人生フリーフォールの僕がユニークスキル【 大落下 】で逆に急上昇してしまった件~世のため人のために戦ってたら知らぬ間に最強になってました~

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第3章 リンデン王国編

第134話 そんなもの

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「せ、聖……属性?」

「いわゆるポーションや回復術ヒールなどに代表される魔力の属称です。しかし聖属性は、我々竜族やモンスターに類する者たちにとって最も遠い属性です。蜂どもの巣から得られる蜜に、間違っても付与されるものではございません」


 インフが持つ瓶を覗き込むも、僕にはその片鱗すら窺えず、匂いを嗅いでも、味を確かめてみても、サッパリ違いは感じられない。


「それにこの蜜、どこか優しくて懐かしい香りがいたします。…………あれ?」


 そう言うとインフは僕の顔をまじまじと見つめながら、何故か恥ずかしそうにはにかんだ。
 そして何かを思い出すかのように僕の手を取った。


「そうです主様。わらわと初めてお会いしたあの時でございます!」

「初めてって言うと、…………僕が空から降ってきた、あの時……?」

「そうでございます! あの時、わらわを打ち倒した主様は、このように無様で情けのないわらわのことを、慈悲深く愛情をもって助けてくださいましたよね? この蜜からは、あの時と同じ匂いがするのです!」


 僕は自分の記憶を辿り、インフと初めて会った時のことを思い出してみた。

 誰かの手によって天高くから落とされた僕は、インフの住んでいたお城に意図せず接近してしまい、神竜である彼女自身が僕を迎え撃つ形となった。結果、僕は『大落下』の効果によって彼女をノックアウトしてしまい、彼女は自分自身を打ち破った僕のことを主と認め(?)、主従関係となってしまった。
 その際、『落下による衝撃+彼女自身が放った最強魔法』を何倍もの威力にして跳ね返してしまい、瀕死のダメージを負った彼女は、何も知らない僕の前で意識を失い倒れていた。ダメージは僕の目から見ても明らかで、そこで死んでいてもなんらおかしくはなかった。けど……


「そうだよ、確かにあの時どうしてインフは助かったんだろう。僕は回復魔法どころか、ポーションすら持ってなかったのに……」


 その後のことは思い出すのも苦痛ばかりで、完全回復して絶好調になったインフに飛び回られ、酷い目にあったことを覚えている。だけど思い返せば、あれっておかしくないか?
 どうしてインフは元気になったんだ!?

 そんな僕を尻目に、どこか愛おしいことでも思い出すかのように、遠い目をしながら彼女は言った。


「…………涙」

「え……?」

「あの時、主様はわらわのために涙を流してくださいました。このような情けないわらわ如きのために、主様は御慈悲の涙をわらわにくださったのです」

「涙って、そんな、僕の涙なんか」


 彼女は僕の頬にふれながら、「あれは確かに主様の慈悲心だったことにほかなりません」と付け加え、そこになんらかの理由があるのではと伝えてくれた。しかしさすがにそんな彼女の私感を鵜呑みにするわけにいかず首を振る。それでも諦めないインフは、パチンと指を鳴らし、僕に軽い催眠魔法をかけて意図的に欠伸を誘発した。


「ちょ、インフ、なにするのさ!? って、ふぁ~~あ」


 思わずマヌケ顔で欠伸をしてしまう。インフは僕の目に滲んだ涙を拭いながら、それを今回の蜜に含ませた。しかしどうやら変化はみられない。


「ほら、そんなわけないでしょ。僕の涙なんかにそんな凄い効果があるなら誰も苦労しないよ」


 しかし頬をぷぅっと膨らませ、インフはそれでも諦めず「主様、あの力を使ってくださいませ!」と迫った。


「あの力って?」

「何人たりとも寄せ付けぬ、あのお力でございます。お早く!」


 僕は言われるまま魔力防御低下スピリット ドレインを使用し、『大落下』を発動させた。しかしこの状態になると全ての状態異常が発生しなくなるため、インフの催眠魔法が効かなくなってしまった。僕は仕方なく半ば強制的に欠伸をひりだし、強引に涙をひり出した。


「出ましたわ! こちらを蜜に組み合わせれば……」


 すると驚くことに、先程と異なりほんの微かに蜜の瓶が輝いた。そんなバカなと目を丸くしている僕を尻目に、蜜を一滴垂らしたインフは、ペロリとそれを味見した。


「あ、あ、あぁぁぁあん、んふぅぅんんん……うんッあ、ぁぁん❤」


 なんでしょう……
 彼女が恍惚とした表情で余韻に浸っています
 なんだか少しイヤラしい気分になってしまうのですが……


「これ、これです、これでございます! 恐ろしいほどに甘美で芳醇な香りがわらわのお口の中に広がって、これはもう言葉にすることができません! 嗚呼、幸せですわ、もう一口♪」


 結局小瓶の中身を全て平らげ、我に返って口をハンカチで拭き取ったインフは、恥ずかしそうに俯きながら、「間違いございません」と確信を持って断言した。


「間違いなく全ての理由はココにございます。これだけ凝縮した魔力の結晶を、わらわはこれまで一度たりとも口にしたことがございません!」

「え? ココ? ココって『僕の涙』ってこと? そんなものに、そんな効果が?」

「間違いございません。きっとこれが今回の原因ですわ。そうに決まっています!」


 うんうんと必死に頷く彼女が、とても嬉しそうに僕を見つめている。
 ですがどうにも腑に落ちず、う~んと口を尖らせて反論する。


「悪いけど、それは違うんじゃないかなぁ。だってさ、僕が蜜を持ち帰ったとき、涙なんか流した覚えがないし、そもそもわざわざ入れたりしないよ」


 ふふふんと何かピンときた様子のインフは、僕に『大落下』を発動させたまま町を何周かランニングしてくださいと依頼した。突然走らされることになった僕は、肩にインフを座らせたまま、お尻を叩かれながら必死の形相で町の外周を走り回った。


「ダハァ! ハァハァハァ、こ、これでいいの……?」

「ハイッ、大丈夫です!」


 そう言うと、彼女は僕の頬に伝った汗の一雫を魔力で分離させ、露店で購入した他国産の蜜にそれを沈めてみせた。すると蜜は僅かな光を放ち、小さな変化をみせた。


「やっぱりそうですわ。原因は、『主様の汗』です!」

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