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第8章
9.またフラグが立ちました
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「サーシャさんのお話は聞いております。お会いしたいと思いつつ、中々タイミングがなくて」
(一時昇天中にお目通りできればと考えていたのだけれど……会いに行こうとする度にフレイムやフルード様からお呼びがかかって、不思議と流れてしまうのよね)
『焦る必要はない。どれだけ長生きしようとも、お前はあと70年ほども経てば完全昇天する。そうすれば幾らでも機会が巡って来るだろう。シスはとても良い子だ。私の可愛い弟だからな。本当に素直で裏表がない』
常にない饒舌さで自慢げに話すアリステルと、興味津々で聞いているアマーリエ。ラミルファは薄く笑ってそれを見ている。
……実のところ、鬼神が従神にしてまで身内に迎え入れた時点で、サーシャは十二分に悪神の素養を持っていた。聖威師にならなかったことから、アリステルより悪神化が進行してもいる。フレイムとフルードがアマーリエとサーシャを会わせないようにしているのはあえてだ。
『と、すまない。話が逸れてしまった。アマーリエ、お前がエアニーヌと慧音を気にする気持ちは分かるが、彼らは既に神官ではない。地上及び神官府の管轄からは外れた身だ。お前は自分のやるべきことに集中しろ』
「……仰せのままに」
そう言われてしまうと、アマーリエとしては頷くしかない。ラミルファが、『これ以上の深入りは無用だよ』という視線を据えているので尚更だ。
『これからはまた、災害対策用の神器の開発に取り掛かるのか?』
「その予定です。後は……今はラモスとディモスが帰還していますから、あの子たちともお話ししたいと思っています」
ラモスとディモスは、一時昇天の間も地上に滞在していることが多い。実地経験を積むため、地上番をメインで担当している新米聖威師たちの補助兼見守り役としてだ。彼らは『アマーリエ付きの従神として派遣されている火神の従神』という立場なので、その動向については基本的にアマーリエが采配できる。
とはいえ、火神の意向や天の神々の希望もある。金剛神や水晶神、桜梅桃の女神たちとて、できる限り自身の愛し子と共にいたいはずだ。ゆえに、アマーリエたちも定期的に地上番を交代していた。現在はルルアージュと祐奈が担っている。
『ラモスの方は好い仲の神ができたと聞いた。リスの神だったか。このまま進展すると良いな』
「ええ、地上番の合間に天界へ還っている時に知り合ったらしくて……今はまだお友達以上恋仲未満のようですけれど、温かく見守りたいと思っています」
『ふふ、僕が仲を取り持ってあげようか。ほら、人間で言う仲人のようなものだよ』
「結構です……」
(絶対引っ掻き回すでしょう)
クリリとした目を動かし、ちょこちょこと一生懸命にラモスの後を付いて歩く栗鼠神と、彼女に合わせて小さな歩幅で歩くラモス。その微笑ましい姿を見かけたライナスが、自分が月下氷人になると張り切っていたが、佳良とオーネリアに全力で止められていた。
致命的に空気が読めない上にタイミングも悪い先々代の大神官は、その才能を遺憾なく発揮し、地上にいた頃は親切心で神官のカップルを後押ししようとしては破局させ続けて来たそうだ。
結果、スマートに相手と別れたい男女が意図的にライナスへ後押しを頼む事態になっていた。当のライナスはそのことに気付いておらず、どうにか両者の仲を深めようと悪戦苦闘していたが、効果は無かったという。
悪神のラミルファに任せればライナス以上にとんでもないことになるかもしれない。即決で断ったアマーリエは、さっさと話題を変えることにしてアリステルを見た。
「そう言えば、後でランドルフ君と個別にお茶を飲むことになっています。話があるとかで」
『……そうか』
一瞬、返事に間があった。ラミルファが灰緑の目を眇めて口端を上げる。二神の様子を見て、何故か胸がざわついた。
『ランドルフとルルアージュは、私の子たちとも親しくしてくれている』
鬼神との間に顕現した、アリステルの御子神たち。片親あるいは両親が神格を抑えていない場合、子は生え抜きの神として顕れる。アリステルの子たちもその例に漏れず、元人間ではないがゆえに聖威師にはならず天界にいる。ランドルフとルルアージュにとってはイトコだ。
『親の関係性を子が受け継ぐ必要はない。あの子たちが仲睦まじいことは、私とフルードにとってめでたきことだ。アシュトンとライナス様も喜んで下さっている』
「アリステル様の御子神様方は、当利君と祐奈ちゃんとも仲良しだとお聞きしました」
『ああ。それも良いことだ。当真と恵奈も嬉しそうにしてくれている』
そう言って微笑むアリステルの言葉は、どれも本心から述べたものだろう。
『ランドルフも一時昇天して以降は多忙だったはずだ。せっかくの時間だ、ゆっくり話せば良い。……有事の際は私も微力ながら手を貸そう』
『ふふ、優しくて慈悲深い僕も手伝ってあげよう』
末の邪神も含み笑いで応じてくれた。アマーリエは頰が引き攣らないよう努力しながら、優雅に礼をする。
「神々の御厚情に感謝申し上げます」
高位神、それも悪神たる彼らの手を借りなければいけない事態など、起きて欲しくないというのが本音だ。
(だ、大丈夫よ。色持ちの神々を巻き込んでどうこうなんて事態、そうそう起きないもの。ランドルフ君のお話だって、きっと他愛ないことよ。喫緊の用件ではないと言っていたし、少し息抜きしたいだけかもしれないわ)
楽しくお茶と菓子を摘みながら、のんびりしたトークタイムを過ごせるはずだと自分を宥める。
(フレイムに特製スイーツを作ってもらうんだから。どれが一番美味しいかで盛り上がるかもしれないわ)
想像していると、段々気分が弾んで来た。フレイムの作る絶品スイーツはどれも一番なので、順位を付けるのが非常に難しい。
(うん、きっと平和的に過ごせるわよ。ああ、ティータイムが楽しみ)
……世間では、それをフラグという。
(一時昇天中にお目通りできればと考えていたのだけれど……会いに行こうとする度にフレイムやフルード様からお呼びがかかって、不思議と流れてしまうのよね)
『焦る必要はない。どれだけ長生きしようとも、お前はあと70年ほども経てば完全昇天する。そうすれば幾らでも機会が巡って来るだろう。シスはとても良い子だ。私の可愛い弟だからな。本当に素直で裏表がない』
常にない饒舌さで自慢げに話すアリステルと、興味津々で聞いているアマーリエ。ラミルファは薄く笑ってそれを見ている。
……実のところ、鬼神が従神にしてまで身内に迎え入れた時点で、サーシャは十二分に悪神の素養を持っていた。聖威師にならなかったことから、アリステルより悪神化が進行してもいる。フレイムとフルードがアマーリエとサーシャを会わせないようにしているのはあえてだ。
『と、すまない。話が逸れてしまった。アマーリエ、お前がエアニーヌと慧音を気にする気持ちは分かるが、彼らは既に神官ではない。地上及び神官府の管轄からは外れた身だ。お前は自分のやるべきことに集中しろ』
「……仰せのままに」
そう言われてしまうと、アマーリエとしては頷くしかない。ラミルファが、『これ以上の深入りは無用だよ』という視線を据えているので尚更だ。
『これからはまた、災害対策用の神器の開発に取り掛かるのか?』
「その予定です。後は……今はラモスとディモスが帰還していますから、あの子たちともお話ししたいと思っています」
ラモスとディモスは、一時昇天の間も地上に滞在していることが多い。実地経験を積むため、地上番をメインで担当している新米聖威師たちの補助兼見守り役としてだ。彼らは『アマーリエ付きの従神として派遣されている火神の従神』という立場なので、その動向については基本的にアマーリエが采配できる。
とはいえ、火神の意向や天の神々の希望もある。金剛神や水晶神、桜梅桃の女神たちとて、できる限り自身の愛し子と共にいたいはずだ。ゆえに、アマーリエたちも定期的に地上番を交代していた。現在はルルアージュと祐奈が担っている。
『ラモスの方は好い仲の神ができたと聞いた。リスの神だったか。このまま進展すると良いな』
「ええ、地上番の合間に天界へ還っている時に知り合ったらしくて……今はまだお友達以上恋仲未満のようですけれど、温かく見守りたいと思っています」
『ふふ、僕が仲を取り持ってあげようか。ほら、人間で言う仲人のようなものだよ』
「結構です……」
(絶対引っ掻き回すでしょう)
クリリとした目を動かし、ちょこちょこと一生懸命にラモスの後を付いて歩く栗鼠神と、彼女に合わせて小さな歩幅で歩くラモス。その微笑ましい姿を見かけたライナスが、自分が月下氷人になると張り切っていたが、佳良とオーネリアに全力で止められていた。
致命的に空気が読めない上にタイミングも悪い先々代の大神官は、その才能を遺憾なく発揮し、地上にいた頃は親切心で神官のカップルを後押ししようとしては破局させ続けて来たそうだ。
結果、スマートに相手と別れたい男女が意図的にライナスへ後押しを頼む事態になっていた。当のライナスはそのことに気付いておらず、どうにか両者の仲を深めようと悪戦苦闘していたが、効果は無かったという。
悪神のラミルファに任せればライナス以上にとんでもないことになるかもしれない。即決で断ったアマーリエは、さっさと話題を変えることにしてアリステルを見た。
「そう言えば、後でランドルフ君と個別にお茶を飲むことになっています。話があるとかで」
『……そうか』
一瞬、返事に間があった。ラミルファが灰緑の目を眇めて口端を上げる。二神の様子を見て、何故か胸がざわついた。
『ランドルフとルルアージュは、私の子たちとも親しくしてくれている』
鬼神との間に顕現した、アリステルの御子神たち。片親あるいは両親が神格を抑えていない場合、子は生え抜きの神として顕れる。アリステルの子たちもその例に漏れず、元人間ではないがゆえに聖威師にはならず天界にいる。ランドルフとルルアージュにとってはイトコだ。
『親の関係性を子が受け継ぐ必要はない。あの子たちが仲睦まじいことは、私とフルードにとってめでたきことだ。アシュトンとライナス様も喜んで下さっている』
「アリステル様の御子神様方は、当利君と祐奈ちゃんとも仲良しだとお聞きしました」
『ああ。それも良いことだ。当真と恵奈も嬉しそうにしてくれている』
そう言って微笑むアリステルの言葉は、どれも本心から述べたものだろう。
『ランドルフも一時昇天して以降は多忙だったはずだ。せっかくの時間だ、ゆっくり話せば良い。……有事の際は私も微力ながら手を貸そう』
『ふふ、優しくて慈悲深い僕も手伝ってあげよう』
末の邪神も含み笑いで応じてくれた。アマーリエは頰が引き攣らないよう努力しながら、優雅に礼をする。
「神々の御厚情に感謝申し上げます」
高位神、それも悪神たる彼らの手を借りなければいけない事態など、起きて欲しくないというのが本音だ。
(だ、大丈夫よ。色持ちの神々を巻き込んでどうこうなんて事態、そうそう起きないもの。ランドルフ君のお話だって、きっと他愛ないことよ。喫緊の用件ではないと言っていたし、少し息抜きしたいだけかもしれないわ)
楽しくお茶と菓子を摘みながら、のんびりしたトークタイムを過ごせるはずだと自分を宥める。
(フレイムに特製スイーツを作ってもらうんだから。どれが一番美味しいかで盛り上がるかもしれないわ)
想像していると、段々気分が弾んで来た。フレイムの作る絶品スイーツはどれも一番なので、順位を付けるのが非常に難しい。
(うん、きっと平和的に過ごせるわよ。ああ、ティータイムが楽しみ)
……世間では、それをフラグという。
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