前世で極道の若頭だった俺が転生したら悪役令嬢だったので、取り敢えず処刑される直前だった死に行く運命のメインヒロインを救ってみた件

奈歩梨

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第一章〜幼年期編〜

試験前日

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 新たな星技を習得して数日、俺なりに技の理解度を深め、そして習得した力にそれなりの自信を実感しつつ、試験に挑めるのは偏に周りの協力のお陰だ。

 今日は最終日、試験に必要な筆記用具等は不正を防ぐという名目で学園側が用意するという事から万全のコンディションで挑むだけだ。

「いよいよ明日ですね、アンナ様。私がシュリの星技を正確に理解していればもっと早く次の星技に着手出来たと思うと申し訳が立ちません…」

「いえ、リンには私が初めて星武器を手にしてから助けられてばかりです。…それに、神克しんこくを習得しようとして用いた時間は無駄にはなりませんでしたし」

 アンナの私室で申し訳無さげに謝罪するリンに首を横に振る事で過ごしてきた時間は無駄にならなかった、と口にする。

 実際、無駄ではなかったしな。


「…そうなのですか?」

「えぇ、確かに遠回りはしたかもしれませんが…少なくとも無駄ではありませんでした」

 まだ申し訳なさげに視線を伏せるリンを安心させるべく、彼女に教わった方法で、その過程で培ってきた魔力と氣の圧縮をより深く、より先の領域で行う事で新しい力を示すとリンは目を見開く。

「ッ…!その力…いえ、その雰囲気は…!」

「…もう少しなんです、もう少しでこの力に届く…それが分かる程に力を高める術をリンとシュリは与えてくれました、感謝しています」

「アンナ様…勿体なきお言葉です…!」

「…今日は休暇日、でしたね、少し皆の顔を見てきても宜しいでしょうか…?」


 試験の前日はコンディションを整える為に一日を自由時間に充てる事は以前から決めていた、顔を見たい奴等が何人か居た為に、何時もの時間にリンに起こして貰った訳だが。

「はい、行ってらっしゃいませ、アンナ様」

 リンに見送られる形で部屋を出て、先ずはあの3人に逢いに行く事にした。


◆❖◇◇❖◆

 先ずは時間帯的に逢うのがそう難しくないエミル、ミモザ、アリスの3人に逢う為に食堂にやってきた。


「アンナさま…?どうかしたのか…?」
「あ、アンナさま…!」
「アンナさま、おはようございます」

「いえ、明日は試験の日ですからね、エミルとミモザ、アリス…貴女達の顔を見に来ました」

 美味そうに、そして仲睦まじく3人でトーストにベーコンエッグを乗せて食べている3人の様子を見つめているとエミルが頬を赤く染める。


「オレ達の顔なんて見ても良いもんじゃねーだろ?ま、まぁ…嬉しいっちゃ嬉しいけど…」
「エミル、照れてる…?」
「ふふ、そうね、照れてるわね?」

「照れてねー!!」

「…ふふ」

「「「アンナさま…?」」」


 3人の様子に思わず笑みを浮かべていると不思議そうに、同時に首を傾げる6つの視線に胸が暖かくなる。

「ごめんなさい、…明日は頑張ってきますね…?」

「お、おう?」
「アンナさま、無理しないで…」
「…お気を付けて、アンナさま」


 今更ながら思うが、この3人を雇えて良かった。
 もう一人、逢いたい顔を思い浮かべれば街へと繰り出す事にした。


◆❖◇◇❖◆

 昼過ぎ、俺はレオナに逢いにレオナとリオンが住む家へと足を伸ばしていた。

「あれ?アンナ様…?」
「お姉様!」

「こんにちは、リオン、レオナも」

「こんにちは、今日は御一人ですか?」
「あー、お兄ちゃんったら、もしかしてシュリさん狙い~?」

「ち、違う!というかシュリさんの真似似合ってないぞ!?」


 どうやらあの一件でシュリに淡い恋心を抱いている様子のリオン、リオンには悪いが今日は一人である事を伝える。


「ふふ。えぇ、今日は残念ながらシュリは一緒ではありませんよ?」

「あ、アンナ様まで…!」

「お兄ちゃん、シュリさんに憧れてるもんね~…って、お姉様!明日は試験の日なんですよね?なら、夜の22時頃にノアにダイブしてみてください、エステルお姉ちゃんがお姉様と出逢った場所であの花を画像に撮って贈るって言ってましたから!」

「エステルが…ですか?分かりました、ありがとうございます」


 エステルも日常生活に加え、星騎士としての訓練に励んでいるのだろう。俺はレオナに礼を告げると城へと戻る事にした。

◆❖◇◇❖◆


 夜、言われた通りの時間にエステルとレオナに初めて出逢った場所へと行き先を指定しダイブすると、黄色い花々と月明かりが照らす幻想的な風景と探し人であるエステルの姿を視界に収める。


「…エステル…?」

「…アンナ様、お昼にレオナちゃんからアンナ様が私を尋ねてくる、と言っていましたが…覚えていますか?此処で初めて出逢った事を」

「えぇ、2ヶ月以上前の話になるのですね…早いものです」

「そうですね、…アンナ様に救われて、誰かの希望になれるアンナ様に憧れて…アンナ様を救いたいと思ってからそんなに経つんですね」

「私を…?」

 俺を救いたい、確かにそう口にしたエステルは一輪の花を手にし、俺に向けて渡してきた。


「……いえ、何でもありません。明日迄に間に合って良かった…アンナ様、雲南月光花の花言葉はご存知ですか?」

「いえ…何か特別な意味があるのですか?」

「私にとっては…あるかもしれません。…花言葉は『希望』です。…明日の試験、どうかご武運を」

「希望……えぇ、ありがとうございます、エステル」
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