バトンタッチした話

加速・D・歩

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・本編

110 秘密の特訓

「カレンくんはきっと良い子で、それならそんな彼に敵意を向ける僕は……本当にどうしようも無いんです……」
「情緒不安定になってきてるな、マルゥメそろそろヒートが始まるだろ」
「はい……っ、そうかも知れないです」
「ヒート時期はアイツの所に行くのか?」
「そうなってる筈です、」


 早めに【ワグーッツンくんの部屋】にやって来た。
 彼はまだ【授業中】で居ないから、1人……彼の【ベッド】に寝っ転がると久しぶりに濃い匂いがして夢中になって嗅ぐ。
 そんな事をしてるうちに【玄関】で物音がして彼が帰ってきたと思って【ドア前】に行って【ドア】を開けようとした時──……

『なあ、早く……』
『分かってる』
『前のヒート? ってやつが辛かったからさ』

 ワグーッツンくんと、声からしてカレンくんの声とその内容を聴いて固まる。
 ここで【ドア】を開ける勇気がなかった。
 浮気じゃない、カレンくんも番候補だから、間違ってない。なにも……何故か【リビング】でヤリはじめた2人はカレンくんの声があまりにも気持ちよさそうで、ワグーッツンくんとシテるのが羨ましくて……ヒートに入ってきてる僕は、その声を聴いて惨めな気分になる。

 彼らが【お風呂】に入ってる間に、【彼の部屋】に出て【部屋】に戻った。
【友達の所】に行くと言ってたヴォン先輩と鉢合わせして、彼に「忘れ物か?」と聞かれて「そんな感じです」とだけ答えて【寝室】に向かおうとした時、背中から抱き絞められた。
 僕はそのまま、勝手に涙が出て、止まんなくて……彼に抱きしめられたまま、泣き続けた。


「落ち着いたか? 何があった?」
「それが、ただ情けなかっただけなんです、僕は彼の番候補なだけで、嫉妬なんかする資格もないのに」

 一応、彼にさっき見た内容を話す。
 彼は僕の頭を撫で続けながら、「それなら」と話を続ける。

「ヒート中、俺が解消してやる。」
「え、で、でもヴォン先輩、アルファなんじゃ……」
「ああ、でも俺は特殊型でな、だからアイツに俺がお前に、って事なんだろ。さっきの話を聴く限りな?」
「そ、う……なんですね」
「お前は俺とヤッてる時は、アイツだと思って良い。明かりも点けないから。な」
「……っ、はい、お願いします」

 ただ媚びる練習も兼ねてるから相手をワグーッツンくんだと思って声を出せと言われる。
 真っ暗な【部屋】の中──僕はドキドキしながら【ベッド】の上に居る。布団を被り、ワグーッツンくん以外の人と身体を重ねる。
 浮気じゃない彼が、ヴォン先輩に頼るよう言われてるから、本当に僕の相手をしたくないのかな……、カレンくんとシてる時、会話だけ聴いてたけど気持ちよさそうだった。

「マルゥメ、」
「ワグーッツン、さまぁ……っ、」

 僕の名前を呼び彼は口づけをする。わ、ワグーッツンくんは、僕の背中まで抱え込むようにして何度も口と口を合わせて、それだけで溶けるような快楽がきてビックリするけど、彼の口をもっと、と僕から舌を伸ばす……甘くて、もっとぉ……

「わぐーっつんさまあ、もっとぉ……」
「キスだけでトロ顔だなぁ」
 
 真っ暗な【部屋】で彼は僕の表情をいう、ほんとかもしれないけど、そんなに見えてはない筈……でもそう改めて言われると顔が熱くなっています彼にしがみつく様してると、顎下、首、胸を舐められて、火照った身体にその刺激は気持ち良すぎて、恥ずかしいけど声が止まらない。

「あ、んっあ! んぅ~~……っ、はあ、んあ、」
「どこ舐めてもマルゥメは甘いな。」
「な、んで、わきばらぁ」
「前に好きって言ってたろ」
「はっ、ん、あっ!」

 手で脇腹を愛撫するワグーッツンくん。
 前に、好きって言ったっけ、……頭がぼーっとして分からなくなる。

「ほら、ココの臭い嗅げ。お前が作った[薬]だ。」
「ん゙っ、ああ!!?!」
「飛んで意識飛ばしてろ。終わった後はスッキリさせてやる」

 鼻に彼がつけた[香水付きのハンカチ]が当てられて、思いっきり吸い込むとそれだけなのに大量のおしっこを漏らすように射精して──……








「おい、早く出てこいよ。圭介」




『そこのキミ。そうそう、キミだよキミ。』

 あれはいつだったか、前の記憶か──……目の前には『全身黒い男』がいた。
 俺を指差しながら近づいてくるそいつを無視して歩き出そうとしたら周りのざわめきが無い事に気付いて見渡すと街人が止まってるようで──改めて『男』を見ると相変わらず笑顔のまま近づいてきた。

『やっと聴く気になったかい? まあ、キミには拒否権はないんだ』
「俺に何か用なのか」
『とりあえず現状の確認なんだけど、この男の事。何処まで覚えてる?』
「誰だそいつ、俺の知り合いじゃないな」

『男』が手に持ってた紙には、目の前の『男』と同じく黒髪黒目、顔も同じく平凡な男が載っていた。
 黒髪黒目は稀人の特徴だが、俺にはそんな知り合いは居ない。

『ふうん。名前を聴いてもピンと来ないかな。この子は灰田はいだ圭介けいすけって言うの。』
「ハイーダ・ケースケ? 聴いたことも無い。」
『ハイダ・ケイスケね。発音は難しいかな。ま、それはどっちでも良いんだけど。覚えてないかぁ……んーでもなぁ。やらねばならぬ何事も。と言うことで~えいっ☆』

『男』にその紙の男の名を言われても何も感じない。なのに、『彼』からデコピンをされた瞬間──頭のモヤが晴れるような感覚後、ケースケの事を思い出した。

「ケースケ、か。俺は何故忘れてたのか」
『やっと思い出したねぇ。それで本題なんだけど──』

『男』が来た目的。
 ケースケは何度も人生をやり直してる、と。正確にはそう、前に彼から話を聴いた事があった。眉唾な話だが、マルゥメ自体がその《やり直し》を能力を持ってて何度もアイツ、俺の弟のワグーッツンとの関係を良いものにしようとやってたが、諦めた所に【あっち】の世界で死んだ魂だけのケースケがマルゥメの中に入った。
 で、死ぬと人生やり直しをヤッてたが、ああ。俺があの時、稀人のユーキに殺されて……後を追ってきたのか。
 
 ケースケが俺に対して戸惑いながらも依存だかになってたのは知ってた。知ったうえでこっちはヤレれば良かったから、愛情なんて持ってなかった。
 都合の良い穴、実際ケースケとヤルのは気持ちよかったしな。

 で、次の人生でケースケを見たのは、【ステージ上】だった。何かの【祭り】で、家族揃って……って言っても母は表には出てこないが、父と上の兄2人と弟のワグーッツンの5人で参加者に対してコメントをする。
 俺達の話を聴くため集まった者たちの中に、マルゥメとケースケが居た。 
 彼らと目が合うと、すぐに姿を消してしまったが、……にしてもマルゥメが居る? あと俺以外に姿を見せるなって言ったのに。

『あ~それはねぇ』

『男』の説明によると、ケースケが持つ《淫魔法》、アイツらしいな。それの《技》の中で、《模倣体》《認識阻害》を使ったらしい。

《模倣体》は《分身》タイプので『自暴自棄になって使ってたよ』と。俺と目が合った時に気配を消したのは《認識阻害》だな。相変わらず便利な《技》を持ってやがるな。

 その後は俺は俺で動く。
 俺の仕事、その下で働く部下達に【奴隷商】に向かわせて捕らえられてる同胞に、働きかける。反乱を起こさせてあの【国】を乗っ取る。
 そして、人間や稀人を奴隷化してやると目標を言ってやればすぐに動き出す。
 まぁ、水面下で誰にも気付かれないように──


 なのに、いつの間にか子供の時代に戻っていた。
 何度、悪行に手を染めたか、それでも子供時代に戻っていた。
 あれや、これや試したが、最後に見たのはケースケに──……

 あっちもやり直しの為に試行錯誤してる結果、前までは死んだら《やり直し》の条件が《任意やり直し・スタート》で任意でとなって、頻繁に戻る事が増えた。
 こっちも早い段階で結果を出さなければいけなくなった結果、雑に戦争が始まり、それが起きる前にケースケが乗り込んでくる事が増えた。

《認識阻害》《模倣体》の組み合わせはチート級だろう。認識出来ないまま部下達は屠られる。
 俺も仮面をつけ周りの部下達と一緒に、次の人生を待った。


『そこのキミ。そうそう、キミだよキミ。』
『また会ったね。今度は覚えてるかな?』
「ああ『黒いの』」
『さて、次の《やり直し》が決まったよ』
「アイツが納得するのか?」
『あは、それはやってみないと分からないな。それにキミには良いポジションを与えるよ』

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