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199 8月行事──【夏季特別講習】フェーズ4

199 8月行事──【夏季特別講習】フェーズ4

 混乱冷めやらぬ、数日後にはもう【フェーズ4:神殺しの実戦訓練】に入る。

【校庭にて】
 生徒達の中には気持ちが追いついてない子達が特訓を休もうとしたにも関わらず“全員が”ちゃんと集まる。

 
「お前らは《ヴァル級──上級魔法》はもう使えると聞く、合ってるか?」
「「えっと、……」」
「まずは、そこから、か。」

 ヴォン先輩はカッチャンを呼び出して現在の【中等部生徒達の戦力】について認識を照らし合わせる。

 ヴァル級自体は使えるが、うまく使えてるか、咄嗟の判断で使用できるかと問われればまだ経験不足というのは7月での【野営訓練】でそういう危機的場面があった。

 モチくんとメレくんが出す《精霊王召喚》でモブ生徒達にスパーリングをする事になった。
 去年の【臨海学校】でのイツメン達の訓練と似たような事をしたみたいだね。
 
 モブ生徒達はランダムに振り分けられる仲間と共に《ヴァル級魔法》をどのタイミングでも使いこなす事が出来るようになってた。
 最初は訓練に自信が無い者も、技が使えるようになると自信がついてきて表情が明るくなるね。

 


「ふ、やっと最低限戦う覚悟と意志を持ったか。女神セリァナラは、愛を糧に心を支配する。ならば、お前達が学ぶべきは『絶対的な自我』と『支配を拒絶する殺意』だ。……さあ、武器を手に取れ。再来年の災厄が来る前に、神を殺す術を叩き込んでやる!」
「「は、はいっ!!」」

 ヴォン先輩の言葉でみんなやる気、そして《エル級魔法》が習得出来るかもと思うワクワク感に元気な返事を出す生徒達。
 皆それぞれ武器を構え直すと、精霊王達は後ろに下がりヴォン先輩が紫色の丸い水晶玉みたいな[魔導具]を持ちながら指を鳴らすと──

《模擬・女神セリァナラ》巨大なセリァナラが彼らの前に現れる、多分校舎ぐらいの大きさと偽物のソレなのにプレッシャーが来て前の方にいる子達は武器を落としてしまう。
「戦う意欲を削ぐ」それが女神特有の精神汚染を放つ。
 
 模擬女神の周囲には紫色の[隷属の霧]が漂う……モブ生徒たちは武器を落としたあとは膝をつきます。
「抗っても無駄だ、神相手に勝てっこない」「女神様に従えば楽になれる……」という甘い囁きが脳内に響く中、重圧で体が動かなくなる。

「どうした、その程度か。お前達が信じていた女神は、お前らをゴミのように使い捨てる存在だぞ。守りたいものがあると言いながら、恐怖に屈してその手を離すのか? どうなんだ? 答えろ!」

 ヴォン先輩はあえて皆を奮い立たせようと冷酷な言葉を投げかけ、生徒たちの「怒り」と「本能」を限界まで引き出そうとする。彼の思惑通り──1人、1人、ポツポツと自分が大切な物、大切な、ヒト達の名前を言いながら震える手で武器を持ち脚を叩いてそのプレッシャーに抗うような強い眼で前を向く──

 極限状態の中──数人の勇気ある者の素質がある生徒達がヴォン先輩の目の前まで歩いてきて彼を強い意志があるんだと眼で射る。

「ふ、……そうだ。絶望の底でなお、誰かのために牙を剥く。その『高潔な殺意』こそが、神を討つ勇者の資格だ」

 彼は指を鳴らすとさっきまで圧倒的なプレッシャーを放っていた《模擬・女神セリァナラ》の攻撃がピタリと止む。
 ビー玉ザイズぐらいの[古代魔導の結晶]を人数分取り出すと彼らの心臓の上から押し込む。

 今回の《エル級》授与はヴォン先輩と[古代魔導の結晶]があるから個人用のエル級技だけどそれ以外のときはモブ用のエル級になるみたいだね。
 [古代魔導の結晶]を入れられると心臓に急激な負荷がかかる。普通の人なら死ぬかもね、そんぐらいの濃い純粋なマナを自分の《属性》に染め上げられるのか、そして、体に馴染ませその技を己のものに出来るのか。
 

「かつて誰かを愛し、添い遂げた記憶がお前を強くする。その火を絶やすな。『熾天不滅の真実《エル・プロミネンス》』、受け取れ」
「はい、ありがとうございます……!」

──ミーちゃん良くやったね!
──はい、だってユーキ先輩に何かあったら俺……悲しくなっちゃいますから
──ん、僕もだよ。でも、僕もミーちゃんに何かあったら嫌だから──……

「そこ! イチャイチャするならテックに頼め」
「「は、はいっ!」いこう、ミーちゃん」

 テック先生の恋人専用の部屋に彼らは向かう。
[古代魔導の結晶]が身体に馴染むまで数時間は必要らしいからま、休憩もはいるだろうしね。
 ちなみに、ミーちゃんはケースとの関係は思い出したよ。断片的にね。見た目がマルで中身がケースだったあの頃、マルよりケースに惹かれてたんだね。でも今は目の前の太陽を愛する事を選んだ。彼なりの決断かもね。
 それをユーキが受け入れた。彼も一応、過去にケースと色々あったみたいだから。でも彼は《妨害》を受けててちゃんと思い出せてはないみたいだね。

「臆病であることは、守るべきものを知っている証だ。逃げたいという願いを、誰も寄せ付けぬ盾に変えろ。『天雷降臨の聖域《エル・サンダー・ヘヴン》』を授ける」
「ありがとうございます、でも僕はもう、逃げません……!」
「ああ。ささっと恋人と部屋に行け」
「は、はい!」

 神の精神支配を弾き飛ばす《浄化の結界》が展開出来るようになった。 彼は喜んでメメちゃんの所に向かうと彼はまだ本調子じゃないミラくんを労りながら部屋に向かっていった。

「世界を疑い、自分の闇を愛する者よ。その妄想を真実にする力を与えよう。『虚無と黎明の魔銃《エル・カオス・バスター》』を使いこなしてみせろ」
「我が命に代えても……師を守って見せます」
「っ、バカ! ソムが居なければ我は成り立たない……! そう俺を変えたのはお前だろッ」
「ふ、カカッハ師よ、桃源郷へ行きましょう」
「ふ、弟子よ! ついて来い! ハーハッハッハ!」

 楽しそうでよかったね、あの2人。
 彼の魔銃に女神の権能を相殺する「反物質の弾丸」が装填出来るようになったらしい。強いなー。




 あー、眼鏡君。彼の所は長くなっちゃうんだよね。ま、良いか。

《模擬・女神セリァナラ》で誰もが諦めていた時──本物じゃない模擬専用の筈なのに、カレーくんを《運命の改竄》に巻き込み囚われそうになった時──彼は落ちてた筆杖を握りしめ──……

『……フ、フヒヒ……。女神様、それは『地雷』でござるよ。某の脳内フォルダにあるカレー殿は、そんな悲しい顔をしない……。その表情、作画崩壊も甚だしい! 解釈違いは、万死に値するでござるぅぅ!!』

 その瞬間、彼が戦ってた場所の周囲に舞っていた紙片が、白銀の輝きを放つ[聖紙]へと変質。草の繊維が神の魔力を吸い込み、世界そのものを《キャンバス》へと書き換えようとしてた。

『なかなか……面白い。己の『妄想好き』を、世界の【理】よりも優先するか。その偏執的な愛、神を殺す毒となるだろう。『エル・創世の黙示録《エル・クリエイターズ・ジェネシス》』その筆に宿してみせろ!』

 つーことで、そのまま授かり休憩に入るところだったんだけど──彼ら、ヴォン先輩と眼鏡君のテンションが爆上がりしちゃってねー……他の生徒達は見学って事で横に行ってもらって、エキシビション……技術披露ってやつ。
 
 ヴォン先輩はそのままカレーくんに囚われの姫役をしてもらい、それを知らない眼鏡君が今の全力を出しエル級を使う──って流れ。


 眼鏡君の壮大なマナが、空中に掲げた巨大な筆先に集まり一閃する様に《模擬・女神セリァナラ》へ振り落とされる。

「全宇宙の神絵師よ、某に力を! 〆切絶望の彼方、真っ白なキャンバスに真実を刻むでござる! 女神の台本はここで打ち切り、これからは某の連載推し活の始まりでござるよぉ!! 描き出せ、『エル・創世の黙示録《エル・クリエイターズ・ジェネシス》』!! 尊死ィィ!!」

 周囲の空間を巨大な「原稿用紙」として定義。女神の攻撃を「入稿ミス」として消去し、味方のステータスを「神設定」として上書き・超強化する、概念干渉型魔法。ちょっと何言ってんのか分かんないけどチート級だよね。


 模擬女神を打ち破った後、肩で息をする眼鏡君に、カレーくんが駆け寄ります。

「貴方、すごい、今の魔法……! まるで世界が描き変わったみたい。……私を助けてくれて、ありがとう」
「フヒヒ……カレー殿ぉ……。某の愛が、女神のクソ運営に勝った瞬間の『神回』でござった。ああっ、今の感謝のポーズ、光の当たり具合が最高……! 帰ったら、今のシーンを同人誌の表紙にするでござるよ。カレー殿、もう一度今の角度で微笑んでもらえぬか?」
「もう! 戦いが終わった途端にそれなんだから……! でも……そんな貴方だから、信じられるよ」

 その後も眼鏡君がテンション上がっちゃって遠くで見てたニンニン達が呆れてたよ。でも、良いカップルだな、って思ったんじゃないかな。
 
 その後は数人の生徒達がもらったあと数日間休憩──……とと、俺はケースの方見に行かなきゃ行けないんだった。


 時間は《模擬・女神セリァナラ》まで戻るよ。
 ケースはケースで自分のエル級の発動を真の条件で発動させないといけない。
 けど、それはマルが彼に昔の事を思い出したくなくて隠してた部分でもあった。
 それでもちょいちょいケースの記憶の蓋が開きはじめて授業で[マネヌーン]を見たときに泣いたのも、【臨海学校】で精霊神の欠損をみてフラッシュバックしたのも、マルが全て今のピュア圭介のままにしときたい気持ちは分かるけど、それじゃ駄目なんだと分かってる、ね。

『……どうした、ケース。お前の光が濁っているぞ。前世の自分が恐ろしいか? 誰かを弄んだ『傲慢な圭介』が自分の中にいることが、そんなに許せないか?』

((……怖いよ。俺の中には、あんなに最低な奴がいたんだ。そんな俺が、みんなを『守る』なんて、おこがましいんじゃないか?))

 マルが皆に見せた映像は7回目の頃だけだったけど、ケースはそれ以外も見たというか、蓋が開いちゃったんだよね。
《前世の断片》がフラッシュバックしたんだ。
 7回目のセリァナラの様に、相手の気持ちなんか考えずに好き放題する己に。
 
 悩むケースにヴォン先輩はため息をつきながら渾身の一撃をケースに与える。
 その瞬間──ケースの瞳にこれまでにない鋭い光が宿ります。彼は逃げるのをやめ、真っ向からヴォンの魔力を受け止める。

『……そうだ。俺は最低だった。誰かを傷つけて、結局自分も守れなかった。……でも、だからこそ、誰よりも知ってるんだ。『駒にされる痛み』も、『誰かを踏みにじる醜さ』も!』
『過去の俺は変えられない。でも、今の俺は、その痛みを知っている『ケース』だ! 女神がみんなを駒にするなら、僕はその盤面ごと叩き割る。……過去の罪も、前世の罰も、全部俺が背負って、誰も泣かせない世界を俺、いや、俺達が作るんだ!!』


 ケースの全身から、これまでの「温かいだけの光」ではない、すべてを白日の下に晒すような「峻烈な極光」が溢れ出し──《エル級魔法》の顕現。あ、あれ……?

『聖天浄化の黎明《エル・オーロラ・レザレクション》』
 女神の「支配の糸」を強制的に断ち切り、味方の精神状態を正常な状態へ回帰・強化させる、絶対的なメタ能力。
 ケースの背後に、天使の羽を模した巨大な光の輪が出現。それは「過去を否定する光」ではなく、「過去すらも包み込んで未来を照らす」再生の光でした……ってあれー? あれれー?

 聴いてた話と違うんだけどー……まぁ、これも彼らが生きてる、って事でいいか。
 それに主人公だしね!




 後日再び体調バッチシな全生徒達は【校庭】に集まっていた。
 ヴォン先輩が《模擬・女神セリァナラ》を出し、《エル級魔法》を授かった彼らはソレに対峙した。


 前よりも強くなったプレッシャーの中、《光魔法》持ちや《浄化の祝福》を持ってる生徒達が抵抗し奮闘する。
 仲間の力を信じ隣のヒトと戦う為に各々武器を持ち、強力な《補助魔法》がかかると《模擬・女神セリァナラ》のプレッシャーはさっきまでの体が押しつぶされそうだった痛み、苦しみ、楽になりたいなどの《状態異常》が消える。

「ユーキくんを、みんなを守る! 燃え上がれ、俺の誓い……!《エル・プロミネンス》!!」 

 ミーちゃんの剣から放たれた炎は、これまでの《火炎魔法》とは異なり、精神支配の霧を焼き払いながら、模擬女神の《魔力バリア》を溶解させます。敵だけを襲う高熱の空気が空間を歪ませる。

「大切な人は、僕が隠し守り通!《エル・サンダー・ヘヴン》ッ!」

 杖から光雷がほとばしり、模擬女神の《サーチ能力》を完全に遮断する神聖なドームを形成。その中で、モブ生徒たちは女神の精神攻撃から解放され、安堵の息を漏らす。

「カカッハ師のために、この世界を書き換える!《エル・カオス・バスター》!!!!」 

 魔銃から放たれた光と闇の螺旋弾は、模擬女神の放つ「支配の波動」を吸い込み、逆にそれを不安定なエネルギーとして爆散させます。


「……そんな、見え透いた嘘の術式で、俺達の仲間を縛るな!」

 ゲッちゃんパイセンも虚空に指を走らせると、模擬女神の強力な《支配結界》に「バグ」が発生。敵の術式を物理的に書き換え、無効化する『魔導史の修正者』としての能力才能が開花。

 「女神の『声』がうるさいチュ! もっと楽しい音楽を聴くチュよ!」

 シンバルを鳴らした瞬間、強力な《ジャミング》を伴う《雷撃》が発生。女神が発する洗脳の音波を、物理的な騒音で打ち消すという、音楽隊をやってたからこその『閃光の不協和音』を開花させる。

 他にも数人がエル級以外のステータス能力開花の方で特殊能力を手に入れたね。


「この『臭い』、逃さないし許さないわん!」 

 講堂でヴォン先輩に質問してたわんこも“特定”の臭いに対して嗅覚が発達したみたいだね。

──みんな! 俺達に続けー!
──はい! リィちゃん先輩、イデチャン先輩!!!!

──くそっ、これが駒にされる痛みか!
──二度と、好き勝手させない!

──俺達はただの駒じゃない、俺の名前はデュグルジア・ロンデォイ! 
──私はジュルリダ・ロ・ピナーット!
──僕はユユユ・ネッロット!!

 おお、モブ達が名乗りを上げながら各々の力を出していく──これは素晴らしい光景だ。
『あの人』達も喜んでそうだ。




 それなりに苦戦もしつつ、開花した者は俺が驚くほど多い。《模擬女神の影》が悲鳴のような音を上げてひび割れ、最後は光の粒子となって霧散する。
 本物の神相手ならどうなるのだろうか、と思う生徒は少なくないが──

「……結構だ。その怒りと覚悟を忘れなければ、お前たちはもはや、神の支配を打ち破る『群狼』だ。……合格だ、お前たち。夏休みを終え、9月からの新学期……君たちはもう、ただの生徒ではないこれからはもっと訓練が激しくなる。各々鍛錬しろ、自分達の未来の為に、な」


 さて、俺もさすがに帰るわ。
 録画! お肉! じゃあの!




──……・・・


 目を開けると【白い空間】だった。
 メイチャンと部屋に戻って充電をしようとしてたんだけど、【保健室】……いや、何かが変だ。

『この8回目でキミに会うつもりは無かったんだけどな』

 ふと、いつの間にか目の前には黒髪黒目の稀人らしき少年が居た。多分俺と同じ歳くらいの。

 アンタ誰──って声を出そうとしたら出なくて焦る。

『あー。わかってるからそういうのはいいや。で、キミ全部思い出した? それとも一部分……?』

 目の前の少年の言いたい事が分からない──わけじゃない。過去に俺はこの『少年』と会ってる、いや違う、

『悩んでる所悪いけど早くしてくれない?』
(丸々じゃないけど、思い出した。俺自身、マルの事、ヴォン先輩を愛してた事、メイチャンとの関係、ユーキくんとは違うユウキ、ミーちゃん──……それに)
『うん、ちゃんと思い出したか。困ったな、あー、めっちゃ困る。『俺達』の“予定”ではまだ思い出さなかったのに。《未来予知》なぁ、うー……ん』

 目の前の人が凄い悩む声を出す。どっかで聴こえたことがあるような。

『とりあえず、記憶リセットしてピュアピュアな圭介にしていい?』
「嫌だ」
『アラ、ハッキリと。そっか、嫌か。』

 声が出なかったのに、俺もびっくりするぐらいの声が出た。目の前の人も目が点になったあと、良い笑顔で笑った。

『うんうん、これはこれで面白いね。特異点の才能──いやこの【世界】そのものが、か? 何にせよ、これはこれで』
『まぁ、またその時でいいや。ダメだったら強制力使えばいいし。じゃあね』


──え、待って! と手を伸ばしたのに体はドンドン後ろへ、気づいたら俺は部屋でメイチャンに抱かれて添い寝してる所だった。

 ゆ、夢……? 夢にしては、いや……ふと、寝てるメイチャンを見る。
 たしか、3回目の《やり直し》では俺達の関係は酷かったな。俺も、メイチャンもいや、俺が皆を壊してた。

・・・後でマルに会いに行かなきゃ──……

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