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第5章
13.戦神と闘神
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「ほう、あの二柱か」
反応したのは時空神だった。アマーリエたちに説明してくれる。
「戦神レイオンと闘神リオネス。共に選ばれし神だ。類似の神格を持ち、気質も似通っているため、とても仲が良い。兄弟の契りを結んでもいる」
眠る時もそれぞれの神域から互いに念話し、タイミングを合わせて共に寝入ったという。起床まで同時だったのは、やはり相性がぴったりなのか。そんなことを考えていたアマーリエは、時空神の次の言葉で心臓が止まりそうになった。
「そしてレイとリオは、生来の荒神だ」
室内の空気が凍り付いた。聖威師全員がその場にフリーズする。
「だが、どちらもとても温厚だ。ディスのように暴れまくることもない」
「戦闘の神様なのですよね。とてもお強そうですが、強硬派になって襲いかかって来たりする可能性は……?」
おずおずと聞くアマーリエ。時空神が安心させるように微笑んだ。
「レイとリオならば、ほぼ確実に尊重派に回るだろう。悪くとも穏健派だ。彼らは本当に優しい。雛たちに何かを無理強いすることなどない。それに、神の強さは司るものではなく神格で決まる」
つい今しがた、フレイムも同じことを言っていた。神は年功序列や司るものではなく、有する神位の高さで戦闘力が決まるのだと。
「神格が同格ならば強さも対等。選ばれし神であり生来の荒神である神々は、同じ条件下で戦えば皆互角だ」
「ただ、神ごとの気質っつーか性格的なモンもありますから。疫神様みたいに好戦的な神だと、同じ荒神の俺でも勘弁してくれってなりますし」
そう述べるフレイムの目は本気だ。時空神が苦笑し、温かな目で若神たちを見回す。
「焔神様も末の邪神様も、大層慎ましいからな」
単に戦闘力を数値化した場合、疫神とフレイム、ラミルファは全員が同じ値になる。だが実際に戦えば、気性の荒さや苛烈さの差で、疫神が他の二柱を圧倒するのだという。
「二の兄上と戦り合えるのは、悪神の性を前面に出した一の兄上か、キレた狼神様くらいですよ。あの闘気の前では、三の兄上ですら手も足も出ないでしょう。僕ごときでは、獰猛性や攻撃性が違いすぎて相手にもならない」
ラミルファもフレイムに賛同した。灰緑の目が当時を思い出すように細まる。
「プレウォーミングアップとかいうのに付いていくだけで精一杯。普通のウォーミングアップになった途端に圧倒されました」
あの時に動けたのは葬邪神だけだった。彼も押さえ込まれてはいたが、それは聖威師と地上を守らなければならないという絶大なハンデがあったためだ。だが、ラミルファとフレイムは違う。ハンデ云々以前に、純粋に圧伏されていた――フレイムが激昂して真価を解放しかけるまでは。
「二の兄上はあれでも手加減に手加減を重ねていたはず。その気ならば指一本動かさず、棒立ちで鼻歌を歌っているだけで僕たちを瞬殺できたはずです。ですが、遊びたいのであえて体を動かして相手をして下さっていた。本当に戯れていただけだったのですよ」
「だが、例え話だがディスがフルードを傷付けようとしたなら、お前は子猫の皮を脱ぎ捨てて獣になる。そうすればディスと正面から戦える」
「そうでしょうね。ですが、実際にそんな事態になることは有り得ません。二の兄上は身内を本気で害そうとはなさいませんから」
「それもそうだ。同じ理由で、アイとセラもディスに敵わない。血気盛んの度合いが違いすぎる」
選ばれし神かつ生来の荒神は他にもいるが、疫神の荒々しさに対抗できる者はほぼ皆無だという。自身の愛し子やそれに等しい存在が危機になった場合に関しては、また事情が変わって来るだろうが。
「では、戦神様と闘神様のご性格は……?」
「安心しなさい、アマーリエ。先ほども言ったが、レイとリオは焔神様と末の邪神様と同じくらい控えめで穏和だ。戦闘を司る神とは思えぬほどに。ゆえ、力で雛たちをねじ伏せはしない」
「時空神様の仰せの通りだ。葬邪神様によれば、起床された戦神様と闘神様は聖威師のことを聞き、雛たちの意志を尊重すると明言して下さったそうだ」
「本当ですか! それなら良かったです」
アリステルが喜ばしい補足を入れてくれた。聖威師たちの間に安堵が広がる。
反応したのは時空神だった。アマーリエたちに説明してくれる。
「戦神レイオンと闘神リオネス。共に選ばれし神だ。類似の神格を持ち、気質も似通っているため、とても仲が良い。兄弟の契りを結んでもいる」
眠る時もそれぞれの神域から互いに念話し、タイミングを合わせて共に寝入ったという。起床まで同時だったのは、やはり相性がぴったりなのか。そんなことを考えていたアマーリエは、時空神の次の言葉で心臓が止まりそうになった。
「そしてレイとリオは、生来の荒神だ」
室内の空気が凍り付いた。聖威師全員がその場にフリーズする。
「だが、どちらもとても温厚だ。ディスのように暴れまくることもない」
「戦闘の神様なのですよね。とてもお強そうですが、強硬派になって襲いかかって来たりする可能性は……?」
おずおずと聞くアマーリエ。時空神が安心させるように微笑んだ。
「レイとリオならば、ほぼ確実に尊重派に回るだろう。悪くとも穏健派だ。彼らは本当に優しい。雛たちに何かを無理強いすることなどない。それに、神の強さは司るものではなく神格で決まる」
つい今しがた、フレイムも同じことを言っていた。神は年功序列や司るものではなく、有する神位の高さで戦闘力が決まるのだと。
「神格が同格ならば強さも対等。選ばれし神であり生来の荒神である神々は、同じ条件下で戦えば皆互角だ」
「ただ、神ごとの気質っつーか性格的なモンもありますから。疫神様みたいに好戦的な神だと、同じ荒神の俺でも勘弁してくれってなりますし」
そう述べるフレイムの目は本気だ。時空神が苦笑し、温かな目で若神たちを見回す。
「焔神様も末の邪神様も、大層慎ましいからな」
単に戦闘力を数値化した場合、疫神とフレイム、ラミルファは全員が同じ値になる。だが実際に戦えば、気性の荒さや苛烈さの差で、疫神が他の二柱を圧倒するのだという。
「二の兄上と戦り合えるのは、悪神の性を前面に出した一の兄上か、キレた狼神様くらいですよ。あの闘気の前では、三の兄上ですら手も足も出ないでしょう。僕ごときでは、獰猛性や攻撃性が違いすぎて相手にもならない」
ラミルファもフレイムに賛同した。灰緑の目が当時を思い出すように細まる。
「プレウォーミングアップとかいうのに付いていくだけで精一杯。普通のウォーミングアップになった途端に圧倒されました」
あの時に動けたのは葬邪神だけだった。彼も押さえ込まれてはいたが、それは聖威師と地上を守らなければならないという絶大なハンデがあったためだ。だが、ラミルファとフレイムは違う。ハンデ云々以前に、純粋に圧伏されていた――フレイムが激昂して真価を解放しかけるまでは。
「二の兄上はあれでも手加減に手加減を重ねていたはず。その気ならば指一本動かさず、棒立ちで鼻歌を歌っているだけで僕たちを瞬殺できたはずです。ですが、遊びたいのであえて体を動かして相手をして下さっていた。本当に戯れていただけだったのですよ」
「だが、例え話だがディスがフルードを傷付けようとしたなら、お前は子猫の皮を脱ぎ捨てて獣になる。そうすればディスと正面から戦える」
「そうでしょうね。ですが、実際にそんな事態になることは有り得ません。二の兄上は身内を本気で害そうとはなさいませんから」
「それもそうだ。同じ理由で、アイとセラもディスに敵わない。血気盛んの度合いが違いすぎる」
選ばれし神かつ生来の荒神は他にもいるが、疫神の荒々しさに対抗できる者はほぼ皆無だという。自身の愛し子やそれに等しい存在が危機になった場合に関しては、また事情が変わって来るだろうが。
「では、戦神様と闘神様のご性格は……?」
「安心しなさい、アマーリエ。先ほども言ったが、レイとリオは焔神様と末の邪神様と同じくらい控えめで穏和だ。戦闘を司る神とは思えぬほどに。ゆえ、力で雛たちをねじ伏せはしない」
「時空神様の仰せの通りだ。葬邪神様によれば、起床された戦神様と闘神様は聖威師のことを聞き、雛たちの意志を尊重すると明言して下さったそうだ」
「本当ですか! それなら良かったです」
アリステルが喜ばしい補足を入れてくれた。聖威師たちの間に安堵が広がる。
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