神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました

土広真丘

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第2章

6.呪われた血族

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 筒を手にしたフルードは、軽く振ってから傾けた。即座に一本の棒が飛び出す。真っ黒なドクロマークだ。

(……どうしてこんな時に限って最悪が出てしまうのよ)
「き、気にすることはないですよ、所詮はただの遊びですし。私もバツばかりで、一番良かったのでも三角なんです。ドクロが出たことだって何度もありますし」

 両手を振ってフォローに走るアマーリエに構わず、繊細な氷菓のごとき美貌を持つ大神官は薄く笑った。棒を戻してから再度筒を掌中で転がし、再び一本を引く。やはりドクロだった。

 続けて3回目。ドクロ。4回目。またドクロ。さらに5回目。またまたドクロである。

「なっ、何で……きちんと振っているのに」

 目を点にして見ていたアマーリエは、呆然と呟く。

「ちょっと失礼します」

 フルードから筒を取り戻して引いてみるが、出たのは三角だった。

(どうして大神官が振るとドクロばかり出るの――あっ、そうだわ!)

 聖威を使い、筒の中の棒を増やす。

(50本……いえ、念のためにもっと多く)
「少し優しくしてみました。二重丸15本、丸と三角が各35本、バツ10本。ハートは4本で、ドクロは1本だけです」
「合計100本ですね」

 余裕の表情で言ったフルードが、改めて筒を振った。真っ黒な骸骨が描かれた棒が滑り出る。

「…………」

 言葉もなく固まったアマーリエは、ハッと我に返る。

(ま、負けないわ!)

 再び聖威を発動し、自信満々で大神官を見る。

「もう一度! もう一度お願いします!」
「はいはい」

 頷いたフルードが筒を傾けるが、振れども振れども一向に棒が出て来ない。カラコロと虚しい音だけが響く。

「――アマーリエ、もしかして全てハートにしたのではありませんか?」
(バ、バレちゃった!)

 ニコリとした表情で問われ、ギクリと両肩を跳ねさせる。

「私に良いものを引かせようとしてくれたのですね。ありがとう。ですが、ズルはいけませんよ」
「う……すみません。けれど、大神官も聖威でドクロを引くよう調整されたのではないですか?」

 ウケ狙いでイカサマをしたのだろうと暗に抗議するが、緩やかな笑みでの否定が返された。

「いいえ。私は何もしていません」
「そんなはず――」
「私の血は呪われているのです。我が生家、レシス家に生まれた者の一部は、世にはびこる不幸と厄災を一身に受けるかのように災難に見舞われ続ける」

 20代の青年にも10代の少女にも見える不思議な美貌が、透明な輝きを帯びる。

「私はその一部に該当するのです。くじを引けば全てハズレ、カードを引けばどれも最悪。賭け事などすれば全敗です。まぁ体質と思えば」
「嫌な体質ですね……」
「良いこともありますよ。慰問した孤児院でお菓子を景品にしてゲームをした時、あまりに私が負けまくるので、子どもたちが可哀想なモノを見る目になって自分たちの景品を分けてくれるのです。憐れみと施しを学んでくれるのですよ」
(聖威師が孤児に施されてどうするんですか)

 内心で突っ込むアマーリエ。フルードは思い出をかこつように目をよそがせる。

「聖威師になるまでは、私の人生は地獄そのものでした。生まれも育ちも周辺環境も、全てにおいて大ハズレ。ですが9歳の時、ただ一回当たりを引いたのです。それで全てが逆転しました」

 一等賞どころか、特等賞すらぶち抜くほどの超絶な大当たり。それで自分を取り巻く全てを一発大逆転できたのだという。

「ハズレばかりを引き続けた人生で、一度だけ手にした最初で最後の大当たりでした」
「その大当たりが狼神様だったのですね」
(大神官は狼神様に見初められて聖威師になられたんだもの)

 フルードは静かに微笑み、チラと視線を移す。何だろうと思ったアマーリエもそちらを見るが、いるのはソファベッドでゴロゴロしているラミルファと、奥のキッチンで調理をしているフレイムだけだ。

(……もしかして、大当たりってフレイム?)

 一瞬そんな考えが脳裏を掠めるが、すぐに思い直す。

(いえ、やっぱり狼神様よね。狼神様の寵を受けて神格を得たから、フレイムとも出会えたわけなのだし)

 思いつつ、アマーリエはふと我が身を顧みた。

(そういえば、私もそれなりには不幸だったわよね)

 元伯爵家たるサード家の長女として生まれたものの、両親が期待する強い霊威を持たなかった自分。神官でありながら神に嫌われ、父母と妹にも疎まれて無明の闇にいた。それが、高位神の寵愛を受けて光明が開かれた。

(フレイムと結ばれた今はとっても幸せだけれど)

 そう考えた時、意中の存在がタイミング良く姿を現した。
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