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196 8月行事──【夏季特別講習】フェーズ1

 8月行事──【夏季特別講習】フェーズ1【禁じられた魔導史】

 ヴォン先輩が【高等部】からゲッちゃんパイセン率いる先輩達と再び【中等部】に来て、この世界の歴史を改めて深く知ろうという【夏季特別講習】らしい。
 
【講堂】に全生徒を集めて[映写機魔導具]で、この世界のでき方……授業を受けてれば誰だって知ってる事をヴォン先輩のイケボもあって、意外と聴ける。
 

──この【マヌ゙ン・コッカソ】を作った女神セリァナラ様は“とても慈悲深く美しい女神”色んな種族が仲良く暮らして行けるよう山脈を作り、海や川を──……

 ヴォン先輩は手元にある資料、を見ながら話を進める。
 あの本は確か聖塔教の聖書──民に教えられる歴史書だ。

 黄金色に輝く古文書を広げ、皆に聴かせるようにゆっくりと皆を見ながら語りかけるような脳に響く声で語り始める。


「……かつて世界に邪神が現れ闇に包まれた時、女神セリァナラは自らの心臓を五つに分け、それを忠実な騎士たちに与えました。彼らはそれを御守りとして付け、戦場へと向かう。彼女は、自分達のために戦う彼らが酷い目に遭わない様に祈りながら、自分の“愛”としての決断をし過酷な場所へ向かった愛する騎士達を簡単な理由で動かした訳では無い……自分の命を削ってでも彼らには無事に帰ってきて欲しかった。そう、彼女はいつだって、私たち人間を慈しむために、自らを犠牲にしてきたのですよ──……」

──……女神様って、なんて尊いんだ
──ヴォン先輩の話、泣けてくるよ……

──聖塔教の教えはいつ聴いても感動するなぁ
──女神セリァナラに感謝を!

【講堂内】はヴォン先輩の語り部を聴いた生徒達、先生達もがすすり泣く声と音が聴こえる。
 種族なんて関係ない、この世界に生きてる“全て”のヒト々達の為に女神セリァナラを信仰する教会の教え。
 種族ごとに祈る神は居るけど、頂点にはやっぱりこの世界を作った彼女の存在がデカい。

 でも、その話を聴いてると頭痛が……最近また増えたんだよな。


──((……違う。こんなに温かい記憶じゃない。もっと冷たくて、息が詰まるような……))

 ふと、横を見るとルナが俯いてペンダントを握りしめる様な光景に声をかけようとした時──
 目の端に写ったワーチャン達も、マルがワーチャンの服を掴んで苦しそうにしていた。
 え、どうしたの、みんな……


──はい! 質問ですっ!
──そこの君、どうぞ

 話の途中で聴いてる生徒達から議論をする時間があって、その時間に勢いよく手が上がる。
 リィちゃんみたいな犬獣人の子が、無邪気に首を傾げながら──……

「……あの、ヴォン先輩。女神様がそんなに優しいなら……どうしてこの資料の挿絵の女神様は、騎士たちの首に鎖を繋いでるように見えるんですか? 僕、鼻が利くんですけど……この本、なんだか『悲鳴』の匂いがします」

 「それは『絆』を視覚化したメタファーですよ、ポチくん。……君は少し、想像力が豊かすぎるようだね」

 ヴォン先輩は一瞬だけ、ほんの一瞬目が光り、彼に目を向けるけどすぐにさっき語っていたような優しい笑みを浮かべて話を続ける。


 挿絵には、マルにそっくりな銀色の髪に紫目の美女とその前には、ルナ達に髪の色が似てる5人の騎士達。
 そういや、中2の文化祭の劇ではマル女神役で凄い演技力……だったんだよな。
 あの時、女神に冷たくしないといけない役をワーチャンがやってメンタルボロボロになってたっけ……
 でも、あの時のマルマジでハマり役で劇を観に来てた人たちが『女神様降臨?!』って言ってたぐらい。
 
 あ、でも劇の内容は賛否両論でまぁ、圧倒的にブーイングが多かったけどね。
 教えの慈悲深い女神様じゃなくて、冷徹な~……なんか近寄りがたい? 感じだったし。




 今回は第一回目として、話のあらましというか皆知ってはいるからまた次回深い話をするって事で解散になった。


「マルっ!」
「ケース、……どうしたの?」
「どうした、じゃないだろ、マル顔色がめっちゃ悪いだろ、ワーチャンが居るから大丈夫だろうけど、【保健室】に行こうぜ」
「そうだな、マルゥメ、ケースと充電してこい」

 なんか珍しくワーチャンから充電なんて言葉を聴いてビックリしたけど、それを言うぐらいよっぽどなんだと察した俺は、近くのベンチに座ってマルを抱き寄せる。
 カタカタと俺の服を掴む手が震えてる。
 ルナの方も心配だけど、他の4人がいるし、とにかくマルを充電しなきゃ……!


──ワグーッツンがあんな事いうなんてな
──・・・今のマルゥメにはケースの方が良いだろう。部屋に帰ったら存分に充電してやる
──はは、ワグーッツンらしいな、でも今回の話って例の……
──プウ……


 近くでワーチャンとメイチャンの声、プキュギの声が聴こえる。みんな、心配してるぞ、マル!




「ケース……ありがとう、・・・ケース、」
「ん、手の震え大丈夫そうだな、どうした?」
「んん、・・・何でもない。今日はもう戻るね」
「ああ、ゆっくり休めよー! ワーチャンもマルのことよろしくな!」
「言われなくても」

 抱き抱えて戻ろうとするワーチャンをマルが必死にとめて、二人仲良く戻っていった。
 さっき、マルの紫目の色がなんか、一瞬、いや窓の外が紫がかった夕方だったからか……?
 まあ、いいか。
 俺もメイチャンから手を差し出されて掴むとその場で抱きしめられる。

「わ、メイチャン?!」
「ケイスケ、お前がこれから先どんな決断をしても……俺はお前を離さないし、俺のもとを離れる事は──「しない。そんな事絶対にしないから。俺はメイチャンと、皆の所で絶対過ごすし!」ふ、だな。じゃ、帰ろう」
「うんっ!」

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