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第2章
72.見ている側なら微笑ましい
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『っと。ほれ、俺にもたれてな』
ひょいと支えてくれたフレイムが、自分の体に寄りかからせてくれた。
「ありがとう」
気が抜けた声で呟くアマーリエ。戦闘中のサポートへの礼も含んでいる。葬邪神の神器を相手に渡り合えたのは、フレイムとフロースが神威を送って陰からフォローしていてくれたからだ。自分だけの力ではない。
『別に良いってことよ』
礼の意図を正しく汲んでくれたらしいフレイムが、カラリと笑う。
『新しき聖威師よ、よくやった』
灰銀の毛並みを揺らし、太古の神が賛辞を送る。夜闇に光る双眸が邪霊たちに向けられた。
『お前たちは邪霊王の元へ王子を連行せよ。どのような処罰を下すにせよ、今後はこのような愚行をさせるでない。二度目が発生すれば、神器の剥奪もあり得ると心せよ』
これまで数千年、問題なく神器の管理をして来た実績を鑑みて、今回は経過観察とするが、次はない。そう続けて釘を刺した。
『はっ!』
地面に額を打ち付けて礼をした邪霊たちがゲイルを担ぎ、鎮めたばかりの神器を捧げ持つと、幾度も謝辞を述べながら転移でかき消えた。狼神がアマーリエたちを見て嘯く。
『さて、瑞々しい新星の武勇も見られたことであるし、私もそろそろ還るとしよう。……これ以上留まっては感情が昂ぶりそうだ』
最後は微かな声で紡がれた唸りだった。優雅に尾を一振りし、狼神は音もなくスゥと天へ昇っていった。
それを見送ったアマーリエがリーリアの方を見ると、フロースがおどおどした手付きで彼女を抱いていた。
『リーリア、大丈夫?』
「申し訳ありません、大神様。安心したら力が入らなくなってしまって……」
『私の名前はフロースだよ。水神の末御子で、神格は泡神。泡の神だ』
「フロース、様……素敵なお名前ですわね」
噛み締めるように復唱したリーリアは、静かに視線を上げた。
「わたくしのことは秘め名で呼んで下さいませんか? レアナと……」
『えっ?』
良いの? とばかりにフロースが瞬きする。
「あなた様にはその名を呼んでいただきたく思いますの」
『う、うん』
上ずった声で頷いたフロースが、何度か深呼吸している。そして、最高の宝物に触れるように、その名を転がした。
『レアナ』
「はい、フロース様」
見つめ合ったフロースとリーリアが微笑む。幸せの絶頂にある顔で。蕩けるように甘やかな空気が周囲に満ちている。
(ああ、本当に良かったわ。おめでとうございます)
まったりと見守りながら、アマーリエは心から祝福を送る。もしや自分とフレイムも、周囲からは同じように見えているのだろうか。
(リーリア様、これからよろしくお願いします)
仲間が増えたということが、純粋に嬉しかった。
(中央本府は頻繁に今日のような騒動が起きるらしいわ。けれど、皆で力を合わせれば、きっと解決できる。何より、一声呼べばフレイムが飛んで来てくれるもの)
フレイムはいつまで特別降臨できるのだろうか。期限が来て還ってしまった後も、定期的に降りて来て欲しい。寂しくなればこちらから勧請しても良い。毎日でも喚びたいくらいだ。
(そうよ、私にはフレイムがいるのだから心配ないわ。何が起こっても乗り越えられる。フルード様も聖威師の皆様も、ラミルファ様だって、色々と教えてくれるわ)
そう思い至り、一人感慨に耽るアマーリエは気付かない。
フロースとリーリアに触発されたフレイムが、熱の籠もった目でじぃっと自分を見ていることに。
元々オン状態の甘々スイッチを全開にさせた主神に、アマーリエがひたすら溺愛されまくるまで、あとほんの少し。
ひょいと支えてくれたフレイムが、自分の体に寄りかからせてくれた。
「ありがとう」
気が抜けた声で呟くアマーリエ。戦闘中のサポートへの礼も含んでいる。葬邪神の神器を相手に渡り合えたのは、フレイムとフロースが神威を送って陰からフォローしていてくれたからだ。自分だけの力ではない。
『別に良いってことよ』
礼の意図を正しく汲んでくれたらしいフレイムが、カラリと笑う。
『新しき聖威師よ、よくやった』
灰銀の毛並みを揺らし、太古の神が賛辞を送る。夜闇に光る双眸が邪霊たちに向けられた。
『お前たちは邪霊王の元へ王子を連行せよ。どのような処罰を下すにせよ、今後はこのような愚行をさせるでない。二度目が発生すれば、神器の剥奪もあり得ると心せよ』
これまで数千年、問題なく神器の管理をして来た実績を鑑みて、今回は経過観察とするが、次はない。そう続けて釘を刺した。
『はっ!』
地面に額を打ち付けて礼をした邪霊たちがゲイルを担ぎ、鎮めたばかりの神器を捧げ持つと、幾度も謝辞を述べながら転移でかき消えた。狼神がアマーリエたちを見て嘯く。
『さて、瑞々しい新星の武勇も見られたことであるし、私もそろそろ還るとしよう。……これ以上留まっては感情が昂ぶりそうだ』
最後は微かな声で紡がれた唸りだった。優雅に尾を一振りし、狼神は音もなくスゥと天へ昇っていった。
それを見送ったアマーリエがリーリアの方を見ると、フロースがおどおどした手付きで彼女を抱いていた。
『リーリア、大丈夫?』
「申し訳ありません、大神様。安心したら力が入らなくなってしまって……」
『私の名前はフロースだよ。水神の末御子で、神格は泡神。泡の神だ』
「フロース、様……素敵なお名前ですわね」
噛み締めるように復唱したリーリアは、静かに視線を上げた。
「わたくしのことは秘め名で呼んで下さいませんか? レアナと……」
『えっ?』
良いの? とばかりにフロースが瞬きする。
「あなた様にはその名を呼んでいただきたく思いますの」
『う、うん』
上ずった声で頷いたフロースが、何度か深呼吸している。そして、最高の宝物に触れるように、その名を転がした。
『レアナ』
「はい、フロース様」
見つめ合ったフロースとリーリアが微笑む。幸せの絶頂にある顔で。蕩けるように甘やかな空気が周囲に満ちている。
(ああ、本当に良かったわ。おめでとうございます)
まったりと見守りながら、アマーリエは心から祝福を送る。もしや自分とフレイムも、周囲からは同じように見えているのだろうか。
(リーリア様、これからよろしくお願いします)
仲間が増えたということが、純粋に嬉しかった。
(中央本府は頻繁に今日のような騒動が起きるらしいわ。けれど、皆で力を合わせれば、きっと解決できる。何より、一声呼べばフレイムが飛んで来てくれるもの)
フレイムはいつまで特別降臨できるのだろうか。期限が来て還ってしまった後も、定期的に降りて来て欲しい。寂しくなればこちらから勧請しても良い。毎日でも喚びたいくらいだ。
(そうよ、私にはフレイムがいるのだから心配ないわ。何が起こっても乗り越えられる。フルード様も聖威師の皆様も、ラミルファ様だって、色々と教えてくれるわ)
そう思い至り、一人感慨に耽るアマーリエは気付かない。
フロースとリーリアに触発されたフレイムが、熱の籠もった目でじぃっと自分を見ていることに。
元々オン状態の甘々スイッチを全開にさせた主神に、アマーリエがひたすら溺愛されまくるまで、あとほんの少し。
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