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・本編
185 『聖域のアルカディア』──プレイ3
【「……これ、全部片付けるのに何時間かかると思ってるんだい? 君たち」
泡が少しずつ弾け、静まり返った森に、どこまでも冷ややかな、けれどお母さんのような圧を感じさせる声が響いた。
リーナ先生が、大量の雑巾と空のバケツを積んだ台車を引いて立っていた。
「……リーナ先生」
「タワシ……学園の備品リストから消えた128個のタワシが、まさかこんな『ハリネズミ』の装備に使われていたなんてね。カカッハ君、あとで保健室……じゃなくて【反省室】に来なさい」
「フッ……我が魂の防具を回収しようとは、無粋な……。……あ、はい、すみませんでした。自分でもこれ、ちょっと重いと思ってたんで……」
リーナ先生の「真顔の説教」には、中二病の闇もあっけなく霧散する。カカッハは大人しく、ペタペタとタワシを剥がし始めた。一方、その傍らでは。
「……マルゥメ、目に入ってないか? ほら、じっとしてろよ」
「あ……うん。ありがとう、ケース……。……えへへ、ケースも泡だらけだね」
泡だらけになりながら、お互いの顔を拭き合い、笑い合っているケースとマルゥメ。その「純度100%の友情と、それ以上の何か」を、コノハは地面に座り込んだまま、ぼーっと眺めていた。
(……ワグーッツン様がマルゥメを助け、ケースがマルゥメを想って魔法を使い……。……そして今、二人はあんなに幸せそうに笑ってる。……これ、私の知ってる『聖アル』のドロドロの愛憎劇じゃない。……これ、『親友同士が支え合ってハッピーエンドを迎える、超良質な別ゲー』じゃないの?!)
コノハの脳内の恋愛UIが、ついにパチパチと火花を散らして消滅した。代わりに浮かび上がったのは、【推しカプ成立:尊死レベルMAX】という、女神の知らない自分自身の本能のウィンドウだった。
だが、その平穏を切り裂くように。空が、不自然なほど「青く紫に」発光し始めた。
『――おのれ、おのれおのれおのれ……ッ!!』
天から響くのは、もはや慈悲深い女神の声ではない。
地声が漏れ出したような、ヒステリックなセリァナラの咆哮。
『バグキャラが私の庭を汚し、コノハが自我を取り戻しかけるなど……許しません! こうなれば、強制的に「最終決戦」へ移行させます!……マナを……この世界の全ての愛を、私が直接刈り取ってあげましょう!』
──ドォォォォォン!! という衝撃音と共に、学園の時計塔が青い雷に打たれ、そこから禍々しい「女神の化身」がその姿を現そうとしていた。】
やっとカオス回が終わってホッとしてたら女神様降臨かぁー。
ゲーム内の私もやっと正気に戻ったのに……この女神様ろくな人じゃないな。関わりたくなーい!
本編よりマルゥメ達に救いがあるのは良いわよね……むしろこれから本編をする時に変な感情になりそう……
リーナ先生は【保健室】の先生なんだよね、主人公が色んな意味で怪我した時にえろっちいけど、たまにお母さんみたいに心配してくれる。オカン属性よね。
・リーナ先生∶好感度MAX
【「……もう、学園の喧騒に戻る必要なんてないじゃないか。ここで僕と一緒に、永遠の眠りにつこう。……愛しているよ、僕の小さな患者さん。……君のすべては、僕が管理してあげる。……ほら、もう一度だけ、僕の魔法を……」】
【空を裂き、時計塔の上に降臨した女神セリァナラ。その背後には、数千、数万の[青いマネヌーンの蔦]がうごめき、【学園中】のマナを吸い尽くそうとしていた。
『さあ、ひざまずきなさい! 私の作った物語に従わないバグ共は、すべて【タワシ部屋】の塵にしてあげます!』
「……そんなこと、させるかよ!」
「僕たちの【学園】を、マルゥメとの思い出を……君の『設定』で上書きさせはしない!」
ケースが氷の剣を構え、ワグーッツンがマルゥメの前に立ちはだかる。
ヴォン先輩、メイチャン、そして泡だらけで戻ってきたキラっちも、各々の武器を手に空を見上げた。
だが、女神の放つ「設定」の圧力は凄まじく、全員の体が重圧で動かなくなる。
『無駄よ! 私はこの世界の「神──ディレクター──」! 私が「負けろ」と言えば、貴方たちは負ける運命なのよ!』
「……フッ。神、だと? 笑わせるな」
その時、重圧を跳ね除けて一歩前に出たのは、胸元に最後の一つ――「使い古された、少し毛先の硬いタワシ」を隠し持っていたカカッハだった!
「……リーナ先生に没収される前に、俺の魂に刻んでおいたのさ。……食らえ! これが俺の、設定を打ち破る最後の一撃だ!!」
カカッハが渾身の力で投げつけたタワシが、空中で黄金に輝く。すると、リーナ先生の台車から没収されたはずの128個のタワシたちが、共鳴するように次々と飛び出した!
「あら、私のタワシたちが……!?」
宙に舞ったタワシたちは、女神の青いマナを吸収し、みるみるうちに巨大化。
そして……全高10メートルを超える、巨大な《タワシのゴーレム》通称:タワシ君へと合体したのだ!
「行け……! 我が魂の写し身よ!! 女神の顔面をポリッシュしてやれ!!」
タワシ君が巨大な拳を女神に叩きつけた瞬間、セリァナラの「神の加護」が、汚れを落とされるようにガラガラと崩れ去る!
「……今だわ!」
コノハが叫んだ。彼女の視界を覆っていた[ゲームUI]が、パリンッ! とガラスのように砕け散る。
「……セリァナラ様。私は、貴女の望む『コノハ』じゃない。……私は、この世界で一生懸命生きているみんなの『絆』を愛する……腐女子のコノハよ!!」
コノハの体から、今までとは違う、温かくて眩しい「本物の聖者の光」が溢れ出した。それは誰かを支配する力ではなく、ケースやマルゥメ、ワグーッツンたちの「現実の想い」を肯定し、増幅させる純粋な祈り。
「みんな、力を貸して!! 偽物の物語を、私たちの『今』で塗り替えるの!!」
コノハの光を受け、ケースたちの武器が虹色に輝く。全員の想いが一つになり、巨大なタワシ君と共に、女神へと放たれた!
「「「「おおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」」」」
『いやあああああああ?! 顔が、顔が磨かれるぅぅぅぅ!! 清潔すぎるぅぅぅぅ!!』
清純な女神の皮を被ったモンスターは、カカッハのタワシ攻撃とコノハの真実の光によって、塵一つ残さず綺麗さっぱり「清掃」され、空の彼方へと消し飛んでいった。】
あ、エンドロール……本当に[ファンディスク]の話が終わったのね……なんだか疲れたわ。
まさかカカッハくんと伴侶になるエンドで終わるとはなー。
こっちのマルゥメ達となら仲良くなれそうなのに。
まだ生徒会会計の、情報だと寡黙で植物好きらしいのよね。
さっきのリーナ先生が出たんなら体育教師トマッバさんも出して欲しかったなぁ。
外伝キャラでもしも~みたいな話で本来は一個上の先輩で生徒会副会長をしてるけど、ココでは体育教師トマッバさん。
・体育教師トマッバ∶【属性:爽やか熱血教師×実は独占欲強め×放課後の特別指導】
優しくて子供たちから慕われててでも聖者の力を持つ主人公にだけは「教師の顔」が崩れてしまう……みたいな。
【授業中:爽やかな指導】
【「ほら、顔を上げて! 君ならもっと高く跳べるはずだよ。……ふふ、転んじゃったのかい? 痛いところはないかな。……よし、僕が【保健室】までおんぶしてあげよう。……いいから、これは先生の命令だよ」】
【放課後の居残り特訓】
【「……まだ腰が高いよ。もっと僕の動きに集中して。……そう、いい子だ。君は飲み込みが早いね。……ご褒美に、帰りに冷たいジュースでも奢ってあげようか。……先生と君だけの、内緒の寄り道だよ?」】
【イベント:雨宿りの倉庫】
【「……暗いね。怖くないかい? ……聖者様、君の瞳を見ていると、自分が『先生』であることを忘れてしまいそうになるんだ。……もし僕が、君の隣に並ぶ一人の男だったら……なんて、困らせるようなことを言ってごめんね」】
突然の雨で、運動用具倉庫に二人きりで閉じ込められちゃった時にいきなり真面目な顔で話すからドキドキしちゃうんだよね。
体育教師トマッバ好感度:MAX
【「……卒業おめでとう。今日からはもう、僕のことを『先生』って呼ばなくていいんだよ。……愛しているよ、僕の可愛い聖者様。これからは先生としてじゃなく、一人の男として、君のすべてを護らせてほしい。……返事を聞くまで、ここから出さないよ?」】
個人的に外伝キャラなら1番好きかも、ふふ。
──・・・
──…………
あれ、いつの間にか寝ちゃってた……ん、まだ時間はあるけど……それにしても変な夢を見たなぁ。ふあっ、なんだっけ、タワシがどうたら……あれ、めっちゃ濃厚な内容だったのに夢から醒めたら憶えてないなんて……!
ユイハに会ったら絶対に言おう、って思ってたのになあー……
付けっぱなしだった[PC]に映ってる『聖域のアルカディア』の画面を落とそうとクリックしても反応がない。
あれ? おかしいな……カチカチとマウスクリックだけの音が部屋に響く。
「え、壊れた……? 修理がかさむのだけは勘弁……って、え」
突然、画面が明るく光り出す。
こんな設定はしてないし、ゲームの演出……?
車のハイビームみたいな照らされ方で戸惑いながらも近くにあった上着を[PC]にかけようとした瞬間──【パソコンの画面】へ吸い込まれる感覚があった。
──・・・
「ココ、は……」
目を開けるとそこは【不思議な空間】ってやつで、自分がどう立ってるのかも分からない。
『聴こえますか……選ばれし聖者よ……』
え、今何か……
『私はセリァナラ。貴方がプレイしてた『聖域のアルカディア』を創った女神よ』
「え゙、嘘っ、」
『夢ではないわ……』
目の前には煌々とした女性のシルエットが現れる。
まさか自分がそんな体験をするとは思わなくて夢……って思ったらセリァナラ様が現実だって……いきなり過ぎて信じられないわ。
彼女が言うには【聖アルの世界】をゲーム化してそれをプレイするプレイヤー達の中から聖者として素質がある者を探す為だったらしい。
彼女は、数年後その世界で魔王が暴れまわるのを知ってるから【BL学園】という場所に高2から入学する事を予定してる。
ココら辺はゲーム設定とほとんど同じね。
『今すぐ行きたそうにしてるけど、この【空間】で貴女の身体をあの【世界】に馴染ませないといけないのよ。大丈夫ココと他の世界と時間の流れは違うから。』
お腹もすかないって良いわね。好きな事に没頭できるもの。私なら同人誌作りたいかなぁ。でも普段は仕事に追われててたまの休みはつい、積みゲームを消化しちゃうのよね。
リラックスしてなさいと言われて上下左右も分からない【空間】で仰向けになって過ごす。
『ゲームの主人公達の体に貴女の魂を融合させるのよ。貴女は確かカレンをよく操作してたわね、それで良いかしら?』
「あ、はい。あの、選ばなかった方はどうなるんですか?」
『私の聖域で過ごす事になるわ、貴女の本来の体も保存しとくから安心なさい』
「あ、は、はい……ありがとうございます」
意外と至れり尽くせりだ。
こういうのってもっと、アレなのかなと思ってたけど……ちゃんとしてるのね。
本物のワグーッツン様を見れるのは嬉しいなぁ。やっぱカッコいいんだろうな。
でもそうなると、悪役令息の2人も……そこは気が滅入るなぁ。
『学園生活で困った事があれば私の天使達を貴女のサポートとして遣わせますわ』
「あ、はい、ありがとう御座います!」
あの可愛い守護天使ちゃん達が来てくれるなら心強いわ!
それと確かカレンはセリァナラ様から《月魔法》をギフトされてたわね。武器は弓で聖者専用の技も使える……彼らも私と同じ魔法が無い世界から《召喚》されて色々と苦労したからなぁ。
『それについても、【聖域のアルカディアの世界】に着いたらチュートリアルとして一通りの魔法の使い方を【最初の街】で教えますわ』
『・・・それでは準備が出来ましたのでコノハ──いえ、聖者カレン! 頑張ってきなさい!』
「はいっ!」
──コレでよし。私もお祭りを楽しみにしてるね、恋乃葉ちゃん
目を開けると──ゲームの中で最初に《召喚》された女神セリァナラ様を信仰する【最初の街】に着いた。
「おお、聖者様……!」
「ご気分は如何ですか?」
「──ぁ、ぼ。く……こほん、僕の名前は花房華蓮です、よろしくお願いします」
「ハブーサ・カーレくんだね」
私……じゃなかった僕を囲む大勢の大人達に緊張しながらも声を出そうとしたら上手くできなくて落ち着かせる様に胸を押さえながら声を出すと少年の声が聴こえる。
本当にカレンになったんだ……自分の体じゃないのに動くのは変な気分でもあるけどワクワクが止まらない。
にしてもゲームだとちゃんとカレンって言ってくれたのにみんなしてカーレとか、カレーって言い方に。カレーって食べ物じゃないんだから。なんだかお腹すいた……と思ってると大人達がザワツキながらも僕を【別の部屋】に移動してから食事を出してくれた。
見た目がカラフル……!
これが異世界飯!
恐る恐る一口食べるとめっちゃ美味しい……!
えー。なにこれ、小皿に入ってた青いイチゴを食べたら味は桃だった。脳がバグる……。
──コンコン
食事をしてると美人な人が【部屋の中】に入ってきた。
金髪だけどカレンと同じ毛先がピンクで、目の色はセリァナラ様みたいな紫の人……あれ、もしかして
「もしかしてエマくん?」
「! は、はいっ! カレン様お逢いしたかったですっ!」
「わっ、」
「すみません、つい勢いが……」
ほえ~……ゲームの守護天使達と全然違う。等身があんなに昇天する時に降り立ってくる天使ちゃんみたいな子がスラッとしたイケメン青年に……!
他の4人はまだ忙しいらしくそのうち会いに来てくれるって。
エマくんは終始カレンに懐いてて距離が近い。
小さな天使ちゃんなら気にしなかったけどこれは緊張するわ……
「セリァナラ様から【ココ】にいる人達にえっと、ちゅーとりあるとして[マネヌーン]の使い方を教えてあげて、って私がいっぱい持ってますので!」
そういうとエマくんは鞄から大量の青い花[マネヌーン]を取り出した。
彼は自分でも栽培してるらしい。
元々は課金アイテムなのよね。
それから街の人に[マネヌーン]を使う為にエマくんは『殿方の心を掴むには胃袋から! っていうので色々と料理やお菓子を作るのをやりましょう!』
って、ヤイくんやヤマくん、ルイくん4人も合流!
みんなキラキラしたイケメン達でそんな人達に囲まれながら楽しく過ごす。
あとはルナくんって子なんだけど、彼らの話す言葉から喧嘩しちゃってるみたい。
はやく仲直りしてくれたらな、【BL学園】に行ったら会えるって言ってたからその時で良いかな。
「カレン様、そっちの焦げてます!」
「きゃ、本当だ! エマくんの《水魔法》で助かった……」
「こっちのジャムは出来上がりそうだぜ!」
出来た料理やお菓子を街の人に配るととても喜ばれた。
中には僕を拝む人達も。
[マネヌーン]は好感度を上げるアイテムだからこうなるんだよね。
でも皆で練習して作った料理だから本当に喜んでくれたら嬉しいな!
泡が少しずつ弾け、静まり返った森に、どこまでも冷ややかな、けれどお母さんのような圧を感じさせる声が響いた。
リーナ先生が、大量の雑巾と空のバケツを積んだ台車を引いて立っていた。
「……リーナ先生」
「タワシ……学園の備品リストから消えた128個のタワシが、まさかこんな『ハリネズミ』の装備に使われていたなんてね。カカッハ君、あとで保健室……じゃなくて【反省室】に来なさい」
「フッ……我が魂の防具を回収しようとは、無粋な……。……あ、はい、すみませんでした。自分でもこれ、ちょっと重いと思ってたんで……」
リーナ先生の「真顔の説教」には、中二病の闇もあっけなく霧散する。カカッハは大人しく、ペタペタとタワシを剥がし始めた。一方、その傍らでは。
「……マルゥメ、目に入ってないか? ほら、じっとしてろよ」
「あ……うん。ありがとう、ケース……。……えへへ、ケースも泡だらけだね」
泡だらけになりながら、お互いの顔を拭き合い、笑い合っているケースとマルゥメ。その「純度100%の友情と、それ以上の何か」を、コノハは地面に座り込んだまま、ぼーっと眺めていた。
(……ワグーッツン様がマルゥメを助け、ケースがマルゥメを想って魔法を使い……。……そして今、二人はあんなに幸せそうに笑ってる。……これ、私の知ってる『聖アル』のドロドロの愛憎劇じゃない。……これ、『親友同士が支え合ってハッピーエンドを迎える、超良質な別ゲー』じゃないの?!)
コノハの脳内の恋愛UIが、ついにパチパチと火花を散らして消滅した。代わりに浮かび上がったのは、【推しカプ成立:尊死レベルMAX】という、女神の知らない自分自身の本能のウィンドウだった。
だが、その平穏を切り裂くように。空が、不自然なほど「青く紫に」発光し始めた。
『――おのれ、おのれおのれおのれ……ッ!!』
天から響くのは、もはや慈悲深い女神の声ではない。
地声が漏れ出したような、ヒステリックなセリァナラの咆哮。
『バグキャラが私の庭を汚し、コノハが自我を取り戻しかけるなど……許しません! こうなれば、強制的に「最終決戦」へ移行させます!……マナを……この世界の全ての愛を、私が直接刈り取ってあげましょう!』
──ドォォォォォン!! という衝撃音と共に、学園の時計塔が青い雷に打たれ、そこから禍々しい「女神の化身」がその姿を現そうとしていた。】
やっとカオス回が終わってホッとしてたら女神様降臨かぁー。
ゲーム内の私もやっと正気に戻ったのに……この女神様ろくな人じゃないな。関わりたくなーい!
本編よりマルゥメ達に救いがあるのは良いわよね……むしろこれから本編をする時に変な感情になりそう……
リーナ先生は【保健室】の先生なんだよね、主人公が色んな意味で怪我した時にえろっちいけど、たまにお母さんみたいに心配してくれる。オカン属性よね。
・リーナ先生∶好感度MAX
【「……もう、学園の喧騒に戻る必要なんてないじゃないか。ここで僕と一緒に、永遠の眠りにつこう。……愛しているよ、僕の小さな患者さん。……君のすべては、僕が管理してあげる。……ほら、もう一度だけ、僕の魔法を……」】
【空を裂き、時計塔の上に降臨した女神セリァナラ。その背後には、数千、数万の[青いマネヌーンの蔦]がうごめき、【学園中】のマナを吸い尽くそうとしていた。
『さあ、ひざまずきなさい! 私の作った物語に従わないバグ共は、すべて【タワシ部屋】の塵にしてあげます!』
「……そんなこと、させるかよ!」
「僕たちの【学園】を、マルゥメとの思い出を……君の『設定』で上書きさせはしない!」
ケースが氷の剣を構え、ワグーッツンがマルゥメの前に立ちはだかる。
ヴォン先輩、メイチャン、そして泡だらけで戻ってきたキラっちも、各々の武器を手に空を見上げた。
だが、女神の放つ「設定」の圧力は凄まじく、全員の体が重圧で動かなくなる。
『無駄よ! 私はこの世界の「神──ディレクター──」! 私が「負けろ」と言えば、貴方たちは負ける運命なのよ!』
「……フッ。神、だと? 笑わせるな」
その時、重圧を跳ね除けて一歩前に出たのは、胸元に最後の一つ――「使い古された、少し毛先の硬いタワシ」を隠し持っていたカカッハだった!
「……リーナ先生に没収される前に、俺の魂に刻んでおいたのさ。……食らえ! これが俺の、設定を打ち破る最後の一撃だ!!」
カカッハが渾身の力で投げつけたタワシが、空中で黄金に輝く。すると、リーナ先生の台車から没収されたはずの128個のタワシたちが、共鳴するように次々と飛び出した!
「あら、私のタワシたちが……!?」
宙に舞ったタワシたちは、女神の青いマナを吸収し、みるみるうちに巨大化。
そして……全高10メートルを超える、巨大な《タワシのゴーレム》通称:タワシ君へと合体したのだ!
「行け……! 我が魂の写し身よ!! 女神の顔面をポリッシュしてやれ!!」
タワシ君が巨大な拳を女神に叩きつけた瞬間、セリァナラの「神の加護」が、汚れを落とされるようにガラガラと崩れ去る!
「……今だわ!」
コノハが叫んだ。彼女の視界を覆っていた[ゲームUI]が、パリンッ! とガラスのように砕け散る。
「……セリァナラ様。私は、貴女の望む『コノハ』じゃない。……私は、この世界で一生懸命生きているみんなの『絆』を愛する……腐女子のコノハよ!!」
コノハの体から、今までとは違う、温かくて眩しい「本物の聖者の光」が溢れ出した。それは誰かを支配する力ではなく、ケースやマルゥメ、ワグーッツンたちの「現実の想い」を肯定し、増幅させる純粋な祈り。
「みんな、力を貸して!! 偽物の物語を、私たちの『今』で塗り替えるの!!」
コノハの光を受け、ケースたちの武器が虹色に輝く。全員の想いが一つになり、巨大なタワシ君と共に、女神へと放たれた!
「「「「おおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」」」」
『いやあああああああ?! 顔が、顔が磨かれるぅぅぅぅ!! 清潔すぎるぅぅぅぅ!!』
清純な女神の皮を被ったモンスターは、カカッハのタワシ攻撃とコノハの真実の光によって、塵一つ残さず綺麗さっぱり「清掃」され、空の彼方へと消し飛んでいった。】
あ、エンドロール……本当に[ファンディスク]の話が終わったのね……なんだか疲れたわ。
まさかカカッハくんと伴侶になるエンドで終わるとはなー。
こっちのマルゥメ達となら仲良くなれそうなのに。
まだ生徒会会計の、情報だと寡黙で植物好きらしいのよね。
さっきのリーナ先生が出たんなら体育教師トマッバさんも出して欲しかったなぁ。
外伝キャラでもしも~みたいな話で本来は一個上の先輩で生徒会副会長をしてるけど、ココでは体育教師トマッバさん。
・体育教師トマッバ∶【属性:爽やか熱血教師×実は独占欲強め×放課後の特別指導】
優しくて子供たちから慕われててでも聖者の力を持つ主人公にだけは「教師の顔」が崩れてしまう……みたいな。
【授業中:爽やかな指導】
【「ほら、顔を上げて! 君ならもっと高く跳べるはずだよ。……ふふ、転んじゃったのかい? 痛いところはないかな。……よし、僕が【保健室】までおんぶしてあげよう。……いいから、これは先生の命令だよ」】
【放課後の居残り特訓】
【「……まだ腰が高いよ。もっと僕の動きに集中して。……そう、いい子だ。君は飲み込みが早いね。……ご褒美に、帰りに冷たいジュースでも奢ってあげようか。……先生と君だけの、内緒の寄り道だよ?」】
【イベント:雨宿りの倉庫】
【「……暗いね。怖くないかい? ……聖者様、君の瞳を見ていると、自分が『先生』であることを忘れてしまいそうになるんだ。……もし僕が、君の隣に並ぶ一人の男だったら……なんて、困らせるようなことを言ってごめんね」】
突然の雨で、運動用具倉庫に二人きりで閉じ込められちゃった時にいきなり真面目な顔で話すからドキドキしちゃうんだよね。
体育教師トマッバ好感度:MAX
【「……卒業おめでとう。今日からはもう、僕のことを『先生』って呼ばなくていいんだよ。……愛しているよ、僕の可愛い聖者様。これからは先生としてじゃなく、一人の男として、君のすべてを護らせてほしい。……返事を聞くまで、ここから出さないよ?」】
個人的に外伝キャラなら1番好きかも、ふふ。
──・・・
──…………
あれ、いつの間にか寝ちゃってた……ん、まだ時間はあるけど……それにしても変な夢を見たなぁ。ふあっ、なんだっけ、タワシがどうたら……あれ、めっちゃ濃厚な内容だったのに夢から醒めたら憶えてないなんて……!
ユイハに会ったら絶対に言おう、って思ってたのになあー……
付けっぱなしだった[PC]に映ってる『聖域のアルカディア』の画面を落とそうとクリックしても反応がない。
あれ? おかしいな……カチカチとマウスクリックだけの音が部屋に響く。
「え、壊れた……? 修理がかさむのだけは勘弁……って、え」
突然、画面が明るく光り出す。
こんな設定はしてないし、ゲームの演出……?
車のハイビームみたいな照らされ方で戸惑いながらも近くにあった上着を[PC]にかけようとした瞬間──【パソコンの画面】へ吸い込まれる感覚があった。
──・・・
「ココ、は……」
目を開けるとそこは【不思議な空間】ってやつで、自分がどう立ってるのかも分からない。
『聴こえますか……選ばれし聖者よ……』
え、今何か……
『私はセリァナラ。貴方がプレイしてた『聖域のアルカディア』を創った女神よ』
「え゙、嘘っ、」
『夢ではないわ……』
目の前には煌々とした女性のシルエットが現れる。
まさか自分がそんな体験をするとは思わなくて夢……って思ったらセリァナラ様が現実だって……いきなり過ぎて信じられないわ。
彼女が言うには【聖アルの世界】をゲーム化してそれをプレイするプレイヤー達の中から聖者として素質がある者を探す為だったらしい。
彼女は、数年後その世界で魔王が暴れまわるのを知ってるから【BL学園】という場所に高2から入学する事を予定してる。
ココら辺はゲーム設定とほとんど同じね。
『今すぐ行きたそうにしてるけど、この【空間】で貴女の身体をあの【世界】に馴染ませないといけないのよ。大丈夫ココと他の世界と時間の流れは違うから。』
お腹もすかないって良いわね。好きな事に没頭できるもの。私なら同人誌作りたいかなぁ。でも普段は仕事に追われててたまの休みはつい、積みゲームを消化しちゃうのよね。
リラックスしてなさいと言われて上下左右も分からない【空間】で仰向けになって過ごす。
『ゲームの主人公達の体に貴女の魂を融合させるのよ。貴女は確かカレンをよく操作してたわね、それで良いかしら?』
「あ、はい。あの、選ばなかった方はどうなるんですか?」
『私の聖域で過ごす事になるわ、貴女の本来の体も保存しとくから安心なさい』
「あ、は、はい……ありがとうございます」
意外と至れり尽くせりだ。
こういうのってもっと、アレなのかなと思ってたけど……ちゃんとしてるのね。
本物のワグーッツン様を見れるのは嬉しいなぁ。やっぱカッコいいんだろうな。
でもそうなると、悪役令息の2人も……そこは気が滅入るなぁ。
『学園生活で困った事があれば私の天使達を貴女のサポートとして遣わせますわ』
「あ、はい、ありがとう御座います!」
あの可愛い守護天使ちゃん達が来てくれるなら心強いわ!
それと確かカレンはセリァナラ様から《月魔法》をギフトされてたわね。武器は弓で聖者専用の技も使える……彼らも私と同じ魔法が無い世界から《召喚》されて色々と苦労したからなぁ。
『それについても、【聖域のアルカディアの世界】に着いたらチュートリアルとして一通りの魔法の使い方を【最初の街】で教えますわ』
『・・・それでは準備が出来ましたのでコノハ──いえ、聖者カレン! 頑張ってきなさい!』
「はいっ!」
──コレでよし。私もお祭りを楽しみにしてるね、恋乃葉ちゃん
目を開けると──ゲームの中で最初に《召喚》された女神セリァナラ様を信仰する【最初の街】に着いた。
「おお、聖者様……!」
「ご気分は如何ですか?」
「──ぁ、ぼ。く……こほん、僕の名前は花房華蓮です、よろしくお願いします」
「ハブーサ・カーレくんだね」
私……じゃなかった僕を囲む大勢の大人達に緊張しながらも声を出そうとしたら上手くできなくて落ち着かせる様に胸を押さえながら声を出すと少年の声が聴こえる。
本当にカレンになったんだ……自分の体じゃないのに動くのは変な気分でもあるけどワクワクが止まらない。
にしてもゲームだとちゃんとカレンって言ってくれたのにみんなしてカーレとか、カレーって言い方に。カレーって食べ物じゃないんだから。なんだかお腹すいた……と思ってると大人達がザワツキながらも僕を【別の部屋】に移動してから食事を出してくれた。
見た目がカラフル……!
これが異世界飯!
恐る恐る一口食べるとめっちゃ美味しい……!
えー。なにこれ、小皿に入ってた青いイチゴを食べたら味は桃だった。脳がバグる……。
──コンコン
食事をしてると美人な人が【部屋の中】に入ってきた。
金髪だけどカレンと同じ毛先がピンクで、目の色はセリァナラ様みたいな紫の人……あれ、もしかして
「もしかしてエマくん?」
「! は、はいっ! カレン様お逢いしたかったですっ!」
「わっ、」
「すみません、つい勢いが……」
ほえ~……ゲームの守護天使達と全然違う。等身があんなに昇天する時に降り立ってくる天使ちゃんみたいな子がスラッとしたイケメン青年に……!
他の4人はまだ忙しいらしくそのうち会いに来てくれるって。
エマくんは終始カレンに懐いてて距離が近い。
小さな天使ちゃんなら気にしなかったけどこれは緊張するわ……
「セリァナラ様から【ココ】にいる人達にえっと、ちゅーとりあるとして[マネヌーン]の使い方を教えてあげて、って私がいっぱい持ってますので!」
そういうとエマくんは鞄から大量の青い花[マネヌーン]を取り出した。
彼は自分でも栽培してるらしい。
元々は課金アイテムなのよね。
それから街の人に[マネヌーン]を使う為にエマくんは『殿方の心を掴むには胃袋から! っていうので色々と料理やお菓子を作るのをやりましょう!』
って、ヤイくんやヤマくん、ルイくん4人も合流!
みんなキラキラしたイケメン達でそんな人達に囲まれながら楽しく過ごす。
あとはルナくんって子なんだけど、彼らの話す言葉から喧嘩しちゃってるみたい。
はやく仲直りしてくれたらな、【BL学園】に行ったら会えるって言ってたからその時で良いかな。
「カレン様、そっちの焦げてます!」
「きゃ、本当だ! エマくんの《水魔法》で助かった……」
「こっちのジャムは出来上がりそうだぜ!」
出来た料理やお菓子を街の人に配るととても喜ばれた。
中には僕を拝む人達も。
[マネヌーン]は好感度を上げるアイテムだからこうなるんだよね。
でも皆で練習して作った料理だから本当に喜んでくれたら嬉しいな!
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これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。