逃げ出した先は異世界!二度目の人生は愛と平穏を望む

絆結

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23.人を見る目。人の見た目。

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ジェイクが荷物を持って宿へ来ると、ケネス隊長はすぐに引き上げていった。

食事をとり、少し話をしようと、ジェイクと2人談話室のソファに腰掛けた。
何とか気持ちを落ち着けようとするけれど、明日からのことを考えるとどうしようもなく不安になる。
「…止めることができなくてすまないルイーズ」

ジェイクが本当に申し訳なさそうに言葉をかけてくれる。
その言葉に私はふるふると小さく頭を振った。
「ジェイクは何も悪くないわ」

言いながら、今日何度目かの堂々巡りに入ってしまう。

一体、どこを間違えたのだろう。
職業紹介所でリアム様に声をかけるべきでなかったのか。
リアム様にイアンのことを伝えるべきでなかったのか。
そもそもに、に見えたものを見ぬふりをするべきだったのか。





明日から私はモーティマー家で、人事関連のリアム様の補佐として臨時に雇われる。

私のこののことも公にして。
というか、更に話を盛って。

これから近々きんきんに、王太子殿下付きとして王宮に召しかかえられる侍女、侍従などをモーティマー家で選定し、まずはモーティマー家で様子見をする。
その為の"選定役"として雇い入れるという設定だ。

つまりは、碌でもないことを考える者を炙り出すための囮。

基本的に、屋敷ではバレないように離れた位置からケネス隊長とユージン隊長が交代で警護してくださる。
屋敷を出てからの警護はジェイク。
これは私のプライベートに配慮してと、ジェイクがまだ入隊したてで、日中はなるべく演習に参加させたいとの意向もあっての決定らしい。


脚の上で両手を組み合わせてきゅっと握る。
ここへ来る前に、従姉妹の差しがねで襲われそうになったことを思い出す。

従姉妹の厭な表情で気が付いて、逃げ出した私を従姉妹と男2人で追いかけてくる、あの時の顔が思い出されてぶるっと身震いしてしまう。

ずっと向けられてきた敵意と害意。


ふいに握り締められた手に大きな手が重ねられる。
押し黙ってしまった私の前に、いつの間にか移動してきたジェイクがひざまずいている。

「大丈夫だルイーズ。ユージン隊長もケネス隊長も絶対にお前を護ってくれる。俺も、傍にいられる限り必ずお前を護る」
真っ直ぐに私を見つめ言うジェイクに私は小さく頷く。

正直、もの凄く怖い。
あの時襲われそうになった時のように、またそんな状況に遭ったら…。
けれど、あの時にはこんなふうに護ってくれるという人は誰もいなかった。
今は、ユージン隊長、ケネス隊長、そしてジェイクが護ってくれる。
そう信じて自分を奮い立たせるしかない──。





慣れないベッドで、不安の中、あまり眠れなかった私はいつも家で目覚めるより少し早く目が覚めてしまった。

仕方なしに、身支度でもしようかと部屋に備え付けられたクローゼットを開ける。
昨日、エマが持ってきた荷物を片付けてくれていた。
服は皺になる前にとクローゼットに整理してくれているはずだ。

「……」

開けたクローゼットを無言で閉める。
寝ぼけただろうか?
もう一度開けてみる。

「…何これ?」

私が持ってきた服は勿論整理してかけられているけれど、それよりもクローゼットの大半を占めるように、随分と上質の服がずらりと並べられている。

私が呆然とクローゼットを眺めていると、コンコンとノックの音が響き、扉の向こうから声がかけられた。
「ルイーズ様。おはようございます」
起きていても、いなくても、なのだろう声をかけ、エマが部屋へ入ってくる。
そして、クローゼットの前に立ち尽くす私を見つけるとエマは立ち止まり、再度丁寧なお辞儀と共に挨拶をしてくれる。

「ルイーズ様おはようございます。もう起きていらしたのですね」
「…あの…これ…」

エマの丁寧さとは非対称に、私は挨拶も忘れて、エマに顔だけを向けて言葉を零す。
「はい。リアム様より預かってまいりました。本日よりこちらのお召し物からお好きなものを選んで着ていただくようにと」
なんの問題もないように、サラッと返される。

「いえ、私、こんな上等な服」
「着ていただかないと困ります。どうぞお好きなものをお選びください」

言いかけた私の言葉に被せるようにエマが言う。
たぶん私の返答を想定して、リアム様から何か言われてるのだろう。
ここで私が頑なに断っても、エマの立場が悪くなるだけかと考え、私は諦めて服に手をかける。
順に服を確認していくけれど、結構といった感じの服が多くて困る。

私は中でも地味な色合いの、首まで隠れるタイプのワンピースを選らび「これにするわ」とため息を吐いた。
「かしこまりました。では──」
そう言って、エマは服に合わせて靴や小物を用意しだす。
それを横目に見ながら服を着替えると、着替え終わったのを確認して、エマが私の肩をガシッと掴む。
「ではルイーズ様。次は髪とお化粧を。こちらにおかけになってください」

私より少し年上かな?とは思うが、それでもまだ十分に若いと言えるエマは、その年に似合わずしっかりしていて、有無を言わせぬ迫力がある。
きつね色のボブヘアで、少しキツめ印象があるけれど、何か言われたら思わず「ハイッ」と返事をしてしまいそうな、できるお姉さんという感じで好感がもてる。

私を鏡台の前に座らせると、エマは慣れた手つきで髪を結いあげていく。
編み込みアップスタイルに纏められた髪に、先ほど用意した髪飾りをつけようとする。
「あ、あの。髪飾りはこちらを…」
用意した髪飾りをつけようとするエマに、私は慌てて声をかけ、ベッドの横のサイドテーブルから髪飾りを取り手渡す。

私が髪飾りを差し出すと、エマはクスリと笑って「承知いたしました」と言うと、素直にその髪飾りをつけてくれた。
そして背後から「お似合いですよ」と笑みを含んだ声がかけられた。

どういう曰くの物かなんて知るはずもないエマだけれど、なんだか見透かされたようで気恥ずかしくなる。
思わず俯こうとした顔を、エマが顎を持って上げさせる。

「さ。次はお化粧ですよ。真っ直ぐ前を向いていてくださいね」

そう言うと、エマは手早く化粧を施していく。
肌の色と見合わせ、ファンデーションを選び、アイラインを引き、アイシャドウを塗り、眉を整える。
前世でも化粧なんてほとんどしたことがない。
こちらに来てからは、ずっとまるっきりのスッピンだった。
どんどんと化粧を施されていく顔を鏡で眺めならが、自分で驚く。
随分と顔の印象が違う。
勿論、髪型が違うせいもあるけれど、いつもより大人びた、少しキツめの美人といった印象に仕上がっていく。

最後に、薄めの口紅をつけると、エマは満足げに頷いた。
「素敵です。リアム様もお気に召されると思います」
そう言うと、椅子を引き、立ち上がる私にお辞儀する。
「朝食を済まされましたら、一度紅のお直しをさせていただきます。その後はモーティマー邸へご一緒させていただきます」
よろしくお願いします。と言うと、エマはテキパキと道具を片付け部屋を出て行った。

残された私は、もう一度姿見で全身を確認する。
そこにはこちらに来てから見たこともない姿の私が立っていた。
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