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第1章
64.フレイムはいくつ?
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フレイムがパタパタと手を振る。
『まあほら、あれだぜ。バカ妹の件なら悪気はなかったんだ、悪気は。浄化の火も、結果はこうなっちまったけど、お前の邪魔をしたんじゃなく俺の祝い目的でやっただけだよ。だから規則違反でもねーし。……で、どうする? あのバカ妹、天界に連れて帰るか?』
『馬鹿を言うな。あんな汚いものに成り下がった女、御免被る! 生き餌の両親まで穢されてしまうとは。あやつらも中々に良き気を持っていた。いずれまとめて神使に取り立ててやろうと思っていたのに』
額を抑えて悲愴な面持ちを浮かべたラミルファの言葉に、アマーリエがダライとネイーシャを遠視してみると、二人にも浄化の火の粉がたっぷりと降りかかっていた。
《フレイム……あの人たちを助けてくれたの?》
密かに念話すると、山吹の瞳が不承不承を示すように細まった。
《ん……まあな。あんなクソッタレの家族、ホントは切り捨てたかったが……それでも、大量無差別殺人レベルの悪業を犯したわけじゃないからな。悪神の餌食にするのはさすがになぁと思って、結果的に助かるようにした。お前には本当にすまないが……》
《いいの、私もそう思っていたから。あの人たちに愛想は尽きているけれど、悪神の生き餌になれとまでは思えないもの。助けてくれてありがとう》
そこまで念話で話したところで、ラミルファが口を開いた。
『フレイム、君にはたっぷり反省してもらいたいところだ。せっかく見付けた僕好みの生き餌だったというのに』
唇を尖らせて告げる邪神は、まるで気に入ったおもちゃを壊されて拗ねる子どものようだった。フレイムが苦笑いする。
『お前のドンピシャってバカ妹みたいな奴だったんだな。悪神にもそれぞれ好みがある。ユフィーのバカ家族は確かに穢れた気を持ってはいたが、どの悪神の好みからも微妙に外れてたからスルーしちまった』
アマーリエと一月ほど共に過ごしたフレイムは、サード家の面々をじっくり視る機会があった。ゆえに魂が澱んでいることは分かったが、悪神と結び付けては考えなかった。
『だが、そうだったな……失念していたが、お前の嗜好は分かってなかったんだったな。そこにバカ妹が見事にハマるとは……うっかりしてた。まぁ気付いていたとしても、神が愛し子を得ることは権利だから、結局何もできなかっただろうけどな』
「フレイム、どうしてラミルファ様の嗜好は不明なの?」
疑問を差し挟んだアマーリエに、フレイムは頭をかきながら言う。
『あー、コイツ顕現してから年月が浅いから、単純にデータがないんだ。どんなものが特に好きとか、そういう細かい情報がな』
ラミルファ自身も頷き、補足を入れる。
『ふふ、僕は悪神たちの中でも若い方だ。人間のようにいちいち誕生日を数えたりしないが……確か今は222歳だったかな。フレイムと同じ年齢だよ』
「え……フレイムは300歳くらいなのでは?」
(30年に一度の星降の儀を見るのが今回で十回目と言っていたのだから、300年は生きているはずよね)
首を捻っていると、ラミルファが説明してくれた。
『222年は焔神になってからの年数だ。それ以前の彼は含めない』
(それ以前の彼……精霊だった頃とか、高位神になっていない普通の神様だった頃?)
火神の気が弾けて精霊化し、目をかけられ神格を得て神使になり、ついに寵愛を得て高位神になった、異色の経歴の神。それがフレイムだったはずだ。
『精霊は僕たちの同胞ではないから。神格を得た神使ならばまだセーフかもしれないが、それでも神使がメインで神格は箔付だから、完全な同胞ではない。正真正銘の神として焔神になった時から、彼は本当の意味で始まりを迎えたのだよ』
『……俺は精霊として生まれた時からずっと俺だがな』
ボソリとフレイムが呟いた。小さな声だったが、その顔は今まで見たことがないほどに寂しそうなものだった。
(フレイム?)
反射的に体が動いたアマーリエは、咄嗟にフレイムの手を握る。同時に、フルードがさらりと言葉を挟んだ。
「邪神様におかれましては、ご顕現より222年というおめでたい節目、お祝い申し上げます。焔神様はご誕生時から通算すると300歳ほどとのこと、どうか今後も地上にお慈悲の眼をお注ぎ下さい」
フレイムが一度瞬きし、アマーリエとフルードに眼を向ける。そしてアマーリエの手をそっと握り返し、フルードに向かって微笑んだ。
一方のラミルファは不思議そうに首をかしげる。
『うん? 中途半端だと思うが、めでたい節目かな?』
「222で揃っておりますから。おめでとうございます」
『ああなるほど。数字を揃えるゲームなら良かったな。ふふふ』
愉快そうに笑う邪神の機嫌は、急激に持ち直したようだ。このまま事態が終わってくれないかと祈っていると、フレイムから念話が入った。
『それでユフィー、お前の家族についてだが。悪神の手に堕ちることだけは回避させてやった。だが、このままメデタシメデタシにはさせねえ。今まで散々お前を傷付けて来た分、あいつらにはきっちり罰を受けさせるし、後悔させてやるからな』
(……ありがとう……)
両親への制裁は譲らないと言い切ったフレイム。断固とした意思を宿す眼差しに圧倒され、アマーリエの目頭が熱くなった。力強い焔を纏うこの神は、一貫して自分に寄り添ってくれる。
(あなたはどこまでも……私の味方でいてくれるのね)
込み上げる想いと共に胸中で呟いた時。
ザザッと荒いノイズのような雑音が走った――アマーリエの胸元から。
『まあほら、あれだぜ。バカ妹の件なら悪気はなかったんだ、悪気は。浄化の火も、結果はこうなっちまったけど、お前の邪魔をしたんじゃなく俺の祝い目的でやっただけだよ。だから規則違反でもねーし。……で、どうする? あのバカ妹、天界に連れて帰るか?』
『馬鹿を言うな。あんな汚いものに成り下がった女、御免被る! 生き餌の両親まで穢されてしまうとは。あやつらも中々に良き気を持っていた。いずれまとめて神使に取り立ててやろうと思っていたのに』
額を抑えて悲愴な面持ちを浮かべたラミルファの言葉に、アマーリエがダライとネイーシャを遠視してみると、二人にも浄化の火の粉がたっぷりと降りかかっていた。
《フレイム……あの人たちを助けてくれたの?》
密かに念話すると、山吹の瞳が不承不承を示すように細まった。
《ん……まあな。あんなクソッタレの家族、ホントは切り捨てたかったが……それでも、大量無差別殺人レベルの悪業を犯したわけじゃないからな。悪神の餌食にするのはさすがになぁと思って、結果的に助かるようにした。お前には本当にすまないが……》
《いいの、私もそう思っていたから。あの人たちに愛想は尽きているけれど、悪神の生き餌になれとまでは思えないもの。助けてくれてありがとう》
そこまで念話で話したところで、ラミルファが口を開いた。
『フレイム、君にはたっぷり反省してもらいたいところだ。せっかく見付けた僕好みの生き餌だったというのに』
唇を尖らせて告げる邪神は、まるで気に入ったおもちゃを壊されて拗ねる子どものようだった。フレイムが苦笑いする。
『お前のドンピシャってバカ妹みたいな奴だったんだな。悪神にもそれぞれ好みがある。ユフィーのバカ家族は確かに穢れた気を持ってはいたが、どの悪神の好みからも微妙に外れてたからスルーしちまった』
アマーリエと一月ほど共に過ごしたフレイムは、サード家の面々をじっくり視る機会があった。ゆえに魂が澱んでいることは分かったが、悪神と結び付けては考えなかった。
『だが、そうだったな……失念していたが、お前の嗜好は分かってなかったんだったな。そこにバカ妹が見事にハマるとは……うっかりしてた。まぁ気付いていたとしても、神が愛し子を得ることは権利だから、結局何もできなかっただろうけどな』
「フレイム、どうしてラミルファ様の嗜好は不明なの?」
疑問を差し挟んだアマーリエに、フレイムは頭をかきながら言う。
『あー、コイツ顕現してから年月が浅いから、単純にデータがないんだ。どんなものが特に好きとか、そういう細かい情報がな』
ラミルファ自身も頷き、補足を入れる。
『ふふ、僕は悪神たちの中でも若い方だ。人間のようにいちいち誕生日を数えたりしないが……確か今は222歳だったかな。フレイムと同じ年齢だよ』
「え……フレイムは300歳くらいなのでは?」
(30年に一度の星降の儀を見るのが今回で十回目と言っていたのだから、300年は生きているはずよね)
首を捻っていると、ラミルファが説明してくれた。
『222年は焔神になってからの年数だ。それ以前の彼は含めない』
(それ以前の彼……精霊だった頃とか、高位神になっていない普通の神様だった頃?)
火神の気が弾けて精霊化し、目をかけられ神格を得て神使になり、ついに寵愛を得て高位神になった、異色の経歴の神。それがフレイムだったはずだ。
『精霊は僕たちの同胞ではないから。神格を得た神使ならばまだセーフかもしれないが、それでも神使がメインで神格は箔付だから、完全な同胞ではない。正真正銘の神として焔神になった時から、彼は本当の意味で始まりを迎えたのだよ』
『……俺は精霊として生まれた時からずっと俺だがな』
ボソリとフレイムが呟いた。小さな声だったが、その顔は今まで見たことがないほどに寂しそうなものだった。
(フレイム?)
反射的に体が動いたアマーリエは、咄嗟にフレイムの手を握る。同時に、フルードがさらりと言葉を挟んだ。
「邪神様におかれましては、ご顕現より222年というおめでたい節目、お祝い申し上げます。焔神様はご誕生時から通算すると300歳ほどとのこと、どうか今後も地上にお慈悲の眼をお注ぎ下さい」
フレイムが一度瞬きし、アマーリエとフルードに眼を向ける。そしてアマーリエの手をそっと握り返し、フルードに向かって微笑んだ。
一方のラミルファは不思議そうに首をかしげる。
『うん? 中途半端だと思うが、めでたい節目かな?』
「222で揃っておりますから。おめでとうございます」
『ああなるほど。数字を揃えるゲームなら良かったな。ふふふ』
愉快そうに笑う邪神の機嫌は、急激に持ち直したようだ。このまま事態が終わってくれないかと祈っていると、フレイムから念話が入った。
『それでユフィー、お前の家族についてだが。悪神の手に堕ちることだけは回避させてやった。だが、このままメデタシメデタシにはさせねえ。今まで散々お前を傷付けて来た分、あいつらにはきっちり罰を受けさせるし、後悔させてやるからな』
(……ありがとう……)
両親への制裁は譲らないと言い切ったフレイム。断固とした意思を宿す眼差しに圧倒され、アマーリエの目頭が熱くなった。力強い焔を纏うこの神は、一貫して自分に寄り添ってくれる。
(あなたはどこまでも……私の味方でいてくれるのね)
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ザザッと荒いノイズのような雑音が走った――アマーリエの胸元から。
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