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第2章
50.愚行の代償
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『まぁ阿呆だわな。霊具で神威が安定させられるはずがない。そも、神は神格を抑えない限り、顕現と同時に己の力を十全に使いこなせるようになる。6年前にもそのことは伝えたらしいが、まぁ記憶力が残念な奴なんだろうな~』
「と言いますか、顕現して日が浅いというのは、神の時間基準で仰ったのでしょう。オーブリーよりは遥かに年上であるはずですが……」
『多分その愚かな神官は、それを読み取れず確認もせず、言葉の通りに受け取ってしまったのだと思うよ。顕現してから一年も経っておらず、神威の制御も危うい未熟な神であると、勝手に思い違いをしたのだろうね』
完全に神を赤子扱い――格下扱いしている。高次の存在に対する明らかな侮辱であり知識不足だ。しかも、照覧祭で自分を選んで欲しい欲が丸出しである。神にも好みがあるが、我欲が強い者は彼の神が最も嫌うタイプに分類される。
『それだけなら一笑に付して終わりだったかもしれんが、今回に関しては6年越しの非礼ということもあり、あの子の怒りが再燃してしまったようでなぁ。オーブリーが死後天界に来ることは許さぬと言い出した』
神が拒絶した場合、霊威師の魂は天に上がれず、一般人と同様に転生する。場合によっては、転生の前に地獄行きの刑が入ることもある。
だが、並みの地獄送りでは、その神の怒りは収まらなかったらしい。より過酷な罰を与えることにした。藪を突いて蛇を出す、という皇国のことわざを地で行くがごとき結果である。
『あの子は狼神様と仲が良いだろう。領域に遊びに行って愚痴ったことで、ガルーンと老夫婦に対する計画を知らされ、オーブリーも制裁対象に追加しようかと提案されたそうだ』
子ども扱いされたくらいで激怒するとは狭量だ、と思う者もいるだろう。だが、そう言ったところで神は気にも留めない。自分には自分の、相手には相手の考え方がある。狭量だと思われても別に良いのだ。それで神に何かの不都合が生じるわけではない。
『それで邪霊の生贄にすることにしたのですか。魂を地下に連れて行かれれば、天には上がれない。この星が滅びるまでの永き時を、最悪の環境で過ごすことになる。下手な地獄に送るよりよほど手酷い罰だ』
ラミルファが、未使用のまま転がしていたティースプーンを角砂糖の詰まった壺に入れ、一粒すくい出す。カップには入れずにピンと空中に放ると、砂糖はドロリと腐食し、欠片も残さず虚空に溶け消えた。
『ただ、フルードは優しい。懲罰を与える場に居合わせたらオーブリーを庇うかもしれんから、できれば神官府から遠ざけて欲しいと頼まれてなぁ。なら、どこか別の空間に閉じ込めてしまうのが確実だと思ったんだ』
下手にあれこれと小細工を弄するより、スパッと違う場所に隔離してしまった方が良い。
『強引な真似をしてすまなかった。本当は眠らせてしまうのが手っ取り早かったんだが、そこまでしたらあの神器が黙ってないからな』
そう告げる葬邪神は、フルードの胸元を見ている。正確には、その魂に潜む焔の神器を。
『……ふぅぅぅ~ん。そうなのですか……』
ラミルファがジトッと上目遣いで兄を見た。物言わぬ瞳が、百万の語を尽くすより雄弁に語っている。『本当にそれだけなのか?』と。葬邪神が正面からその視線を見て頷く。
『うん、そうだとも!』
「そうでしたか」
当のフルードは、気を悪くした様子も見せずあっさり頷いた。実際、怒りや反骨心は抱いていない。元々、聖威師は天の神に逆らえない。極端な話、煮られようが焼かれようが拒否権はないのだ。葬邪神の場合、すまなかったと詫びてくれているのだからマシな方である。
神格を抑えている自分たちは、神性を解放している神とは対等ではない。そのことを弁えていなければ、聖威師などやっていられない。
とうに割り切った心で、繊細な結晶を象ったミルクチョコレートをつまんで食べた。濃厚な甘さに目元を緩める。
『美味いか。ここにある菓子は俺が作ったんだぞ』
「はい、美味しいです」
素直に頷き、他の味にも手を伸ばす。
「では、リーリアの件はどういうことでしょうか?」
続けて問いかけながら、スイートチョコとホワイトチョコがマーブル状になったものと、ピスタチオ入りのものを幾つか取った。アマーリエへのお土産にしようと、一部を小袋に移す。
「彼女も神の恨みや怒りを買ったのでしょうか」
『うむ、それなんだがな……』
「と言いますか、顕現して日が浅いというのは、神の時間基準で仰ったのでしょう。オーブリーよりは遥かに年上であるはずですが……」
『多分その愚かな神官は、それを読み取れず確認もせず、言葉の通りに受け取ってしまったのだと思うよ。顕現してから一年も経っておらず、神威の制御も危うい未熟な神であると、勝手に思い違いをしたのだろうね』
完全に神を赤子扱い――格下扱いしている。高次の存在に対する明らかな侮辱であり知識不足だ。しかも、照覧祭で自分を選んで欲しい欲が丸出しである。神にも好みがあるが、我欲が強い者は彼の神が最も嫌うタイプに分類される。
『それだけなら一笑に付して終わりだったかもしれんが、今回に関しては6年越しの非礼ということもあり、あの子の怒りが再燃してしまったようでなぁ。オーブリーが死後天界に来ることは許さぬと言い出した』
神が拒絶した場合、霊威師の魂は天に上がれず、一般人と同様に転生する。場合によっては、転生の前に地獄行きの刑が入ることもある。
だが、並みの地獄送りでは、その神の怒りは収まらなかったらしい。より過酷な罰を与えることにした。藪を突いて蛇を出す、という皇国のことわざを地で行くがごとき結果である。
『あの子は狼神様と仲が良いだろう。領域に遊びに行って愚痴ったことで、ガルーンと老夫婦に対する計画を知らされ、オーブリーも制裁対象に追加しようかと提案されたそうだ』
子ども扱いされたくらいで激怒するとは狭量だ、と思う者もいるだろう。だが、そう言ったところで神は気にも留めない。自分には自分の、相手には相手の考え方がある。狭量だと思われても別に良いのだ。それで神に何かの不都合が生じるわけではない。
『それで邪霊の生贄にすることにしたのですか。魂を地下に連れて行かれれば、天には上がれない。この星が滅びるまでの永き時を、最悪の環境で過ごすことになる。下手な地獄に送るよりよほど手酷い罰だ』
ラミルファが、未使用のまま転がしていたティースプーンを角砂糖の詰まった壺に入れ、一粒すくい出す。カップには入れずにピンと空中に放ると、砂糖はドロリと腐食し、欠片も残さず虚空に溶け消えた。
『ただ、フルードは優しい。懲罰を与える場に居合わせたらオーブリーを庇うかもしれんから、できれば神官府から遠ざけて欲しいと頼まれてなぁ。なら、どこか別の空間に閉じ込めてしまうのが確実だと思ったんだ』
下手にあれこれと小細工を弄するより、スパッと違う場所に隔離してしまった方が良い。
『強引な真似をしてすまなかった。本当は眠らせてしまうのが手っ取り早かったんだが、そこまでしたらあの神器が黙ってないからな』
そう告げる葬邪神は、フルードの胸元を見ている。正確には、その魂に潜む焔の神器を。
『……ふぅぅぅ~ん。そうなのですか……』
ラミルファがジトッと上目遣いで兄を見た。物言わぬ瞳が、百万の語を尽くすより雄弁に語っている。『本当にそれだけなのか?』と。葬邪神が正面からその視線を見て頷く。
『うん、そうだとも!』
「そうでしたか」
当のフルードは、気を悪くした様子も見せずあっさり頷いた。実際、怒りや反骨心は抱いていない。元々、聖威師は天の神に逆らえない。極端な話、煮られようが焼かれようが拒否権はないのだ。葬邪神の場合、すまなかったと詫びてくれているのだからマシな方である。
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「では、リーリアの件はどういうことでしょうか?」
続けて問いかけながら、スイートチョコとホワイトチョコがマーブル状になったものと、ピスタチオ入りのものを幾つか取った。アマーリエへのお土産にしようと、一部を小袋に移す。
「彼女も神の恨みや怒りを買ったのでしょうか」
『うむ、それなんだがな……』
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