神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました

土広真丘

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第3章

59.暴れ神は反省する

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 むむ、と、幼神が腕組みした。んーと首を捻りながら言う。

『もしかして、だから神格抑えてる? 神が人間の世界関わる、駄目。だから神性抑えて、人に近くなってる? まだ地上いたいから?』
『おお、そうだそうだ! 大正解! というか、神の力で全部見通しておれば最初から正解が分かってたはずなんだがな』

 しょうがない奴だと言わんばかりの苦言に、幼児姿の神は自信満々に答えた。

『わざわざ力使う、見通す、不要。何故なら、我は真理。いや、超真理。我、間違えない』
『いやめっちゃ間違えまくってただろうが! お前の真理、悪い意味でスーパークソ真理だったぞ!?』
『えへ、今回、失敗。寝起きの遊び、したい。ワクワク、ウズウズ。で、頭回ってなかった。ケアレスミス、的な』

 アマーリエは何も言わず頭を抱えた。寝起きで凡ミスかまされ、マゾヒスト扱いされて襲われたのか、自分は。何でこんな目に遭わなければならないのか。

『だけど、天の決まり、規定、規則、そういうの全部、。どのくらい遵守するか、配慮するか、各神の一存。守らなくても、破っても、罰則ない』
『まぁそうなんだがなぁ』
『その通りではありますが』

 指をピピッと振って言う疫神と、困った顔で頷く葬邪神と狼神。アマーリエは喫驚した。

《えっ……フレイム、そうなの?》
《ああ。強いて言うなら、最高神にコラ~ッて説教されるくらいだ。処罰とか処分はない。細かくある規則は、各神々が任意に従ってるに過ぎない。聖威師や天威師だってそうだ。天の定めを破ったら強制昇天になるだけで、具体的な罰を与えられたりすることはねえよ》

 強制昇天自体が、天威師と聖威師にとっては処罰も同然なのだが……あくまで天に帰らされるだけなので、罰にはカウントされないらしい。

《じゃあ……その気になればいくらでも好き勝手できるということ?》
《そうなるな。そういう絶対的な存在だから神なんだよ。いざとなった時の抑止なんかねえ。つっても、大体の奴は真面目に遵守してるけどな。最高神にプンプン怒られたくねえし。高位の神は特にそうだ》

 神々の上に立つ存在が規則を破れば、『色持ち様が守らぬなら自分たちも破って良いだろう』と、あらゆる神々が好き放題にやり出してしまう。

《にも関わらず平気で破る高位神は、性格が相当トンでる奴……この疫神様みたいな奴くらいか》

 こっそり念話している間に、疫神はふっと脱力した。

『処罰ない、でも地上にはいられなくなる。それ困る。だから雛たち、神性抑えてる。……そうか。被虐趣味、違うか。地上、好きか。なら、世界消すのやめる』

 葬邪神が表情を明るくした。

『納得してくれて良かったぞ。我が被虐趣味って決めたら被虐趣味ぃ! それが永久不滅の絶対真理ぃ! とか叫んでまた暴れ出すかと思っていた』
『そうしてた。相手、神でなければ。けど、この雛たち、同胞。痛いの好きじゃない、なのに痛いことする、可哀想。やめる』
『そうかそうか、お前も同胞への情はあるからな!』

 うんと頷き、幼い姿の神は双眸をキュルンと動かし、聖威師たちを映した。

『被虐趣味、違う。ならきっと、我の言葉怖かった。ごめんね。我、絶賛反省中。温情、かける。拒否権、あるよ。あの言葉、嘘。本気ない。痛いことされるの好き、ならああ言えば喜ぶ、思って言っただけ。忘れてくれ』

 その瞬間、フレイムとラミルファが目に見えて安堵の表情を浮かべた。
 神格が下の者には一切の拒否権を与えず温情もかけない。あの言葉は、マゾヒストならそう言われれば喜ぶだろうと思ってのもので、本気ではなかったようだ。……多分、被虐趣味でも泣いて怖がるだろうが。

『…………』

 ラミルファが次兄を眺めて目を瞠り、口元に指を当てて何かを考え込んでいる。
 狼神が深い色を宿した眼差しで疫神を見据えた。

『疫神様。神格そのものを抑えているこの子たちは、我ら神の基準では驚く程にか弱いのです。ほんの少し力加減を誤れば、容易く壊れてしまう。あなた様が最後に放った神威が掠めていれば、その瞬間に廃神となっておりましたぞ』
『雛たち、全員高位神の加護受けてる。ここにいる雛、いない雛、全員。それも、ただの高位神違う。我と同格。だから大丈夫、思った』

 しゅんと眉を垂らした暴れ神が答える。

『本当に危険なる。加護してる神、守りに来る。雛たち、神に戻す。そしたら、廃神ならない。それでも危険なりそうなら、我の神威、止めるつもりだった』

 一応、彼なりの目算と計画はあっての行動だったらしい。大きな瞳がアマーリエを見る。

『それに、この雛泣いた。被虐趣味、関係ない。あれ、本気で泣いてた。だから、急いで力抑えた』
(あっ……!)

 そう言えば、と、アマーリエは瞬きした。常ならぬ状態になったフレイムの姿を見て涙を流し、嫌だやめてと叫んだ時。疫神は顔色を変えて神威を消した。きっと、自分に言われたと思ったのだ。

 狼神と葬邪神が、おや、という顔になった。

『何だ、お前はお前で考えてはいたのか。頭をすっからかんにして、神相手のつもりで無計画に力をぶっ放しかねないと、皆が危惧していたんだが』
『我、理性ある! 同胞に致命傷与える、絶対ない!』
『それは失礼いたしました。確かに、私が動くと同時に神威を消し、遊び体勢を解除されておりましたな。そう、あなたは本当は思慮深い面もお持ちだ。……だとしても、そのお考えが分からなかった以上、この子たちはとても怖い思いをしたはず。今後はどうか、今回のような行動はお控え下さい』
『……我、超絶猛省中……』

 両手の人差し指をちょんちょんと合わせ、肩を落とす疫神。狼神がやれやれと息を吐き、それから、と続けた。

『それから、禍神様があなた様に会いたがっておられます。我が子が目覚めたのなら、早くこの腕に抱きしめたいと。顔を見せに行っておあげなさい。最高神ともなれば滅多には地上に降りられぬ。あなた様が還ってあげるしかないのですぞ』
『父上が?』

 沈んでいた幼神の顔が、パァッと明るさを帯びた。

『うん、我、還る。父上におはよう言う、撫で撫でしてもらう』
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