ウィルビウス〜元勇者パーティに拾われて裏ボス兼勇者に至った私と、元凶である悪役令嬢の元彼女を含めた絶対破壊の交響曲!?

奈歩梨

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幼少期編

幼少期編〜エピローグ〜

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「魔・気・闘・具・能の五つの実技とそれ等の知識を試す筆記テストを受けろ、ですか?」

「そうだ、貴様達がどう言おうとこれは大魔王としての勅命である、さっさとやれ」

あのどう考えても呪われてるとしか思えない神剣を私が思い描いた形状に作り替えた翌日、ファラ陛下とイレーナ猊下、アレクシア陛下、そして魔法士協会の門外顧問である母上の4人が仲良くお茶を啜る部屋へと招かれた。
 この世界の四首脳がイレーナ猊下の保有する屋敷とはいえ各国のトップが一所に集まるのは危険では無いのだろうか?…等と思う暇もなくファラ殿下にエリスと一緒に首根っこを掴まれ椅子に座らされる。


「すまないね、ユウキ君、エリスちゃん。私やイレーナも君達の知識も戦闘力の程も君達の御両親から聞いているから何ら訝しむ処は無いのだが…君達には5年後に魔法騎士養成学校に入学して貰うつもりなんだ」


「……魔法騎士養成学校…?」

何処かで聞いた様な気もする単語に小首を傾げる

「うふふ…魔法騎士養成学校とは三大国家の中でも選りすぐりの才能を持つ次代を担う子供達が集められる養成機関ですわ?その性質上、ギルド商会とも提携している軍隊としての側面もありますが基本的には15歳から入学出来るんですの」

 イレーナ猊下は分かり易く説明してくれるがそれだと計算が合わない。


「なるほど、ですがエリス姉さんは私より3歳歳上です、私が15歳になる頃には18歳ですが…」

「うん、尤もな意見だ。だけどそれにもちゃんと意味はあるんだ。……居るんだろう?アジ・ダハーカ」

 アレクシア陛下が私とエリスの方をじっと見つめ此処には居ないはずの最早見慣れた竜神の名を紡ぐとくつくつと喉を鳴らしながらエリスの影から見覚えのある羽蜥蜴が姿を現す。


「羽蜥蜴ではない、アジ・ダハーカだ。…さて、元勇者よ何用か?まさか役目を果たして尚我と相見えるとは言うまい?」

「相変わらずな振る舞いに安心したよ。…そうだね、貴公は彼に話してはいないのかい?彼(ユウキ)なんだろう?貴公の跡目は、ソフィアは頑なに話してはくれないが逆にそれが答えだとも思ってね…貴公の口から聞きたくてね」

 母上に視線を一度向け、再度アジ・ダハーカを見遣るアレクシア陛下、元勇者という事もあり洞察力が中々に鋭い。

 だが…役目…か、確かに私はアジ・ダハーカの後継者ではあるらしい。あくまで前世の世界での認識レベルだが今の私は帝王学や経済学といったものを有していない裏ボスのような存在だとは思う。魔法を使わずとも魔物や動物の声が理解出来る様になったような気がするからだ。

 それは彼(アジ・ダハーカ)も理解しているのか首を振り否定する。


「…此奴には未だ早い、永らく空席であった我の跡目を継がせるのは」

 跡目を継ぐ、それ即ち嘗て魔竜軍と呼ばれた軍を率いる事と同義である。…何より、彼の竜神は魔族領を二分割する程の力と権力を持つ竜神の中でもとりわけ強い力と知性を持ち合わせていた権力者でもある、彼の人となり…基(もとい)、竜となりを知っている身としては荷が勝ち過ぎる。


「確かに年齢的にはね、だから彼には5年間領地を治める為に必要な知識を学んで貰うのはどうだろう?という結論に到った訳さ、勿論、貴公の宿主であるエリスには確認はとってあるが」

 !?
 寝耳に水とは正にこの事だった、何時の間に確認を……式の最中か?それとも私が寝込んでいる間か!?


「待ってください、初耳ですよ?!」


 問わずにはいられなかった、私独りなら未だ良い…けど、エリスは関係ないだろうという想いから言葉を紡ぐもそれを制するのは意外にもエリス自身であった。


「…エリス…ユーくんと一緒ならいい……まだ頼りないかもしれないけど…ユーくんを支えたいから…」

「……姉さん…」

 私を支えたいと明確に言葉にするエリス、過去(前世)にそう言った言葉を掛けた女性は居たが、この子が打算や奸計の類をそもそもしない事はこの10年間姉弟の様に育ってきた私が一番理解していた。

「……汝等がこの二人を全面的に支える、というのであれば我が反対する事は無い。
───だが、その約束を違えたその時は、今度こそ貴様の血筋をどの様な手段を使ってでも根絶やしにしてくれようぞ」

「……承った、貴公の執念深さと恨みは私の家系の不徳故に一番熟知しているからね、…この魂に誓おう」


 ふん、と鼻を鳴らしアレクシア陛下を…否、アレクシア陛下の血に流れる300年前の想い人を睨む竜神は再び船を漕ぐ。


『はいはいはーい!そういう事ならお兄さんにも言い分はありまーす!』


「「「「!?」」」」

 突如として腰に帯剣していた神剣から陽気とも軽薄とも言える声がこの場に居る全員に聞こえる様に響き渡ると母上、イレーナ猊下、アレクシア陛下、ファラ陛下が神剣に視線を向ける、私と魂の奥深い部分で繋がっているアジ・ダハーカは然もありなんとばかりに欠伸をしながらエリスの方に止まり船を漕いでいる…私とエリスの2人から魔力を少しずつ喰らっている為私が倒れている間は苦労を掛けたのでそれは気にしてはいない。


「…用意周到な奴め、あの時完全に滅した筈だがな、イレーナさん、壁を穢すが御容赦願いたい」


「あらあら…御手柔らかにね?」


『あっはっはっは!素敵かっこいいお兄さんの絶対予知の前ではファラたんのむ「ふんッ!」げはぁぁぁっ!?』


(え、えげつない…)


 声が響くや否やつかつかと詰め寄り鞘から双剣を引き抜くと左右で一本ずつ握り敢えて脆い部分である剣の平を壁に叩き付けている、然も中に宿っているであろうイリアスさんの魂に直接ダメージが向かう様に心と無属性の併せ魔法でもある呪術を使いながら何度も何度も……まぁ、元々返還するつもりだったし良いのだが。


『ま、まぁ落ち着いてくれたまえよ?過去の大戦で魔族もかなり減少傾向にあるしさ、ユウキくんにも魔族復興のお手伝いをして貰おうじゃないか?』

「貴様の言う事に信を置くと『それに、叔父さんとしてもファラたんは心配してたしね~』…私は貴様を叔父等とは思った試しは無いが…曙の勇者に何をさせる気だ?」


 ふむ、血縁関係があったのか。意外な事実に母上を見遣るが母上は肩を竦めている。……此処まで来ると逆にイリアスさんが私に何をさせようとしているのかも逆に興味が湧いてきたので事の成り行きを生暖かい目で見守る事にする。


『よくぞ聞いてくれたね~、まぁ、魔族にとって強い男の子種は喉から手が出る程欲しいものだから手当り次第にたね「完全に核を滅されるのと神剣ごと闇に葬られるのと何方が良い?」ぎゃああああッ!?た、たすけ……って!君(ユウキ)もなんでそんな汚物を見るような目で見ているの~ッ!?』


 いやぁ、だって私種馬じゃないですし。

 そもそも種族は関係無くこの世界の男性も女性も基本的には所謂性豪だ、仮に屈強なオークやゴブリンが100体以上の複数で女性に襲い掛かっても3時間後には全員乾涸びて絶命していた、なんていう話も過去には存在する為、私が知っているくっころ幻想(ファンタジー)なんて無かったんやと、幼心にカルチャーショックを受けたのを覚えている。


『諦めんなよおぉぉッ!?というか君!今でも充分やばいもんぶらさ「あらあら、私の息子に何か言ってるわ?このクズ男♡」ぬわあぁぁッ!?』

 この状態でも私が転生者である事を話さない元すっっごい悪こと、クズ男…基(もとい)イリアスさんは傷が出来る度に母上の時魔法で再生され、ファラ陛下に再び神剣越しにズタボロにされる。


 …そんなにやばいだろうか、私の〇〇〇。


 ふとアジ・ダハーカに視線をやると親指を立てサムズアップしている…その顔はとてもイイ顔をしていた。

 話すだけでこの場を或る意味では恐怖のズンドコ…じゃなかった、どん底に叩き落としたのは流石は元大魔王と言えるだろう。


「まぁまぁ…ですが、優秀な遺伝子を取り込みたいというのは解らなくはありませんわ。……ユウキさん?後で私の娘達とお逢いになってはくれませんか?」

「……ダメ…ユーくんはエリスの…」

 猊下は嫋やかな笑みを浮かべながら小首を傾げるが良からぬ気配を感じたのかエリスが私の首に諸手を絡めがるがると唸る。13歳という多感な年頃ではあるが乳房は既にリリスさんの血を継いでいる事を示すように成長しているのが伺えた。

「ふふ…、これはアリシアもライバルが多そうだ。…取り敢えず、学園の件と君がアジ・ダハーカの後継者として衰退した竜族の領地を今後治めるという事は各国の共通認識としておくので余りおいたはしないようにね?」


 この場に於いて唯一頼りになる筈の女王陛下からも半ば見放された私は、こうして裏ボス兼勇者として衰退した竜族(後、多分魔族も)を立て直し、S級魔法士として魔法士協会に席を置く身となるのであった。



 いや、マジでなんなん?裏ボス兼勇者って…。


----------------


 教皇領を見下ろせる小高い丘にボロボロの茶色い外套に身を包む体格が異なる二つの影が太陽を背にとある一方向を見下ろしていた。


「…ふふふ…」

「随分と上機嫌じゃねェか?」

「うん、今すっごく幸せだよ?お師匠は何時も通り不機嫌だね?」

「そうでもねェさ、今日は俺がくたばった日でもあるみてェだしな───巷ではよ」


 外套から覗く特徴的な赤髪、無精髭を伸ばす男は自身の鳩尾程度しかない身長の少女に不敵な笑みを浮かべてみせる。

 その体躯は外套越しでも逞しい肉体である事は見て取れる程鍛え抜かれている。


「そっかぁ、……ふふふ、私はあの子からはどう思われてるかなぁ?そもそも覚えてくれてるかなぁ?」

「…さぁな、気になるなら今からでも聞いてくりゃあ良いだろ?俺は止めやしねーさ」

「んーー…すっごく悩むけど良いや♡どーせ私達がしようとする事にはあの子が関わってくるだろうし」

「け、可愛げのねェ弟子を持って俺は嬉しいよ。───だが、あの女郎をぶん殴って引き摺り降ろす迄は帰らねェ、ってのには俺も賛成だがな」


「ふふふ、そーいうこと♡」



「…ユーくん。お姉ちゃんに殺される迄誰にも殺されちゃダメだよ?
──私(レナ)がユーくんを救っ(コロシ)てあげるまでは、ね」


 一際強い風が外套を捲るとエリスよりも若干背の高い青紫色の瞳が特徴的な栗毛の少女は口許を優しげに緩めながらも狂気を孕んだ笑顔を浮かべ、10年前に生き別れた最愛の弟を想い太陽に向かって歩き出すのであった。


 ───この世界そのものを殺す、その誓いを狂気に満ちた瞳に宿して。
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