはミンディたちだ。

『あなたたちと話せて良かった。天界の料理は美味しいですから、たくさん食べて下さいね。庭に出ましょう、アマーリエ』
「はい」

 低頭して応じる小さな聖威師たちに温かな視線を向けてから立ち上がる。アマーリエも素直に頷き、後に続いた。
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