42 / 48
第一章〜幼年期編〜
星騎士の起源
しおりを挟む夕飯を食べ、食休みを挟んだ後、俺はリンとシュリに連れられてユリウスの爺さんが使っている執務室へと足を踏み入れる。
「ユイ様、おじい様、お父様…入ります」
「えぇ、入って。アンナ…退院おめでとう」
「……」
「うむ、先ずは退院おめでとう。おかえり、アンナ」
何かを深く考え込み、娘である俺に声を掛けずにいるフリードリヒを除き、ユリウスの爺さんもユイ様も笑顔で出迎えてくれた。
俺としてはフリードリヒにも笑顔で居て欲しいが…この場はなにも言えない為、2人にのみ礼を述べる。
「ありがとうございます、ユイ様、おじい様」
「さて、既にシュリから聞かされているとは思うが、御前は宣誓通りS級を超えG級という高みに登った。神槍に見初められたあの日、もしや、とは思ったが御前の成長速度は神槍の恩寵を受けているとはいえ儂等の想像を超えている」
「いえ、リンやシュリ、レイにハク…それからセイが私の要望に応えて私を鍛えてくれたお陰です」
これについては本当にそう思うからこそ、5人の指導が優れていたと口にする。
確かに、神槍の恩恵もあるのだろうが、優れた指導者と優れた環境があってこそ、この短期間で強くなれた…少なくとも俺はそう思い言葉にしたが…その答えにユリウスの爺さんは嬉しそうに笑みを浮かべている。
「ふふふ、そうか。…それ故に、今一度問う。G級星騎士として『星々の騎士団』として所属する覚悟を」
「…はい、私は王族である前に星騎士ですから。…ユイ様、『星々の騎士団』とは具体的にどういった組織なのでしょうか?」
覚悟は出来ている、そもそも前世から俺は覚悟と共に生きてきた。
それに、元々はユイ様に『星々の騎士団』の活動内容を聞く為に訪れたのだ、話の流れとしてはおかしくない質問をすると、ユイ様は穏やかに微笑みながら、逆に俺に問い掛けてきた。
「そうね、元々は私が貴女に騎士団の事を話したのだし、私から説明するのが一番よね。…じゃあ、先ずアンナに問いたいのだけど、アンナは何故、星騎士は星騎士と呼ばれるようになったか想像出来るかしら?」
「何故、星騎士は星騎士と呼ばれるようになったか…ですか?」
「えぇ、別に読み方としては聖騎士でも通用するわよね?同じせいきし、なのだから。だったら何故、態々星騎士と呼ばれるようになったのかしら?」
「…星騎士、星武器、星技…そのどれもに星の文字が入る事から、星が関係している事までは察する事は出来ますが…」
これまではそれが当たり前だと思っていた星騎士という存在。だが、確かにただ単に読み方としては星騎士よりも聖騎士と呼んでも変わりはない気もする。
だから、俺はこの場でより正解に近いであろう事を口にする。あくまで推測でしかないが。
「…そうね、…昔…気が遠くなる程の昔、始祖神と呼ばれる存在が原初の鎧というチカラを手にしました。そのチカラは強大で世界を創り直すチカラを持っていました」
「世界を…創り直す…?」
確かレイも、何時だったか始祖神という言葉を口にしていたが…世界を創り直す程のチカラを持つ存在だったのか。あまりの話のデカさに耳を疑ったが…ユイ様の眼を見る限り誇張でも何でもないのだろう。
「そう、何らかの理由で滅びの未来が定まった場合、その未来を回避する為に何度も何度も…救いという誓い…いえ、呪いを受け入れて」
「…その神は孤独だったのですか?」
「………孤独、だったのかもしれないわね、何せ世界を何度も巻き直す規格外の存在だもの、過去の自分ですらその度に巻き直していた可能性もあるわ」
「……救われませんね」
その神は愛情深い神だったのだろう、万人にとっての幸せを模索し、人間や異種族を信じ、多分何十、何百ときかない裏切りにあってでも星とそこに住む生き物を見守り続けた…自分という存在を救わなかった愚かな神。
「そうかもしれないわね、…話を戻すわね。そんな神だけど、滅びの未来なんて幾らでも存在するみたいね、種族間の戦争、天変地異…そして、外宇宙から来る存在」
「外宇宙…の、神…」
外宇宙の神、その言葉から察せられるのはこの世界の物理法則や概念を超越した神なのだろう。
「当時の一般的な剣や槍、亜種族の爪やドラゴンのブレスでは到底傷なんて付けられない存在だったのは確かだわ、何とか撃退は出来たけど、始祖神は激しく傷付き、傷を癒す為に大地と一体化になって眠る前に始祖神は考えたの───自分に比肩する、うぅん。それより劣っていても良いからより多くの戦士を育てようと」
「…それが、星騎士の起源…なのですね」
人間至上主義、という訳ではないが種族としての多さは他の種族よりも多いであろう人間、そんな人間が作り出した剣が役に立たず、亜種族の牙や爪も通らない。更にドラゴンのブレスも届かないなんて、ほぼ全ての種族が何も出来ないと言っているようなものだ。何度も世界を創り直す事が出来る神でも深い傷を負って尚、撃退するのがやっとだった。
俺の言葉に、首を縦に振るユイ様の表情は、当時を思い出すようにとても暗かった。
0
あなたにおすすめの小説
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる