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第8章
23.大精霊の子は悪ガキ?
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◆◆◆
「えっ、大精霊の子どもに命令されて角を奪いに行かされた!?」
程なくして戻って来た従神たちから報告を受け、アマーリエは驚きで声を高くした。再びこの場に連れて来られたトライコーンも目を丸くしている。
『はい。大精霊の御子君たる上級精霊、シルファール様のご所望だと……』
『ちっ、あのワガママ悪ガキかよ』
フレイム付きの使役が首肯し、表情に剣呑さを帯びたフレイムがガリガリと頭をかいた。
「ワガママ悪ガキ?」
『ああ。生来から父親譲りの強大な霊威を持っててな、潜在能力も恐ろしく高いから、いずれ大精霊を継ぐだろうともっぱらの噂だ』
大精霊は上位精霊同士の推薦や互選で決まる。駆け引きや交渉、派閥争い、果ては袖の下までが飛び交うため、結果がどうなるかは蓋を開けてみるまで分からない。だがそれでも、時の大精霊の息子であり、かつ霊威も強いとなれば、選考においては格段に有利となる。
なお、神々は大精霊選びには原則口も手も出さない。個々の神に仕える専属の神使であれば、自分の嗜好と基準に合致する者を付かせたいと思うが、大精霊はそのような使役とは立ち位置が違う。天界中の使役を統べる立場だ。ゆえに、使役の頂点は同じ使役が選べということで、精霊たち自身に決めさせている。
『先代の大精霊が良い例だが、性格や素行に問題があろうが適性が低かろうが、選ばれる時は選ばれるからな。悪ガキだってそうなるかもしれねえ』
(この言い方……シルファールは問題有りの精霊みたいね。先代と副大精霊も意味深なことを言っていたし)
サラリと告げられるフレイムの言葉と、先ほど見聞きした精霊たちの台詞。その端々から、シルファールという精霊の言動や思考がよろしくないことが伺える。
「トライコーンの件に関わっているなら、これから私と話をすることもあるかしら?」
『有り得るな。そん時は遠慮せず上位者として接しろ。正式な神格を授かってねえ、完全な神じゃねえ奴を相手に、お前がへりくだることはないからな。聖威師が膝を折るのは正規の神に対してだけだ。ましてや、悪ガキはまだ神格を得てもいない一精霊なんだしな』
「分かったわ。……それにしても、大精霊の子はやっぱり何かワケ有りなのね」
『やっぱり?』
(あっ)
思わず漏らした言葉を聞き漏らさなかったフレイムに、肩をすぼめて言う。
「ええと、今から話すことはここだけの話にしてちょうだい。わざとではないのだけれど、大精霊たちが話しているのを聞いてしまって……」
大精霊と先代大精霊、副大精霊、ついでにアーディエンスのことも含め、回廊の柱の陰で見聞きしたことを話す。ふんふんとそれを聞いたフレイムが、先代大精霊とアーディエンスのくだりでは気まずげな顔をした。自業自得の先代はともかく、巻き添えとなったアーディエンスに対しては考えるところがあるのかもしれない。
『そんなことがあったのか。……精霊が誕生するパターンで多いのは、大きく二つ。一つは天界の気から生まれるやつで、これが最多だ。気以外にも、雫とか花びらなんかから出て来ることもあるな。もう一つが、親精霊が相手を見付けて子作りするやつだ。シルファールは後者で誕生した』
なお、フレイムのように神の気が精霊化して生まれるのはかなりのレアケースなので、今は除外して考えて良いという。
『ちなみに、天界の気とかから発生した場合は、最初から大人の姿と思考を持って生まれる。俺もそっちのパターンだった。けど、子作りをして生まれた後者の場合、赤ん坊の姿で現れて、心と体が段々育ってくんだ。人間みたいにな』
シルファールは今まさに成長段階にあるのだという。
「精霊もそういう行為をするのね。やっぱり精霊同士で夫婦になるの?」
それが順当に思えた。だが、マイカは神となった後のフレイムに恋し、妃になることを夢見ていた。であれば、番う相手は精霊以外でも良いのか。それとも、フレイムに見初められて自身も女神にしてもらえることを期待していたのか。
『そうとも限らねえぜ。一番多いのは精霊同士の組み合わせだが、他の種族とくっ付くこともある。その場合、子は精霊になるが、そうじゃねえ方の性質も引き継いで生まれるんだ』
例えば、精霊と霊獣が結ばれて子を成した場合、その子は精霊として生まれるが、霊獣の要素も受け継いでいるという。
「えっ、大精霊の子どもに命令されて角を奪いに行かされた!?」
程なくして戻って来た従神たちから報告を受け、アマーリエは驚きで声を高くした。再びこの場に連れて来られたトライコーンも目を丸くしている。
『はい。大精霊の御子君たる上級精霊、シルファール様のご所望だと……』
『ちっ、あのワガママ悪ガキかよ』
フレイム付きの使役が首肯し、表情に剣呑さを帯びたフレイムがガリガリと頭をかいた。
「ワガママ悪ガキ?」
『ああ。生来から父親譲りの強大な霊威を持っててな、潜在能力も恐ろしく高いから、いずれ大精霊を継ぐだろうともっぱらの噂だ』
大精霊は上位精霊同士の推薦や互選で決まる。駆け引きや交渉、派閥争い、果ては袖の下までが飛び交うため、結果がどうなるかは蓋を開けてみるまで分からない。だがそれでも、時の大精霊の息子であり、かつ霊威も強いとなれば、選考においては格段に有利となる。
なお、神々は大精霊選びには原則口も手も出さない。個々の神に仕える専属の神使であれば、自分の嗜好と基準に合致する者を付かせたいと思うが、大精霊はそのような使役とは立ち位置が違う。天界中の使役を統べる立場だ。ゆえに、使役の頂点は同じ使役が選べということで、精霊たち自身に決めさせている。
『先代の大精霊が良い例だが、性格や素行に問題があろうが適性が低かろうが、選ばれる時は選ばれるからな。悪ガキだってそうなるかもしれねえ』
(この言い方……シルファールは問題有りの精霊みたいね。先代と副大精霊も意味深なことを言っていたし)
サラリと告げられるフレイムの言葉と、先ほど見聞きした精霊たちの台詞。その端々から、シルファールという精霊の言動や思考がよろしくないことが伺える。
「トライコーンの件に関わっているなら、これから私と話をすることもあるかしら?」
『有り得るな。そん時は遠慮せず上位者として接しろ。正式な神格を授かってねえ、完全な神じゃねえ奴を相手に、お前がへりくだることはないからな。聖威師が膝を折るのは正規の神に対してだけだ。ましてや、悪ガキはまだ神格を得てもいない一精霊なんだしな』
「分かったわ。……それにしても、大精霊の子はやっぱり何かワケ有りなのね」
『やっぱり?』
(あっ)
思わず漏らした言葉を聞き漏らさなかったフレイムに、肩をすぼめて言う。
「ええと、今から話すことはここだけの話にしてちょうだい。わざとではないのだけれど、大精霊たちが話しているのを聞いてしまって……」
大精霊と先代大精霊、副大精霊、ついでにアーディエンスのことも含め、回廊の柱の陰で見聞きしたことを話す。ふんふんとそれを聞いたフレイムが、先代大精霊とアーディエンスのくだりでは気まずげな顔をした。自業自得の先代はともかく、巻き添えとなったアーディエンスに対しては考えるところがあるのかもしれない。
『そんなことがあったのか。……精霊が誕生するパターンで多いのは、大きく二つ。一つは天界の気から生まれるやつで、これが最多だ。気以外にも、雫とか花びらなんかから出て来ることもあるな。もう一つが、親精霊が相手を見付けて子作りするやつだ。シルファールは後者で誕生した』
なお、フレイムのように神の気が精霊化して生まれるのはかなりのレアケースなので、今は除外して考えて良いという。
『ちなみに、天界の気とかから発生した場合は、最初から大人の姿と思考を持って生まれる。俺もそっちのパターンだった。けど、子作りをして生まれた後者の場合、赤ん坊の姿で現れて、心と体が段々育ってくんだ。人間みたいにな』
シルファールは今まさに成長段階にあるのだという。
「精霊もそういう行為をするのね。やっぱり精霊同士で夫婦になるの?」
それが順当に思えた。だが、マイカは神となった後のフレイムに恋し、妃になることを夢見ていた。であれば、番う相手は精霊以外でも良いのか。それとも、フレイムに見初められて自身も女神にしてもらえることを期待していたのか。
『そうとも限らねえぜ。一番多いのは精霊同士の組み合わせだが、他の種族とくっ付くこともある。その場合、子は精霊になるが、そうじゃねえ方の性質も引き継いで生まれるんだ』
例えば、精霊と霊獣が結ばれて子を成した場合、その子は精霊として生まれるが、霊獣の要素も受け継いでいるという。
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