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第3章
65.詫びの証に
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『待て待て待てっ!』
得意げな顔でふふん、と胸を張っていたフレイムが、慌てて割り込む。アマーリエを褒められて喜んでいたら、雲行きが怪しくなって来たと思ったのだろう。
『だーから駄目だって言っただろ! ったく、油断も隙もありゃしねえんだから』
フロースが悲しそうにフレイムとラミルファを見た。
『パパさんは狼神様とあなたたちが仲良く可愛がっているのに。アリステルだって、主神の鬼神様と父神の葬邪神様と包翼神の怨神様で慈しんでいるだろう』
『前も言ったがセインは特殊な事例なんだよ!』
『ふふ、ヴェーゼもそうだよ。鬼神様と怨神様と一の兄上は元から相当に親密な仲だ。三柱とも悪神で最古神で選ばれし神で、そして生来の荒神だ。共通点が多いからか、よく一緒にいるしね。その関係性もあってのことだろう』
その言葉を聞いた途端、フロースは破顔した。
『なるほど。じゃあこれからは、なるべく焔神様と一緒にいて親交を深めよう。私ともっと仲良くなろう。あっ、だけどそうしたらレアナといられる時間が少なくなってしまうから……焔神様、今後はたくさんレアナの部屋に来てくれ。そうしたら私とも会える』
『それじゃ俺がユフィーと一緒にいる時間が減っちまうじゃねえか!』
額を抑えて呻くフレイムだが、フロースと一緒にいること自体を拒絶はしない。神は仲良しなのだ。
一方のアマーリエとリーリアは、もはや達観した目で三神のやり取りを眺めている。
『つかお前、本当に能動的になったよな。良いことなんだが』
『レアナのおかげだよ。愛し子を得てから、毎日がすごく幸せなんだ』
明るい笑みを浮かべるフロースと、それを見て嬉しそうな顔になるフレイムとラミルファ。
「愛し子や宝玉かぁ。きっと特別なんでしょうね。私たちには分からないですけど」
「至高神は愛し子も宝玉も持たないからな。強いて言えば、我ら天威師が祖神の愛し子ということになるのか」
少し離れた場所に滞空した天威師たちの中で、日香と高嶺が囁き合っている。
『……良かったなぁ。俺のミスで手数をかけてしまったが、これでどうにか現状維持だ』
葬邪神がにこにこ声をかけた。すると、ラミルファがスッと進み出た。
『ええ、そうです。兄上のせいで聖威師たちは大変な思いをしました』
腰に手を当ててしたり顔でのたまうが、この末の邪神も、星降の儀で聖威師たちを大いに引っ掻き回していた。だが、当事者はそんなことはどこ吹く風である。
『特にセインとアマーリエにおいては、ガルーンとオーブリーの件でも多大な心労を抱えたのですよ。癒えかけていた心の傷をこじ開け、塩を塗り込むような真似をするなど言語道断。狼神様は二の兄上を止めることで謝罪を示して下さいました。兄上も何か詫びをするべきです』
『俺もどうにかアイツを止めようとしていたんだがなぁ』
『あなたは二の兄上の双子なのですから、止めに来るのは当然です』
『はは、それもそうか』
ん~と苦笑いする葬邪神は、ポリポリと首筋をかいた。対峙する邪神兄弟だが、両者の間に不穏な空気は見られない。ラミルファに本気で糾弾する空気がなく、葬邪神も弟を宥めるように大らかな空気を醸し出しているからだ。
『俺は何をすれば良いだろうか?』
「恐れながら、葬邪神様に何かしていただくことなどございません」
様子を窺っていたフルードが即答した。
「葬邪神様をお慕いこそすれ、わだかまりなど一切抱いておりません。今までずっと聖威師を尊重し続けて来て下さったことを、感謝申し上げるばかりです。何卒お気になさらず」
『君がそう言うなら、それで良いことにしよう。君に関しては』
ラミルファもまた即決で返す。
『セインはこう言っているので良いですが、アマーリエには詫びをしていただきます』
(あ、私も謝罪なんて不要ですと言わなければいけないわね)
自分も意思表明をしようと、アマーリエは急いで口を開いた。
「あの、私も……」
フルード様と同じ思いです、と言おうとした言葉が止まる。きゅっと喉が締まったような感覚と共に舌が動かなくなった。呼吸は通常通りできるが、声が出せない。
(え? 声が……どうして……!?)
突然のことに驚き、フレイムに念話で助けを求めようとするが、その前にハッとする。喉に絡み付く神威の気配。これはラミルファのものだ。
(ラミルファ様?)
何故、と訴えるように視線を送るが、末の邪神は兄だけを見ている。
『兄上にアマーリエを守護していただきたいのです』
黙って静観していたフレイムとフロースが、双眸を見開く。フルードとアリステルが同時に息を呑み、狼神が目を眇める。葬邪神が纏う空気がガラリと変わった。
得意げな顔でふふん、と胸を張っていたフレイムが、慌てて割り込む。アマーリエを褒められて喜んでいたら、雲行きが怪しくなって来たと思ったのだろう。
『だーから駄目だって言っただろ! ったく、油断も隙もありゃしねえんだから』
フロースが悲しそうにフレイムとラミルファを見た。
『パパさんは狼神様とあなたたちが仲良く可愛がっているのに。アリステルだって、主神の鬼神様と父神の葬邪神様と包翼神の怨神様で慈しんでいるだろう』
『前も言ったがセインは特殊な事例なんだよ!』
『ふふ、ヴェーゼもそうだよ。鬼神様と怨神様と一の兄上は元から相当に親密な仲だ。三柱とも悪神で最古神で選ばれし神で、そして生来の荒神だ。共通点が多いからか、よく一緒にいるしね。その関係性もあってのことだろう』
その言葉を聞いた途端、フロースは破顔した。
『なるほど。じゃあこれからは、なるべく焔神様と一緒にいて親交を深めよう。私ともっと仲良くなろう。あっ、だけどそうしたらレアナといられる時間が少なくなってしまうから……焔神様、今後はたくさんレアナの部屋に来てくれ。そうしたら私とも会える』
『それじゃ俺がユフィーと一緒にいる時間が減っちまうじゃねえか!』
額を抑えて呻くフレイムだが、フロースと一緒にいること自体を拒絶はしない。神は仲良しなのだ。
一方のアマーリエとリーリアは、もはや達観した目で三神のやり取りを眺めている。
『つかお前、本当に能動的になったよな。良いことなんだが』
『レアナのおかげだよ。愛し子を得てから、毎日がすごく幸せなんだ』
明るい笑みを浮かべるフロースと、それを見て嬉しそうな顔になるフレイムとラミルファ。
「愛し子や宝玉かぁ。きっと特別なんでしょうね。私たちには分からないですけど」
「至高神は愛し子も宝玉も持たないからな。強いて言えば、我ら天威師が祖神の愛し子ということになるのか」
少し離れた場所に滞空した天威師たちの中で、日香と高嶺が囁き合っている。
『……良かったなぁ。俺のミスで手数をかけてしまったが、これでどうにか現状維持だ』
葬邪神がにこにこ声をかけた。すると、ラミルファがスッと進み出た。
『ええ、そうです。兄上のせいで聖威師たちは大変な思いをしました』
腰に手を当ててしたり顔でのたまうが、この末の邪神も、星降の儀で聖威師たちを大いに引っ掻き回していた。だが、当事者はそんなことはどこ吹く風である。
『特にセインとアマーリエにおいては、ガルーンとオーブリーの件でも多大な心労を抱えたのですよ。癒えかけていた心の傷をこじ開け、塩を塗り込むような真似をするなど言語道断。狼神様は二の兄上を止めることで謝罪を示して下さいました。兄上も何か詫びをするべきです』
『俺もどうにかアイツを止めようとしていたんだがなぁ』
『あなたは二の兄上の双子なのですから、止めに来るのは当然です』
『はは、それもそうか』
ん~と苦笑いする葬邪神は、ポリポリと首筋をかいた。対峙する邪神兄弟だが、両者の間に不穏な空気は見られない。ラミルファに本気で糾弾する空気がなく、葬邪神も弟を宥めるように大らかな空気を醸し出しているからだ。
『俺は何をすれば良いだろうか?』
「恐れながら、葬邪神様に何かしていただくことなどございません」
様子を窺っていたフルードが即答した。
「葬邪神様をお慕いこそすれ、わだかまりなど一切抱いておりません。今までずっと聖威師を尊重し続けて来て下さったことを、感謝申し上げるばかりです。何卒お気になさらず」
『君がそう言うなら、それで良いことにしよう。君に関しては』
ラミルファもまた即決で返す。
『セインはこう言っているので良いですが、アマーリエには詫びをしていただきます』
(あ、私も謝罪なんて不要ですと言わなければいけないわね)
自分も意思表明をしようと、アマーリエは急いで口を開いた。
「あの、私も……」
フルード様と同じ思いです、と言おうとした言葉が止まる。きゅっと喉が締まったような感覚と共に舌が動かなくなった。呼吸は通常通りできるが、声が出せない。
(え? 声が……どうして……!?)
突然のことに驚き、フレイムに念話で助けを求めようとするが、その前にハッとする。喉に絡み付く神威の気配。これはラミルファのものだ。
(ラミルファ様?)
何故、と訴えるように視線を送るが、末の邪神は兄だけを見ている。
『兄上にアマーリエを守護していただきたいのです』
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