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第2章
21.霊鳥メイデン
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「フレイム、大丈夫?」
首を捻るアマーリエ。極上の笑顔の弾丸で、夫の心臓を撃ち抜いた自覚はない。
「焔神様、アマーリエが可愛すぎるのは分かりますが、ここで鼻血など出さないで下さいね」
「念のためにハンカチーフを用意しておきましょうか?」
冷静に釘を刺すのは佳良、玉を転がすように笑うのは恵奈。二人も万一の際のフォローのためにと同席してくれていた。
といっても、アシュトンとオーネリアも含めて4人も手伝いは要らない。それらしい理由を付けてはいるが、要するにアマーリエを案じているのだ。
「い、いや、大丈夫だ……」
どうにか体勢を立て直したフレイムが、軽く片手を振った時。
《失礼いたします。アマーリエの着替えはお済みですか?》
脳裏に念話が響いた。ゆったりとした温厚な声――皇国の先代大神官、唯全当波だ。現大神官たる当真の父でもある。オーネリアが答えた。
《ええ、ちょうど終わったところです》
《そちらに転移しても大丈夫かな?》
今度は当真だ。父と同様に穏やかな声をしている。
《どうぞ》
アマーリエが応じると、男性の聖威師たちが転移で現れた。
「アマーリエ、とても綺麗だ」
怜悧な美貌を和ませたライナスが、紅蓮と紅葉のドレスを見て言う。当波と当真も、親子よく似た柔和な容貌を緩めて頷き、口々に賞賛の言葉を述べた。
「本当にお似合いですよ」
優しい笑みで賛辞をくれるフルードは、血色の良い顔をしており、余裕が感じられた。
(お元気そうで良かったわ)
彼も追い込まれているのではないかと案じていたので、密かに安堵する。
「うん、す……すごく素敵だ」
共に現れたフロースが慣れない調子で褒める後ろから、ラミルファが顔を覗かせた。邪神はこの2日間、アマーリエを心配してフレイムに定期的な念話をよこしていたらしい。二神で何やら話し合い、フレイムはどこか憂いを帯びた険しい顔になることが多かった。
「ほぅ、良いじゃないか。君が持つ魅力を存分に引き出すドレスだ。まさに焔の花。火の神一族の女神に相応しい」
フレイムがいる手前、他の男性たちは無難な感想に留める中、遠慮なく褒め倒す。灰緑の眼がバレッタにはめ込まれている玉に気付き、つと細められた。
「おや」
「過日に賜りました品を使わせていただいております。いつもはロケットペンダントに入れて付けていますが、今日はせっかくですので髪飾りにしてみました」
「それで良い。くれぐれも肌身離さず持っておくのだよ。これは神命だ。……ああそうだ、君にも良いものをあげよう、フレイム」
薄笑いで手をかざすと、虚空に真っ黒な大玉が出現し、フヨフヨと宙を浮遊した。
「邪神特製のネバネバ泥団子だ。霊鳥メイデンのフンを固めたもので、外はカリッと中は半生。顔面で破裂させて泥パックすればさっぱりする」
「いらねーわそんなモン!」
清らかな純白の羽を持つメイデンは、鳥型の霊獣の一種だ。霊鳥のため神とも交信可能で、神託を携えて地上に舞い降りることもある。
その可憐な囀りは冬の雪を溶かして春に変えると言われ、瞳の輝きは満天の夜空を映したようだと評される。……ただし、フンが激烈に臭い。乙女なのに。
現時点で臭いがしないのは、外面は乾いているからだろう。中身を出したら地獄絵図になる。
「そう遠慮せず、ほら」
「遠慮なんかしてねーよ本心だよ!」
ラミルファが指を鳴らすと、浮かんでいた大玉が一直線に飛んだ。素早くかわすフレイム。標的を外した玉はヒューンと室内を翔け、窓から外に飛び出して行った。
首を捻るアマーリエ。極上の笑顔の弾丸で、夫の心臓を撃ち抜いた自覚はない。
「焔神様、アマーリエが可愛すぎるのは分かりますが、ここで鼻血など出さないで下さいね」
「念のためにハンカチーフを用意しておきましょうか?」
冷静に釘を刺すのは佳良、玉を転がすように笑うのは恵奈。二人も万一の際のフォローのためにと同席してくれていた。
といっても、アシュトンとオーネリアも含めて4人も手伝いは要らない。それらしい理由を付けてはいるが、要するにアマーリエを案じているのだ。
「い、いや、大丈夫だ……」
どうにか体勢を立て直したフレイムが、軽く片手を振った時。
《失礼いたします。アマーリエの着替えはお済みですか?》
脳裏に念話が響いた。ゆったりとした温厚な声――皇国の先代大神官、唯全当波だ。現大神官たる当真の父でもある。オーネリアが答えた。
《ええ、ちょうど終わったところです》
《そちらに転移しても大丈夫かな?》
今度は当真だ。父と同様に穏やかな声をしている。
《どうぞ》
アマーリエが応じると、男性の聖威師たちが転移で現れた。
「アマーリエ、とても綺麗だ」
怜悧な美貌を和ませたライナスが、紅蓮と紅葉のドレスを見て言う。当波と当真も、親子よく似た柔和な容貌を緩めて頷き、口々に賞賛の言葉を述べた。
「本当にお似合いですよ」
優しい笑みで賛辞をくれるフルードは、血色の良い顔をしており、余裕が感じられた。
(お元気そうで良かったわ)
彼も追い込まれているのではないかと案じていたので、密かに安堵する。
「うん、す……すごく素敵だ」
共に現れたフロースが慣れない調子で褒める後ろから、ラミルファが顔を覗かせた。邪神はこの2日間、アマーリエを心配してフレイムに定期的な念話をよこしていたらしい。二神で何やら話し合い、フレイムはどこか憂いを帯びた険しい顔になることが多かった。
「ほぅ、良いじゃないか。君が持つ魅力を存分に引き出すドレスだ。まさに焔の花。火の神一族の女神に相応しい」
フレイムがいる手前、他の男性たちは無難な感想に留める中、遠慮なく褒め倒す。灰緑の眼がバレッタにはめ込まれている玉に気付き、つと細められた。
「おや」
「過日に賜りました品を使わせていただいております。いつもはロケットペンダントに入れて付けていますが、今日はせっかくですので髪飾りにしてみました」
「それで良い。くれぐれも肌身離さず持っておくのだよ。これは神命だ。……ああそうだ、君にも良いものをあげよう、フレイム」
薄笑いで手をかざすと、虚空に真っ黒な大玉が出現し、フヨフヨと宙を浮遊した。
「邪神特製のネバネバ泥団子だ。霊鳥メイデンのフンを固めたもので、外はカリッと中は半生。顔面で破裂させて泥パックすればさっぱりする」
「いらねーわそんなモン!」
清らかな純白の羽を持つメイデンは、鳥型の霊獣の一種だ。霊鳥のため神とも交信可能で、神託を携えて地上に舞い降りることもある。
その可憐な囀りは冬の雪を溶かして春に変えると言われ、瞳の輝きは満天の夜空を映したようだと評される。……ただし、フンが激烈に臭い。乙女なのに。
現時点で臭いがしないのは、外面は乾いているからだろう。中身を出したら地獄絵図になる。
「そう遠慮せず、ほら」
「遠慮なんかしてねーよ本心だよ!」
ラミルファが指を鳴らすと、浮かんでいた大玉が一直線に飛んだ。素早くかわすフレイム。標的を外した玉はヒューンと室内を翔け、窓から外に飛び出して行った。
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