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第4章 インフェ・グレーゴル・ドルード12世編
第202話 平穏
しおりを挟むドキドキしつつ、いざとなったらドラゴンの彼を起こし飛んでもらうしかないと落下しながら彼の背中であぐらをかいていると、不意にズキンと頭痛に襲われた。『大落下』を掻い潜りダメージを受けたのかと思いきや、直後何者かが僕の脳内に語りかけてきた。
『我が同胞を随分といじめてくれたものだ、ヒトの子よ――』
痛みの理由はこれかと目を擦りながらこめかみを押さえた僕は、「誰?」と返事してみた。すると不敵に笑った誰かは、我のことを忘れたかと嘲るように言った。
『もしかして……、ヴェルニ!?』
『他に誰がいようぞ。妙なヒューマンが単騎で里へ踏み込んできたと連絡を受けたかと思えば、迎えにやった者たちを散々落としてくれよって……』
声の主は、真竜国からほど近いペンラム国の岩窟山で、インフから名を授かったスカイドラゴンのヴェルニだった。どうやらその後、この地を統べる領主と成り代わったようで、これ以上の抵抗はやめてほしいと談判された。
『そんな、僕は何も……』
『貴様の存在は、我ら竜族にとって、そこに立つだけで不明瞭なものであることを理解すべきだろう。我らが主を知る者ならば尚更だ』
どうやら実際のインフを知る者からすると、僕の身体から漂うインフの残り香(※そんなのあるの?)に対する影響が大きいらしく、僕は彼から軽率な行動を取らぬよう念を押された。しかしそんなこと言われましても、僕ら普通の人にそんなのわからないんですけど!?
『まずは我が領地まで降りて参られるが良い。近くに待機しておる貴様の同行者らも含めてな』
どうやらヴェルニは僕ら一行が後方で待機していることをご存知らしく、メガリーストの王を連れ、穴の中に降りてこいと許可をしてくれた。ありがとうと礼を言った僕は、ついでにもう一つ、ヴェルニにお願いした。
『ヴェルニさん、申し訳ないんだけど、一つお願いしてもいいかな……?』
『なんだ、……不可能なことでなければ聞くだけ聞いてやろう』
『これからやってくる僕らの仲間には、僕がキミやインフと知り合いだっていうことを伏せておいてほしいんだ』
『……何故だ? 我がそれを黙っている理由などなかろう』
『うん、まぁそうなんだけどね……。実は僕ら、今回強引にメガリースト側の使節団の一員にされちゃった経緯があって、今こうして王様と一緒に王都へ向かっているんだ。でもメガリーストの偉い人には僕らの関係性を話してなくて……。もしそれを知られるとマズいことになっちゃうんだ』
『……ふん、まぁ詳しくは知らぬが、ひとまず黙っておいてやる。が……、少しでも軽率な行動を取れば、そのときは容赦するまいて』
『わかった、ありがとう。あとで僕らの仲間を紹介するよ!』
こうしてどうにか無事に地上へ降りた僕は、離れた場所に待機していた王たち一行のもとへ戻り、ミグネフに事情を伝えた。にわかに信じがたいと難色を示したミグネフだったが、ならばまずは自分だけがと手を挙げたミグネフを連れ、僕らだけが先に穴へと降りることになった。
侵入者を警戒し厳戒態勢のドラゴンたちを尻目に、少しばかり挙動不審にその横を通り過ぎた僕らは、切り立った崖を下り、谷底の袖にぽっかりと掘られた横穴を覗きながら、申し訳無さそうに声をかけた。
「あの~……、代表者を連れてまいりました……。って、聞こえてるのかな?」
巨大な穴の縁から声をかけた僕に応答し、薄暗い横穴の中から人化した何者かが姿を見せた。武器を構えたミグネフを止めた僕は、「僕らに敵対する意思はありません」と彼に告げた。
『我ガ主ヨリ窺ッテイル。我ガ後ニ続ケ』
たどたどしい言葉で答えてくれたドラゴンは、自分のことをダナンと名乗り、僕ら二人を先導してくれた。どうやらそのドラゴンは、先程最高到達点まで僕に付き合ってくれた彼だったらしく、少しばかり疲れた様子で谷の底に掘られた横穴を案内してくれた。
「あの……、ここは?」
『詳シイ話ハ主ヨリキケ』
僕が何を聞いてもこの調子の彼は、どうやら僕らと会話をする気はないらしく、仕方なく招かれるまま穴の奥へ奥へと進んだ。しばらくすると、今度は広く開かれた空間に行き当たり、奥に玉座のようなものが備えられた一角に招待された。
「あの、ええと……?」
困惑する僕を無視し、さっさと行けと促したドラゴンの彼は、僕ら二人を部屋に残し、自分は部屋の隅に待機し片膝付けて跪いた。すると頷いた玉座の何者かが徐ろに立ち上がり、ミグネフへと話しかけた。
『我らが主への勅使と窺った。少々手荒な歓迎となり申し訳ない。何分急なことであり非礼を詫びよう』
「いえ、こうして我らを受け入れてくださっただけで感謝の言葉もありませぬ。予定をしておったバレッタの町での補給が間に合わず、こうして我らのために町を開放いただいたこと感謝いたす」
『貴殿らが我ら先代の王より続く盟約によるものとは存じている。我らが王や、その方針に異を唱える者ことなどあるはずもなく。存分にお寛ぎなされよ。ただ――』
妙な間が一瞬開き、ヴェルニが僕に目配せをした。何事だとミグネフが勘繰る中、肝心の僕も何のことだかサッパリわからず、「あの……、どうかしましたか?」と聞き返してしまった。
「……残念ながら、我らにも及ばぬ点が幾つか残っている。それを明確にせぬかぎり、我らに平穏は訪れぬと」
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