神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました

土広真丘

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第1章

42.醜くて綺麗

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 何食わぬ顔をしたフレイムが口を開く。

「とまあ、こういうわけだ。今の映像に映っていたのが、本物の運命神ルファリオンってことだな。見て分かったろ。運命神は人に対して微塵の興味もない。同胞を除けば、天珠にしか関心がないんだ。人間に近付いて見初めるなんて有り得ねえよ」
《ねえ、フレイム》

 アマーリエは念話でこっそりと話しかける。

《今のはもしかして、あなたの記憶とかだったりする?》
《おっ、正解。さすがアマーリエ。ちなみに、運命神と話してた女神は煉神れんしんブレイズ。火神の最初の御子で……端的に言えば俺の姉神だな》

 フレイムが即座に念話で応じてくれた。

《やっぱり。フレイムと似ていたもの》
(ということは、末の義弟くんと呼びかけられていたのがフレイム……そして、ブレイズ様とルファリオン様が――夫婦? えっ、夫婦!?)

 ミリエーナが運命神の寵を受けたと言った際、やけに激しく否定していたフレイムを思い出す。自分に必要以上に肩入れしているだけだと思っていたが、本物のルファリオンと義兄弟で、彼をよく知っていたならば当然だ。

(そうだわ、あの時フレイムは何か言いかけていたのに、私が寝かせてと懇願して会話を打ち切ったから……)

 一気に流れこんで来た情報を整理していると、フレイムがミリエーナを見た。

「おい、バカ妹」

 真っ青な顔で視線をさ迷わせていたミリエーナが飛び上がる。

「今見たものを信じるか信じないかはお前の自由だ。俺が映像を捏造ねつぞうして嘘を言っていると思いたいなら、思えばいいさ」

 突き放すように言い放ち、続ける。

「だが――これだけは言っておく。お前は既に、そこにいるルファ様とやらの生き餌だ。いずれは天界に上がる。その時には嫌でも真実が突き付けられ、永劫の地獄ならぬ天獄てんごくが始まる。そのことは覚えておけ」
「……お、おかしいわよ! ルファ様が本当に悪神だったら、聖威師はどうして星降の儀で教えてくれなかったの!? 悪神に魅入られたら地獄だって知ってるのに!」

 前方の聖威師たちを示し、ヒステリックな声を上げた妹に、アマーリエは落ち着いた声音で告げた。

「それは無理よ。神官府の講義を思い出して。愛し子を選ぶのは、全ての神が持つ正当な権利だから、外部の者がそれを邪魔することはできない。神々の規定で決まっていると習ったはずよ」
「あ……」

 ミリエーナが言葉を詰まらせる。すると、一瞬の沈黙にスルリと入り込むように、渦中の少年神が口を挟んで来た。

『そこの醜い女の言う通り。ただ、原則邪魔はできないけれど、複数の神が目を付けた者がいた場合、他の神に取られたくないからとライバルを牽制するのは有りだ。つまり、僕がライバルだと思い込んだ者をうっかり狙い撃ちしたのは大丈夫』
「黙れよお前、アマーリエは醜くねえよ綺麗だよ! ――つか大丈夫じゃねえしこっちはマジで大ダメージ負ったんだぞふざけんなよ!?」

 少年神をビシッと指差し、フレイムが目をカッと見開いて怒鳴る。相当頭に来たらしい。

(さっきから狙撃だとか狙い撃ちだとか、何の話? もしかしてフレイムが最初に倒れていたのって、力の使い方に慣れていなかったからではなかったの?)
「あの……」

 おずおずとアマーリエが声をかけると、少年神は端正な容貌を嫌そうに歪めた。

『何かな、汚らわしいお嬢さん』
「は!? 何だとお前――」
「良いの。もう避けられる理由が分かったから気にしないわ。……ラミルファ様。フ……こちらの神使様はミリエーナを見初めたわけではなかったと思うですが」
『そうだな。だが僕の勘違いだったとしても、狙い撃ちした時点では本気でライバルだと思っていたから。そういう場合はセーフなのだよ。まぁ、その辺りは天界の規定が色々と細かくあってね。詳細な説明は割愛するが』
「そうなのですか……」

 曖昧に返答したアマーリエが隣を見ると、フレイムはギリギリと奥歯を噛み締めて少年神を睨み付けている。

「あああああお前ほんとムカつくな!」

 だが、少年神の言い分自体は否定しないところを見ると、セーフというのは事実なのだろう。

『けれど、原則邪魔してはいけないという決まりは変わらない。だから聖威師たちは、レフィーに正面切って教えたり、忠告したり、そうでなくても強引に補講や個別指導を受けさせて心根を叩き直すなどの行為はできなかったのだよ』

 ミリエーナを救おうという意図を持ってそのようなことをすれば、悪神の権利を意図的に妨害したことになり、天の規則に触れる。そういった行為をしようとすると、聖威師はその場で動きを止められた上で、神格を否応無しに露出させられ、強制的に昇天させられてしまうのだという。

 アマーリエは前方を見た。何かを堪えるように、険しい表情で唇を引き結んでいる聖威師たちは、本心ではミリエーナを助けたかったのかもしれない。だが、直接的な干渉ができない以上、取れる手段が限られすぎていた。

『まあ、何らかの手段でそれらをクリアしたとしても、結果は同じだっただろう。何故なら、レフィーが僕に目を付けられていると聖威師たちが察知したのは、霊具爆発事件が起こった後だったから』

 もはや時遅しだったのだと、たのしそうな嘲笑わらい声が響いた。
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