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第3章
52.有り得ない
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「フ、フルード様!? どうなさったのですか!? ――ねえフレイム、疫神様は何を仰っているの?」
上空に向かって叫ぶアマーリエを遮り、力を振り絞って体を動かしたアリステルが、フルードの両肩を掴んだ。
「フルード、今は神威の方に集中しろ! アマーリエもだ!」
ハッとしたフルードが一度瞬きし、唇を噛み締めて頷く。
「アマーリエ様? 今のお話はどういう……?」
リーリアが美しい顔に困惑を乗せて聞いた。彼女も額に冷や汗を浮かべている。神威が重いのだ。
「わ、私にも分からないわ」
アマーリエも目を右往左往させながら首を捻るばかりだ。
《ちょっとちょっと、神威で拡声してるからこっちにまで聞こえちゃったんだけど!》
アマーリエの脳裏に声が弾けた。日香だ。
《アマーリエちゃんてフルード君と同じ血統なの? 義兄様は気付いてた!?》
《いや、今知った。私たちも神格を抑えている身。見抜けなかったのであろう。レシスの神罰の件には高位神が関わっているゆえ。神性を解放している天の神々はお分かりになったようだが》
《本気でヤバくない? 他の天威師たちにも知らせないと。いや、皆にも聞こえてるかな》
応じる秀峰と共に、両者とも声が硬い。一体全体何だというのか。
《あの、先程から何のことでしょうか?》
アマーリエが問いかけた時、甲高い笑い声が帯電した空気を震わせた。
『神格抑える。不幸、続く。絶望、終わらない。神格出す、神になる、解決』
『黙って下さい疫神様!』
フレイムが低い声で制止する。だが、暴れ神が聞くはずもない。じぃっとアマーリエを見つめ、ふむふむと頷いている。
『神格、出さない、なら……助かる方法、一つ』
渦を巻いた灼熱の紅蓮の神威が不死鳥と化し、雷撃を引き裂きながら疫神に迫った。緑色の体が宙で華麗に後方一回転して避け、苛烈な蹴りを入れて焔の鳥を爆散させる。
『――悪神に守ってもらう。アリステル、大丈夫。自分が悪神だから。フルード、大丈夫。ラミルファが守ってる』
レシスの兄弟を交互に眺めた後、暴れ神の眼が再びアマーリエに据えられた。逆さまの三日月型につり上がった口元から、びっしりと並んだ牙が覗く。
『アマーリエ、大丈夫ない。まだ守護ない。……可哀想。不幸になる、可哀想。我、守ってやる。我、親切』
『おいディス、何を勝手に……』
雷撃弾を荊でまとめて薙ぎ払い、宙へと飛ばした葬邪神が眉を上げて叱り付けようとした。だが――
『――ないっ!』
いっそ爽快さすら覚えるほどにきっぱりとした断言が響いた。ラミルファだ。上を振り仰げば、断固とした拒絶を燃やした灰緑の目が、疫神に注がれている。かつてアマーリエを撥ね付けた彼は、しかし、今は何くれとなく自分を助けてくれる心強い味方だ。
『ない、二の兄上は有り得ない。絶対にない。ないないないないないないないないないないないないないないないっっ!!!』
『『…………』』
これ以上ないほどの全力拒否に、葬邪神と疫神が呆然とした顔で引いている。何が『ない』のか知らないが、そこまで連呼しなくても良いのではないだろうか。アマーリエは虚ろな眼差しでそう思った。
(……あら?)
そして、軽く目を瞠る。今度は無理無理無理無理無理、と呟き出したラミルファの傍で、血の気が失せた表情のフレイムがコクコクと頷いているのだ。まるでその言に同意するように。
(フレイム?)
あなたまでどうして、という問いは口に出せなかった。
『ある。無理ない。我、アマーリエ守る、遊ぶ』
キャラッと笑い、気を取り直したらしい疫神が動く。腕を伸ばし、一直線にアマーリエ目がけて急降下した。
上空に向かって叫ぶアマーリエを遮り、力を振り絞って体を動かしたアリステルが、フルードの両肩を掴んだ。
「フルード、今は神威の方に集中しろ! アマーリエもだ!」
ハッとしたフルードが一度瞬きし、唇を噛み締めて頷く。
「アマーリエ様? 今のお話はどういう……?」
リーリアが美しい顔に困惑を乗せて聞いた。彼女も額に冷や汗を浮かべている。神威が重いのだ。
「わ、私にも分からないわ」
アマーリエも目を右往左往させながら首を捻るばかりだ。
《ちょっとちょっと、神威で拡声してるからこっちにまで聞こえちゃったんだけど!》
アマーリエの脳裏に声が弾けた。日香だ。
《アマーリエちゃんてフルード君と同じ血統なの? 義兄様は気付いてた!?》
《いや、今知った。私たちも神格を抑えている身。見抜けなかったのであろう。レシスの神罰の件には高位神が関わっているゆえ。神性を解放している天の神々はお分かりになったようだが》
《本気でヤバくない? 他の天威師たちにも知らせないと。いや、皆にも聞こえてるかな》
応じる秀峰と共に、両者とも声が硬い。一体全体何だというのか。
《あの、先程から何のことでしょうか?》
アマーリエが問いかけた時、甲高い笑い声が帯電した空気を震わせた。
『神格抑える。不幸、続く。絶望、終わらない。神格出す、神になる、解決』
『黙って下さい疫神様!』
フレイムが低い声で制止する。だが、暴れ神が聞くはずもない。じぃっとアマーリエを見つめ、ふむふむと頷いている。
『神格、出さない、なら……助かる方法、一つ』
渦を巻いた灼熱の紅蓮の神威が不死鳥と化し、雷撃を引き裂きながら疫神に迫った。緑色の体が宙で華麗に後方一回転して避け、苛烈な蹴りを入れて焔の鳥を爆散させる。
『――悪神に守ってもらう。アリステル、大丈夫。自分が悪神だから。フルード、大丈夫。ラミルファが守ってる』
レシスの兄弟を交互に眺めた後、暴れ神の眼が再びアマーリエに据えられた。逆さまの三日月型につり上がった口元から、びっしりと並んだ牙が覗く。
『アマーリエ、大丈夫ない。まだ守護ない。……可哀想。不幸になる、可哀想。我、守ってやる。我、親切』
『おいディス、何を勝手に……』
雷撃弾を荊でまとめて薙ぎ払い、宙へと飛ばした葬邪神が眉を上げて叱り付けようとした。だが――
『――ないっ!』
いっそ爽快さすら覚えるほどにきっぱりとした断言が響いた。ラミルファだ。上を振り仰げば、断固とした拒絶を燃やした灰緑の目が、疫神に注がれている。かつてアマーリエを撥ね付けた彼は、しかし、今は何くれとなく自分を助けてくれる心強い味方だ。
『ない、二の兄上は有り得ない。絶対にない。ないないないないないないないないないないないないないないないっっ!!!』
『『…………』』
これ以上ないほどの全力拒否に、葬邪神と疫神が呆然とした顔で引いている。何が『ない』のか知らないが、そこまで連呼しなくても良いのではないだろうか。アマーリエは虚ろな眼差しでそう思った。
(……あら?)
そして、軽く目を瞠る。今度は無理無理無理無理無理、と呟き出したラミルファの傍で、血の気が失せた表情のフレイムがコクコクと頷いているのだ。まるでその言に同意するように。
(フレイム?)
あなたまでどうして、という問いは口に出せなかった。
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