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第7章
66.遊運命神の感知②
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『神罰、天恵にすれば良いって、雛たちに教えてあげれば良かったのに』
『ほんの先日まで、未来は確定しておらなんだ。不明瞭に視えはしたものの、とても不安定であった。この段階で、良かれと思い迂闊なことを言うてしまえば、ほんの少しの言葉が影響して全く違う方向に転がってしまう可能性もあった』
5年前の天堂にて、神罰がいずれ必要になるやもしれぬとアマーリエに言いかけたところで、その可能性に思い至った。ゆえに、既に唇を割ってまろび出ていた台詞が聞こえないよう、咄嗟に神威で調整した。アマーリエたちの運命には、主神である選ばれし神々が深く関わっている。そのため、遊運命神であれどその変動は読み切れなかった。
『ゆえ、リスクを犯すくらいならばと、雛たちへの接触自体を絶っていた。そして先般の高次会議で怒れる神々が鎮まり、雛たちが神器の開発に取り掛かった。それをもって未来が定まり、閃きの先にある光景が感知できた』
すなわち、神罰を天恵に変換した暁には、開発した神器にその力を注ぎ込めば良いのだと。その運命を無意識に読んだからこそ、神罰は消してはいけない、まだ必要だと閃いたのだ。
『シュナ、アマーリエたちのスピーチ、聴いてた? あの場には、いなかった、思うけど』
『我が神域から遠隔で視聴しておった』
『ああ、そう。そう言えば、ツォルも、そうした、言ってた。……未来、定まったなら、シュナ、もう雛たちに会える。お話し、してあげなよ。神罰、天恩に変えるだけでも、先にやってあげたら?』
『むろん近い内に、今お話ししたことを説明しようと思うておる。ディス様の仰せ通り、運命が安定した今、雛たちを避ける必要はなくなったゆえ。……先ほど、チラとアマーリエを見かけた』
アマーリエたちと会わないよう自領に籠もる必要がなくなったため、フラリと共有領域に出た際に会ったのだ。あの時は彼女も魂魄浄化やらイデナウアーの神域で発生している騒ぎやらで忙しそうだったので、声をかけずに笑顔だけ向けてすぐ立ち去ったが。
……そのせいで余計にアマーリエを混乱させた自覚はない。
『ただ、説明はするとしても、神罰を天恵に変えるのは時期尚早だ』
『――アレクとの繋がり、消えちゃうから?』
『ああ』
疫神の即応に、遊運命神が首肯する。アマーリエが聖威師の状態であり、かつ神罰を宿している限り、葬邪神との守護契約は有効だ。言い換えれば、葬邪神の後ろ盾と彼に通じる直通のコネクションがある。だが、神罰が天恵に変わってしまえば、これで安心だと葬邪神は守護神の任を降りるだろう。そうなれば、後ろ盾もコネも無くなってしまう。
『禍神の御子神にして選ばれし神の守護など、通常は受けられるものではない。保持できるギリギリまで持っておいた方が良かろう』
『シュナの言うこと、一理ある。けど、神罰、天恩に変わったら、それもそれで良し。いっぱい幸せ、舞い込んで来るよ』
『分かっておる。しかるに、幸福ならば天恵などなくとも、主神たる焔神様がいくらでも授けよう。翻って、高位の悪神の守りは悪神しか与えることができぬ。むざむざ手放してしまうのは惜しいものだ』
うむむ、と疫神は腕組みした。確かにその通りだ。ラミルファも類似のことを言っていた。遊運命神の音信不通により神罰の削除を依頼できなかった時、残念だが葬邪神との繋がりが維持できるので悪いことばかりではないという見解を示していた。
『神罰を天恩に変えることはいつでもできる。しからば急いて事を起こす必要はない。アマーリエの昇天間際までは神罰のまま残しておく方向で考え、どうしても無理となった時は先んじて天恵に変えてしまうことも可能だ』
『なるほど。このまま現状維持、悪くない選択肢かも。後は、雛たちに説明した時、当人たちの意見聞く。それで決めれば良い』
『そうするつもりだ』
ここで話が一区切り付いた。御稜威のよそ風がつむじを巻いて駆け抜ける上空で、疫神と遊運命神は空を見上げて話す。
『そう言えば、イデナウアーとも会ったよ』
『ディス様は一億年お眠りであられた。ハーティと会われるのは初めてか』
『うん。可愛い子だった。我、最古の神。イデナウアー、最古の聖威師。おそろい』
大きな目が動き、鉛色の双眸を覗き込んだ。
『イデナウアー、会いに行く?』
『当然だ。今は雛たちが来訪してバタついているゆえ、もう少ししたら足を向けるつもりでおる。――我が半身の元へ』
『うん。イデナウアー、シュナの妻だって、聞いたよ』
『ほんの先日まで、未来は確定しておらなんだ。不明瞭に視えはしたものの、とても不安定であった。この段階で、良かれと思い迂闊なことを言うてしまえば、ほんの少しの言葉が影響して全く違う方向に転がってしまう可能性もあった』
5年前の天堂にて、神罰がいずれ必要になるやもしれぬとアマーリエに言いかけたところで、その可能性に思い至った。ゆえに、既に唇を割ってまろび出ていた台詞が聞こえないよう、咄嗟に神威で調整した。アマーリエたちの運命には、主神である選ばれし神々が深く関わっている。そのため、遊運命神であれどその変動は読み切れなかった。
『ゆえ、リスクを犯すくらいならばと、雛たちへの接触自体を絶っていた。そして先般の高次会議で怒れる神々が鎮まり、雛たちが神器の開発に取り掛かった。それをもって未来が定まり、閃きの先にある光景が感知できた』
すなわち、神罰を天恵に変換した暁には、開発した神器にその力を注ぎ込めば良いのだと。その運命を無意識に読んだからこそ、神罰は消してはいけない、まだ必要だと閃いたのだ。
『シュナ、アマーリエたちのスピーチ、聴いてた? あの場には、いなかった、思うけど』
『我が神域から遠隔で視聴しておった』
『ああ、そう。そう言えば、ツォルも、そうした、言ってた。……未来、定まったなら、シュナ、もう雛たちに会える。お話し、してあげなよ。神罰、天恩に変えるだけでも、先にやってあげたら?』
『むろん近い内に、今お話ししたことを説明しようと思うておる。ディス様の仰せ通り、運命が安定した今、雛たちを避ける必要はなくなったゆえ。……先ほど、チラとアマーリエを見かけた』
アマーリエたちと会わないよう自領に籠もる必要がなくなったため、フラリと共有領域に出た際に会ったのだ。あの時は彼女も魂魄浄化やらイデナウアーの神域で発生している騒ぎやらで忙しそうだったので、声をかけずに笑顔だけ向けてすぐ立ち去ったが。
……そのせいで余計にアマーリエを混乱させた自覚はない。
『ただ、説明はするとしても、神罰を天恵に変えるのは時期尚早だ』
『――アレクとの繋がり、消えちゃうから?』
『ああ』
疫神の即応に、遊運命神が首肯する。アマーリエが聖威師の状態であり、かつ神罰を宿している限り、葬邪神との守護契約は有効だ。言い換えれば、葬邪神の後ろ盾と彼に通じる直通のコネクションがある。だが、神罰が天恵に変わってしまえば、これで安心だと葬邪神は守護神の任を降りるだろう。そうなれば、後ろ盾もコネも無くなってしまう。
『禍神の御子神にして選ばれし神の守護など、通常は受けられるものではない。保持できるギリギリまで持っておいた方が良かろう』
『シュナの言うこと、一理ある。けど、神罰、天恩に変わったら、それもそれで良し。いっぱい幸せ、舞い込んで来るよ』
『分かっておる。しかるに、幸福ならば天恵などなくとも、主神たる焔神様がいくらでも授けよう。翻って、高位の悪神の守りは悪神しか与えることができぬ。むざむざ手放してしまうのは惜しいものだ』
うむむ、と疫神は腕組みした。確かにその通りだ。ラミルファも類似のことを言っていた。遊運命神の音信不通により神罰の削除を依頼できなかった時、残念だが葬邪神との繋がりが維持できるので悪いことばかりではないという見解を示していた。
『神罰を天恩に変えることはいつでもできる。しからば急いて事を起こす必要はない。アマーリエの昇天間際までは神罰のまま残しておく方向で考え、どうしても無理となった時は先んじて天恵に変えてしまうことも可能だ』
『なるほど。このまま現状維持、悪くない選択肢かも。後は、雛たちに説明した時、当人たちの意見聞く。それで決めれば良い』
『そうするつもりだ』
ここで話が一区切り付いた。御稜威のよそ風がつむじを巻いて駆け抜ける上空で、疫神と遊運命神は空を見上げて話す。
『そう言えば、イデナウアーとも会ったよ』
『ディス様は一億年お眠りであられた。ハーティと会われるのは初めてか』
『うん。可愛い子だった。我、最古の神。イデナウアー、最古の聖威師。おそろい』
大きな目が動き、鉛色の双眸を覗き込んだ。
『イデナウアー、会いに行く?』
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