神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました

土広真丘

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第7章

34.本性は変わらない

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(本音が出たわね)
《なるほど、それが目的なのね》

 アマーリエが冷めた声で返すと、即座に悪びれもしない肯定が来た。

《ええ。初めからおかしいと思っていたのよ、愛人の子ごときが私を差し置いて神に見初められるなんて! 分不相応にも程があるじゃない》
《そうだ、たかが下男と下女が主家である僕の上に立つなんて有り得ない! こんなの何かの間違いだとずっと思ってた! そうしたら、花神様に寵をいただけた。やっと正しい道に戻ったんだ!》
《その通りよ、これが本来の形なの。色無しの神格しか持たない妹たちは私より下。あの子たちはずっと私に逆らえないのよ!》
(更生施設の皆さん! この子たち全然更生できていないわ!)

 アマーリエは心の中で悲鳴を上げた。両親が実刑を受けたエアニーヌと慧音。彼ら自身は年齢と家庭環境、何より霊威を持っていたことから猶予処分となった。現在は更生施設の預かりとなり、思考と言動の再教育を受けているはずなのだが。

(いえ、無理もないことだわ。まだ入所して数か月だもの。こんな短期間では変わらないわよね)

 施設の担当たちも頑張っているはずだ。だが、人間の本性はそんなに簡単には変えられない。

《これで全部元に戻るわ。待っててお父様とお母様、すぐに牢屋から出してあげる。牢に入るのはお父様を誑かしたあの女と、あの女の血を引く妹たちなのよ!》
《卑しい使用人のせいで僕たち家族はめちゃくちゃにされた。だけど、もうすぐ幸せな生活を取り返せるんだ》

 言葉を弾ませた2人が、ふと声音に影を落とした。

《でも、現職の方々はきっと妹たちを守ろうとするわ。いつ見ても妹たちに優しい目を向けているし、可愛がっているんだもの》

 一般の神官より遥かに上等な紋入りの神官衣を纏い、すっかり血色の良くなった姿で、安心し切った顔をして先達に甘えているミンディたち。その姿を神官府で見かけるたび、はらわたが煮えくりかえるような思いをしていたと、エアニーヌは怒気を滲ませた。

《使用人風情が、主人の僕よりずっと高価な衣を着て、広い邸に住んで、上等なものを食べている……そんなこと許せない! 使用人の味方をする大神官たちも目障りだ!》
《んで、完全昇天させようとしたのか。ユフィーたちが目を光らせてたら、ミンディたちを虐められねえもんな》

 喚く神官たちをサラッと流し、フレイムが鼻で笑った。慧音が至って大真面目に告げる。

《大神官たちは僕たちと同じく高位神の寵児です。そんな立場の者に総出で邪魔をされれば、いくら僕たちが花神様の愛し子とはいえ、さすがに厄介ですから》
《あー、今の台詞、どこからどうツッコめば良いのか分からんが……何もかも間違いだらけだぜ? けど、面倒くせえからもう良いや。教えてやる義務も義理もねえしな》
《僕もあなたが何を仰せなのか分かりませんが、こちらの事情は説明しました。きちんと話したのですから、これで完全昇天してくれますよね》

 どこまでも牽強付会けんきょうふかいな言い分をぶち上げる慧音に、エアニーヌも続く。

《私たちにも、なるべく穏便に済ませたい気持ちはあります。妹たちの肩を持つことは断固納得できないとはいえ、現職の方々のことは尊敬していますから。ご自分の意思で昇天して下さるのがベストだと思ってはいました》

 なお、聴いている側は呆れすぎて返す言葉もない。

(開いた口が塞がらないとはこのことね……)

 頭も胃も精神も、色々なところが痛い。そろそろストレスで血を吐くかもしれないと、本気で思った。神の体内にある肺腑はいふはハリボテだが、精巧に擬人化している聖威師の臓器に関しては本物に等しいのだ。

「ねえフレイム、別途で新しい念話網を張りたいわ。本物の聖威師だけで話したいの」

 先程展開していた念話網は、無理矢理断ち切られてしまったので、新規作成をしたいのだ。エアニーヌたちが仕掛けて来たものと並行し、多重念話を行うことになる。だが――

「神々にとんでもない無礼をしてしまったもの。急ぎ対応を打ち合わせなくてはならないわ。けれど……先ほどから念話網の新規作成を試みているのに、力が阻まれて上手く展開できないのよ」
『あー、あの神官たちの神器の力が邪魔をしてるんだろうな。使いこなせない神器を無理に使って、天の神を含めた多人数相手に念話網を張ったせいで、色々と歪みが出てるぜ』
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