神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました

土広真丘

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第1章

87.彼らの現在②

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 重く長い溜め息を吐き出したフレイムは、ソファに背を預けて呟いた。

「アイツら、俺が懇々こんこんと説教した内容分かってんのか?」

 ミリエーナは未だに邪神の寵から逃れられてはおらず、ダライとネイーシャも神使として狙われている。
 フレイムは先日、それぞれの場所で拘束されているダライたちに面会し、経緯を説明した上で忠告していた。

『俺の浄化の火は、お前らの魂の表層を覆っただけだ。中身を綺麗にするのはお前ら自身の努力でやれ』

『火の効力は10年保つ。お前らは今後10年で、死ぬ気で自省し努力しろ。死に物狂いで自分を変えるんだ。火がなくなっても心が清浄さを保っていれば、ラミルファはお前らを切り捨てる。愛し子の誓約を解除し、神使に取り立てることもない』

『普通の神は、一度愛し子にした相手は何があっても見捨てねえし誓約解除もしねえが、悪神は別だ。悪神にとっての愛し子は都合のいい玩具で生き餌だから、気に入らなくなれば切り捨てる』

『ただし、10年経ってもお前の性根がねじ曲がったままだったら、切り捨てるどころか大喜びで天に連れて行かれるだろう。穢れしかない悪神の領域に引っ張り込まれたら終わりだ。二度と清浄さは取り戻せねえ』

『後10年の間に、清濁どちらにも転べる人界にいる間に、血反吐を吐きまくってでも自分を叩き直せ』

『いいか、これが最後のチャンスだ。10年後、もう一度浄化の火をかけて延長することはしてやらねえからな。一度きりの機会だと思えよ』

『それから――ラミルファだって何かしてくるかもしれねえ。お前らを誘惑しそそのかし、穢れの神威を振りかけて、邪魔な浄化の火を中和しようとするかもな。助かりたいなら、意地でもそれを退けて俺の火を絶やすな。悪神に見限られるくらいに性根が矯正されるまでは』

 強い口調でそう警告したはずだが――届いたのはこの書簡である。この調子では、浄化の火は10年も保たず、5年くらいで消えてしまうかもしれない。

「一度は情けをかけてやったんだ。それでも駄目だったなら、二度目は見捨てる」

 冷たく言ったフレイムは、いそいそとチョコレートをつまんでいるフルードを見た。

「そういや、バカ妹のバカ婚約者――いや、元婚約者か――はどうだ? お前が処分を任されてたろ」
「神託を独断破棄した罪で投獄いたしましたが、『こんなはずじゃなかった。アマーリエが全て悪い。最底辺はアイツだ、俺じゃない! 俺は悪くない!』と叫んでおります。本件により、グランズ家は自主的に爵位を返上しました」
「あーあー……」

 余談だが、属国にあるネイーシャの生家は、サッカの葉のサンプルを適切に提出しなかったとがと、神託をきちんと読まず別の神官に丸投げした罪で裁かれている。特に神託の件は、破り捨てて隠蔽したシュードンに比べればマシとはいえ、十分に大問題だ。貴族籍の剥奪はもちろんのこと、長期に渡る過酷な労役など相当な厳罰が下されることになっていた。

「で、お前はバカ婚約者をどうするつもりなんだ?」
「神官府で生涯に渡って重労働に従事させます。死亡時――つまり昇天時より後の処遇は、四大高位神様方にお任せいたします。改心と更生の度合いにより、適切な神の使いに割り当てて下さるでしょう」

 神託を勝手に廃棄するような者を神使に選び出す神などいない。いずれの神にも見出されなかった神官は、死後に四大高位神により適当と思われる神の使いに割り振られる。
 だが、繰り返しになるが、シュードンは神の意を破り棄て完全無視した無礼者だ。まともな神に割り当ててはもらえないだろう。厳しく神使に当たる神の元に追いやられ、未来永劫こき使われることになる。これはネイーシャの実家の者にも当てはまるかもしれないが。

「全っ然改心してなかったら、悪神が引き取りに来るかもな」

 現在の悪神たちは、神託を隠蔽されたことでシュードンを嫌悪している。だが、仮に数十年もの時を反省せずに過ごし、最期までそれを貫いたとしたら。その時は禍神が動くかもしれなかった。

「可愛さ余って憎さ百倍の逆バージョンだな。救いようのない馬鹿さ加減が一周回って愛おしい、みたいな感じか」
「その点も言い含めておきます。それでも考えを改めなければ自己責任ですので」
「何とか助かるには、今生できっちりしっかりがっつり改心するしかねえな。別人になるレベルで。そしたら比較的マシな神の使いにしてもらえるかもしれねえ」

 彼が助かるには、自身を根本から更生するという茨の道を乗り越えるしかないのだ。

「バカ婚約者だけじゃく、バカ四強は全員、その道に賭けるしかないだろう。……俺はバカ家族の処断権を持っているが、お前と同じ方針にしようと考えてる」

 後半は渋々の台詞だった。フルードを見ながら内心でひとりごちる。

(本音を言えば、それじゃ全然不足なんだが……ユフィーには強力な味方が付いてるみたいだからな)

 対フレイム兵器としては、アマーリエと双璧をなす味方だ。フレイムは決してを傷付けない。

(ったく、厄介なことになりやがって)
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