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第8章
24.その愛を捨てられない
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『神の場合、片親が神格を解放していたら、子も生粋の完全な神として顕現するだろ。もう片方の親が神格を抑えた聖威師だろうが、極端な話、神じゃなかろうが関係なくだ。顕現する子に神以外の要素は入らねえ。けど、精霊の場合はそうじゃねえってコトだ』
「神と精霊は存在が根本から違うものね」
『だな。精霊はアレだ、人間みたいに同じ奴を好きになって取り合うとか、三角関係とか略奪とか、ドロドロになることもある』
「以外と俗っぽいわよね……」
『前にも言ったが、精霊だって喜怒哀楽や愛情を持つからな。正負の念も邪欲もあるし、派閥も存在する。人間が思うより俗物な面も多いんだぜ』
確かに、マイカはフレイムに横恋慕しており、ヨルンとメルビンは神になりたいと希求していた。そんなことを考えた時、フレイムの声が低くなった。
『だからこそ、どうしようもねえ老害爺共もいるんだしな』
「老害……?」
『隠居した奴らだよ。ろくでもねえ腐れ爺が一定数いる。……けど、それも必要なんだ』
何かを堪えるように言葉を押し出し、切り替えるように雰囲気を和らげてまとめる。
『アイツらは、普段は奥に引っ込んでて滅多に表には出て来ねえ。一時昇天してるだけのユフィーが会う可能性はほぼないから、今は気にすんな』
そう言い切られると、何となくそれ以上は聞き難い。アマーリエは無言で頷くに留めた。将来、完全昇天した時には教えてもらえるだろう。
「そうだわ、先代の大精霊なのだけれど。箔付けであっても一度神格を賜れば、それを剥奪されても神々への同族愛は残り続けるのでしょう。その気持ちって、消してあげることはできないの?」
先代の現状は自身の悪業の結果だ。それでも、このまま未来永劫、神々への親愛を抱いたまま惑い続けるのは些か気の毒に思えた。先代大精霊とその妻子、皆にとって救いがない状況だ。
『消せる。自然には消えねえから、神の力で失くすんだけどな。選択の機会も与えてる。神格を剥奪した後に、同胞愛を消すかこのまま持ち続けるか問うんだ。後者を選んだとしても、これより先、神々の方から愛を与えることは決して無いと断言した上でな』
「では……先代は親愛の維持を選んだのね?」
そうでなければ、今の状況にはなっていないはずだ。
『ってことだ。消して欲しいと願う奴はいねえ。皆、忘れたくないと言うんだ。何より大切な家族に対して抱いた、尽きることがない愛情を。選択と決定の権利は当事者に委ねてるから、神々は原則口出ししねえ』
「そうなの……」
突き刺すような視線を向けていたアーディエンスの目は、血涙を流しているように赤かった。彼の母が心を病んでしまったという台詞も蘇り、胸が痛む。だが、選択肢と機会を与えられた上で、当事者の先代がそういう判断をした以上、何も言えない。
フレイムが空気を変えるように咳払いした。
『んで、話を戻すと、悪ガキ……シルファールは、まぁアレだ。典型的なワガママ坊ちゃんつーか。元々は分別があってめちゃくちゃ賢い奴だったんだが、気付けばすっかり変わっちまってたんだ』
やれやれと首を振る動きに呼応し、ワインレッドの髪が揺れた。先ほどかき回したせいで、ところどころぴょんと跳ねている。
『強力な霊威を持って生まれ、大精霊の御子っていう付加価値もある。しかも、座学も実技も優秀なんてモンじゃねえ。百伶百利の天才児だ。礼儀作法に学術研究、武術、あらゆる領域がズバ抜けてる。だから、末は神格持ちになる可能性が高いと見た一部の奴らが、我先にアイツを持ち上げて、ヨイショしまくったらしいんだよ』
言葉を切ったタイミングで、フレイムの従神が後に続く。
『父親である大精霊はその状況を憂い、もっと厳しく接するよう再三繰り返してたそうです。ですけど、彼も多忙な立場っすから、目が行き届かないことも多くて。その間隙を縫うように、周囲がシルファールをおだてました。その結果が順調に出たのが現在だって言われてます』
「ええと――フレイムの言葉を借りるなら、ワガママ坊ちゃんの悪ガキになってしまったのね?」
『そっす。前は聡明叡知な奇童だったのが、この2~3年ほどで激変しちゃったんす。賞賛と肯定と飴ばっか与えられた子が増長しないはずないって、皆ボヤいてるっすよ』
「神と精霊は存在が根本から違うものね」
『だな。精霊はアレだ、人間みたいに同じ奴を好きになって取り合うとか、三角関係とか略奪とか、ドロドロになることもある』
「以外と俗っぽいわよね……」
『前にも言ったが、精霊だって喜怒哀楽や愛情を持つからな。正負の念も邪欲もあるし、派閥も存在する。人間が思うより俗物な面も多いんだぜ』
確かに、マイカはフレイムに横恋慕しており、ヨルンとメルビンは神になりたいと希求していた。そんなことを考えた時、フレイムの声が低くなった。
『だからこそ、どうしようもねえ老害爺共もいるんだしな』
「老害……?」
『隠居した奴らだよ。ろくでもねえ腐れ爺が一定数いる。……けど、それも必要なんだ』
何かを堪えるように言葉を押し出し、切り替えるように雰囲気を和らげてまとめる。
『アイツらは、普段は奥に引っ込んでて滅多に表には出て来ねえ。一時昇天してるだけのユフィーが会う可能性はほぼないから、今は気にすんな』
そう言い切られると、何となくそれ以上は聞き難い。アマーリエは無言で頷くに留めた。将来、完全昇天した時には教えてもらえるだろう。
「そうだわ、先代の大精霊なのだけれど。箔付けであっても一度神格を賜れば、それを剥奪されても神々への同族愛は残り続けるのでしょう。その気持ちって、消してあげることはできないの?」
先代の現状は自身の悪業の結果だ。それでも、このまま未来永劫、神々への親愛を抱いたまま惑い続けるのは些か気の毒に思えた。先代大精霊とその妻子、皆にとって救いがない状況だ。
『消せる。自然には消えねえから、神の力で失くすんだけどな。選択の機会も与えてる。神格を剥奪した後に、同胞愛を消すかこのまま持ち続けるか問うんだ。後者を選んだとしても、これより先、神々の方から愛を与えることは決して無いと断言した上でな』
「では……先代は親愛の維持を選んだのね?」
そうでなければ、今の状況にはなっていないはずだ。
『ってことだ。消して欲しいと願う奴はいねえ。皆、忘れたくないと言うんだ。何より大切な家族に対して抱いた、尽きることがない愛情を。選択と決定の権利は当事者に委ねてるから、神々は原則口出ししねえ』
「そうなの……」
突き刺すような視線を向けていたアーディエンスの目は、血涙を流しているように赤かった。彼の母が心を病んでしまったという台詞も蘇り、胸が痛む。だが、選択肢と機会を与えられた上で、当事者の先代がそういう判断をした以上、何も言えない。
フレイムが空気を変えるように咳払いした。
『んで、話を戻すと、悪ガキ……シルファールは、まぁアレだ。典型的なワガママ坊ちゃんつーか。元々は分別があってめちゃくちゃ賢い奴だったんだが、気付けばすっかり変わっちまってたんだ』
やれやれと首を振る動きに呼応し、ワインレッドの髪が揺れた。先ほどかき回したせいで、ところどころぴょんと跳ねている。
『強力な霊威を持って生まれ、大精霊の御子っていう付加価値もある。しかも、座学も実技も優秀なんてモンじゃねえ。百伶百利の天才児だ。礼儀作法に学術研究、武術、あらゆる領域がズバ抜けてる。だから、末は神格持ちになる可能性が高いと見た一部の奴らが、我先にアイツを持ち上げて、ヨイショしまくったらしいんだよ』
言葉を切ったタイミングで、フレイムの従神が後に続く。
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「ええと――フレイムの言葉を借りるなら、ワガママ坊ちゃんの悪ガキになってしまったのね?」
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