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第2章
85.リーリアとの会話
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「リーリア様から連絡が来たわ!」
目を輝かせるアマーリエを見て、フレイムが苦笑する。
「噂をすれば、だな。お前らの話は長いからな。……俺はちょっと出て来る」
「ふふ、長話は女性の性分なのよ。お茶でも飲んでゆっくりして来て」
「へいへい」
悪戯っぽく笑い返すと、フレイムは蕩けるような眼差しでアマーリエの頰に軽く口付けてから姿を消した。
《急に申し訳ありません。良い茶葉が手に入ったので、今度ご一緒にと思いましたの》
《まあ、嬉しいわ。私もお菓子を持って行こうと思っていたの。そうだ、先ほどテスオラ神官府の催しを見て来たわ。見事だったわよ。さすがはリーリア様がまとめられていた神官たちね》
《皆が努力した結果です。上手く披露できたようで何よりですわ。一人でも多くの者が、神使に見出されると良いのですけれど》
《フレイムによると、天の神や神使選定の使役も視ておられたそうよ。お気に召された神官がいるかもしれないわ。……アヴェント当主、いえ、主任神官も頑張っていたわよ。きちんと皆を統率していたもの》
《そうですか》
リーリアの声が柔らかくなった。
《リーリア様は何をしていたの?》
《今日は変装してフロース様と買い物に行きましたわ。茶葉もその時に買ったのです。とっても楽しかったんですの。一緒に帝都の街を歩いて、お食事もして……》
それからしばらく、フロースとのデートの話が続いた。主神と至福の時を満喫したらしい。リーリアにひとしきり話させてやった後で、柔らかく告げる。
《楽しめたようで良かったわ。今はリーリア様の好きなことをたくさんすれば良いのよ》
《……何だか夢を見ているようですわ》
一呼吸置いて、ポツンと声が返って来た。
《神に嫌われてしまったと思っていたわたくしが、高位神に見初められるなんて》
《え?》
覚えのあるフレーズに、アマーリエは思わず瞬きする。自分も似たような気ことを考えた。
《ゲイルを本当の神だと信じていましたから。お前など使えぬと罵られた時、神官でありながら神に疎まれたのだと思い、目の前が暗くなる心地でしたわ》
《それは……私と同じね》
《同じ……アマーリエ様もですか?》
《ええ。実は幼い頃にラミルファ様とお会いしたことがあって、汚い気だと拒絶されたの。近付くなとはっきり言われたわ》
今の友好的な彼とは大違いだ。現在の態度に慣れてしまった今、再びあの拒絶をされたら心が砕けるだろう。アマーリエはもはや、神の仲間入りを果たした身だ。大切な同胞から嫌われたらショックで立ち直れない。
《ああ……》
リーリアが納得した声を漏らした。その声を聞いただけで、遠い目をしている姿が脳裏に浮かぶ。
《アマーリエ様の気はとてもお綺麗ですもの。美醜の基準が逆転している悪神にとっては、とんでもない代物だと思いますわ。神に疎まれたと申されましても、ラミルファ様は悪神ですから、事情が別ですわよ》
《そうなのだけれど、当時はそんな理由があるとは知らなかったのよ。ラミルファ様は後でフォローの神託を授けて下さっていたのに、ある神官が勝手に破棄してしまって、私の元には届かなかったし》
こめかみを揉みながら、アマーリエは嘆息した。
《そういうわけで、私も神に拒絶されて高位の神に愛された神官なの。おそろいね。フルード様も、自分のことをそう思っていたらしいわよ》
《フルード様も?》
《私の口からは詳しく言えないけれど、親や周囲に恵まれなくて、壮絶な幼少期をお過ごしだったみたいなの。自分は神様に見捨てられた、嫌われた人間だとずっと信じていたのですって。それが、奇跡みたいに高位神の懐に入れていただけたと言っていたわ》
いつの日だったか、嬉しそうな笑顔でそう話してくれたことを思い出す。その時彼が思い描いていた高位神とは誰だったのだろう。狼神かフレイムか、あるいは――軽薄な笑みを浮かべる末の邪神の姿がよぎる。
(私たちは似ているんだわ)
神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました――そんな物語を書くとしたら、主人公になるのはアマーリエとリーリア、そしてフルードだろう。
そう話すと、リーリアはころころ笑った。鈴が風に揺れるような軽やかな声だ。
《お茶会はお菓子持参で伺うわ。リーリア様は何がお好きかしら。何か食べたいものがあったら知らせて。マシュマロは持って行くつもりよ》
《嬉しいですわ。ジャムをたっぷり付けたマシュマロがお気に入りですの。他に好きなお菓子は……》
それからしばらく、スイーツの話題で盛り上がる。帝都で有名なケーキをテイクアウトし、フレイムのケーキと食べ比べてみようということで話がまとまった。
「きっとフレイムのケーキの方が美味しいわ。生クリームのケーキをおねだりしようかしら。それともチョコレート? フルーツタルトも良いかもしれないわね」
リーリアとの念話を切り、どんなケーキを作ってもらおうかウキウキ考えていると。
『はいは~い、濃厚フロマージュチーズケーキに一票!』
ハイテンションな声と共に、小さな桃色の塊が視界を横切った。
「皇后様!」
目を輝かせるアマーリエを見て、フレイムが苦笑する。
「噂をすれば、だな。お前らの話は長いからな。……俺はちょっと出て来る」
「ふふ、長話は女性の性分なのよ。お茶でも飲んでゆっくりして来て」
「へいへい」
悪戯っぽく笑い返すと、フレイムは蕩けるような眼差しでアマーリエの頰に軽く口付けてから姿を消した。
《急に申し訳ありません。良い茶葉が手に入ったので、今度ご一緒にと思いましたの》
《まあ、嬉しいわ。私もお菓子を持って行こうと思っていたの。そうだ、先ほどテスオラ神官府の催しを見て来たわ。見事だったわよ。さすがはリーリア様がまとめられていた神官たちね》
《皆が努力した結果です。上手く披露できたようで何よりですわ。一人でも多くの者が、神使に見出されると良いのですけれど》
《フレイムによると、天の神や神使選定の使役も視ておられたそうよ。お気に召された神官がいるかもしれないわ。……アヴェント当主、いえ、主任神官も頑張っていたわよ。きちんと皆を統率していたもの》
《そうですか》
リーリアの声が柔らかくなった。
《リーリア様は何をしていたの?》
《今日は変装してフロース様と買い物に行きましたわ。茶葉もその時に買ったのです。とっても楽しかったんですの。一緒に帝都の街を歩いて、お食事もして……》
それからしばらく、フロースとのデートの話が続いた。主神と至福の時を満喫したらしい。リーリアにひとしきり話させてやった後で、柔らかく告げる。
《楽しめたようで良かったわ。今はリーリア様の好きなことをたくさんすれば良いのよ》
《……何だか夢を見ているようですわ》
一呼吸置いて、ポツンと声が返って来た。
《神に嫌われてしまったと思っていたわたくしが、高位神に見初められるなんて》
《え?》
覚えのあるフレーズに、アマーリエは思わず瞬きする。自分も似たような気ことを考えた。
《ゲイルを本当の神だと信じていましたから。お前など使えぬと罵られた時、神官でありながら神に疎まれたのだと思い、目の前が暗くなる心地でしたわ》
《それは……私と同じね》
《同じ……アマーリエ様もですか?》
《ええ。実は幼い頃にラミルファ様とお会いしたことがあって、汚い気だと拒絶されたの。近付くなとはっきり言われたわ》
今の友好的な彼とは大違いだ。現在の態度に慣れてしまった今、再びあの拒絶をされたら心が砕けるだろう。アマーリエはもはや、神の仲間入りを果たした身だ。大切な同胞から嫌われたらショックで立ち直れない。
《ああ……》
リーリアが納得した声を漏らした。その声を聞いただけで、遠い目をしている姿が脳裏に浮かぶ。
《アマーリエ様の気はとてもお綺麗ですもの。美醜の基準が逆転している悪神にとっては、とんでもない代物だと思いますわ。神に疎まれたと申されましても、ラミルファ様は悪神ですから、事情が別ですわよ》
《そうなのだけれど、当時はそんな理由があるとは知らなかったのよ。ラミルファ様は後でフォローの神託を授けて下さっていたのに、ある神官が勝手に破棄してしまって、私の元には届かなかったし》
こめかみを揉みながら、アマーリエは嘆息した。
《そういうわけで、私も神に拒絶されて高位の神に愛された神官なの。おそろいね。フルード様も、自分のことをそう思っていたらしいわよ》
《フルード様も?》
《私の口からは詳しく言えないけれど、親や周囲に恵まれなくて、壮絶な幼少期をお過ごしだったみたいなの。自分は神様に見捨てられた、嫌われた人間だとずっと信じていたのですって。それが、奇跡みたいに高位神の懐に入れていただけたと言っていたわ》
いつの日だったか、嬉しそうな笑顔でそう話してくれたことを思い出す。その時彼が思い描いていた高位神とは誰だったのだろう。狼神かフレイムか、あるいは――軽薄な笑みを浮かべる末の邪神の姿がよぎる。
(私たちは似ているんだわ)
神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました――そんな物語を書くとしたら、主人公になるのはアマーリエとリーリア、そしてフルードだろう。
そう話すと、リーリアはころころ笑った。鈴が風に揺れるような軽やかな声だ。
《お茶会はお菓子持参で伺うわ。リーリア様は何がお好きかしら。何か食べたいものがあったら知らせて。マシュマロは持って行くつもりよ》
《嬉しいですわ。ジャムをたっぷり付けたマシュマロがお気に入りですの。他に好きなお菓子は……》
それからしばらく、スイーツの話題で盛り上がる。帝都で有名なケーキをテイクアウトし、フレイムのケーキと食べ比べてみようということで話がまとまった。
「きっとフレイムのケーキの方が美味しいわ。生クリームのケーキをおねだりしようかしら。それともチョコレート? フルーツタルトも良いかもしれないわね」
リーリアとの念話を切り、どんなケーキを作ってもらおうかウキウキ考えていると。
『はいは~い、濃厚フロマージュチーズケーキに一票!』
ハイテンションな声と共に、小さな桃色の塊が視界を横切った。
「皇后様!」
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