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10話 月曜の章「表面化する青春の絆と険悪な関係」
カスミ編
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ーーカスミ達一行は雨天時のみその時点でコテージへと引き返すようにと、学園での事前説明の時間に教官から指示されたことを思いだし、午後3時頃にようやくコテージの広場へと到着。
ソウタ
「ふぅ、やっと戻ってきた~!」
ローゼ
「ふふ、結構長かったわね。」
ランス
「ん~...これはひどい大雨だね。雨宿りついでに、急いで教官のところへ行こう。」
ダイスケ
「確かそこの温泉の隣の小屋に先生達がいたはず、急いでそこへ行こうぜ。」
と、ダイスケは視界の真ん前にある小屋を指す。
そして右方向にいるソウタ中心に視線を向けそう言うと、ダイスケと、後の5人もそれに続き、大雨に打たれながら駆け足で走る。
目的地に着くとソウタはすぐに小屋の扉を2回ノックすると、
ソウタ
「教官!居ますか?俺です、ソウタです。開けてください!」
と言ってまた三回ノックする。
すると、扉が開き、中からユーレンが出てきた。アユミもその後ろでカスミ達を出迎えた。
ユーレン
「...君達!?無事で良かったです。自力で帰ってこれたんですね。」
そう言って、安心したようにほっと胸を撫で下ろす。
アユミはユーレンの右手側の壁掛け棚に置かれているタオルを数十枚の内の人数分を取りだし、生徒達に両手で渡す。
アユミ
「さぁこっちへ、タオルでよく拭かないと風邪を拗らせますよ。」
ランス
「ありがとうございます。」
そうランスが言うと、6人はアユミからタオルを貰い、髪やジャージなど雨水で濡れた全身をそれぞれしっかりと軽く拭き取る。しばらくそれが続くと、ローゼは「あ...。」と室内を見渡した後にそう声に漏らす。そう、他の教官達がいないのだ。
それに気付いたローゼはふと、ユーレン教官に尋ねる。
ローゼ「あの、他の教官方は?」
ユーレン
「ユキムラ君達は君達のクラスメイトを探すために救助隊の人達と一緒に探索へと向かって...。」
と、言い終わる寸前でカスミが「あの...。」と咄嗟に口ずさむ。そう言えばと短時間の出来事なので忘れていたが、あれは流石に報告しない方がおかしいと思い、思い出したことをユーレンとアユミに伝える。
カスミ
「そんなことより、あまりの短時間の出来事で、えーっと...その何て言えば...。実は大雨が降る前に私達、見たこともない怪物と遭遇したんです、本当です。あれは一体...。」
アユミ&ユーレン「.....!」
そうか! 自分達を襲撃した彼女が”あの子達”と言う言葉を言っていたのはその事だったのかと咄嗟に理解した。しかし、あの者達の存在を直接ばらしてはいけないと思ったのか、一瞬見開いた表情はすぐに取り繕うように平常に戻す。
ソウタ
「そうです!俺も見たんです!しかも俺達を急に襲ってきてですねぇ!結局アギトが倒してくれたから皆無傷だったんですけど...。」
ダイスケ
「俺達よりもデカイ蜂でした...。教官、あんな怪物がイヤハル渓谷に住んでいるんですか?」
次々に聞かれる度にどう答えれば良いのか...。けれど、そんな人間を越えるくらいの大きさの蜂なんて居るわけがない。詰まり本当のことを言うと知らないと言う答えがベストになるはずと、ユーレンはダイスケが言い終わった後に適度なタイミングで言葉を返す。
ユーレン
「...すみませんが、そんな生物はじめて聞きましたよ。事実上、生物図鑑でも一切載っていないくらいですし、...でも、そんな珍しい物と遭遇できたのは考えてみれば奇跡じゃないですか?」
ユーレンはそう言うと、頭を悩ますような表情から自分のことのように嬉しそうに、そして、冗談っぽくそう言った。
ソウタ
「え?...それはぁ..まぁ。」
ユーレン
「はは、なんて...、けどよかった、皆無傷で...。」
ソウタも少し困ったような表情でそう答えると、ユーレンは愛想笑い浮かべた後、安堵したような表情でカスミ達の無事を心から感謝したのだった。
カスミ
(皆、大丈夫かな?フライヤ達はどうしてるのかな...ぁ....。)
カスミはそう思い、一旦俯き、右方向にある小屋の天井付近の窓を何となく心配そうに見上げる。
そして、視界が白くなる。
ーーカスミの中の記憶、巨大蜂と邂逅した時の記憶。
そんな怪物はその体の大きさ相応のサイズの羽をパタパタと浮遊させカスミ達に面と向き合うと、シャァっとやや金切り声にも近い、鳴き声を発した。
ローゼ「な、何?あのおぞましい怪物は...。」
ランス「くっ...羽があるから逃げるにしても追いつかれてしまう。」
そう言った後にその蜂は空腹に耐えられないと言わんばかりに全速前進にビューっと素早く空中移動をし、カスミ達にすぐさま襲い掛かる。
ダイスケ「...なら!ここは正々堂々と...え?アギト!」
ダイスケがそう言い終わり掛けるその瞬間、他のクラスメイトよりも一番怪物距離が近いアギトが、さらに怪物の方へと歩き出す。
”ブワァァァァァァ!”
全員「!......ッ!」
そして、至近距離まで迫ると、彼は素早く右手を真ん前に伸ばし、中指と人差し指を立て、それ以外の指を先から間接部の中心まで曲げると共に、魔術らしき合言葉を口ずさみ発動させる。
アギト「サディスティックストップ。」
その瞬間、アギトが消えたと同時に怪物の胸部から上まで下まで渦巻が発生した。
その後消えたと思っていたアギトがカスミ達から見て怪物の後ろにいつの間にか移動していた。お互い背中合わせと言う状態で、カスミ達からは彼の顔が見れず、背中しか見えない。しっかりとした姿勢で武器を持っている右手側のみ横一線で伸びている姿勢であった。
”ブヮァァァァァァァァァァ!”
カスミ「え......!?」
水しぶきが飛び散ると同時にその発生源の部位の所からパリンと割れた音が聞こえる。
一思いに苦し紛れに鳴き、ゆらゆらとその巨大を揺らす蜂。
それに対してカスミは思わず、え?と声を漏らす。
アギト「......ッフ。」
その愉快そうな漏れる声とは裏腹に瞳を閉じながらのその平然とした無感情は何処か冷たく冷淡であった。
そして、横一線に伸ばしていた右肘を一旦曲げ、潔く、パッと下に振り降ろす。すると、胴体に横に真っ直ぐな切り込みが入る。
”ブヮァァァァァァァァァァァァァ!!!”
蜂特有の最期の鳴き声を発した後にやがては切断された部位から鋭い光がバラバラにそれぞれ左右に回った瞬間に全身が光に包まれ、破裂し、小さく細かいオーブとなって消えた。
全員「.......。」
その一部始終の光景を目の当たりにした全員はずっと固まり唖然としてしまうのだった。ーー
カスミ
(....それにアギト君も、昔はカルマにあるエリート校の出身だったって言ってたけどあのとても大柄な蜂さんを出会って数秒で倒すのはおかしい気がする。しかも、攻撃を当てている様を見せずに、何か、...もやもやする。...アギト君...貴方はそんな冷たく虚無な眼をして何を考えているの?何故あの時私にあんなことをしたの?.....貴方は一体誰?)
ーー
ソウタ
「ふぅ、やっと戻ってきた~!」
ローゼ
「ふふ、結構長かったわね。」
ランス
「ん~...これはひどい大雨だね。雨宿りついでに、急いで教官のところへ行こう。」
ダイスケ
「確かそこの温泉の隣の小屋に先生達がいたはず、急いでそこへ行こうぜ。」
と、ダイスケは視界の真ん前にある小屋を指す。
そして右方向にいるソウタ中心に視線を向けそう言うと、ダイスケと、後の5人もそれに続き、大雨に打たれながら駆け足で走る。
目的地に着くとソウタはすぐに小屋の扉を2回ノックすると、
ソウタ
「教官!居ますか?俺です、ソウタです。開けてください!」
と言ってまた三回ノックする。
すると、扉が開き、中からユーレンが出てきた。アユミもその後ろでカスミ達を出迎えた。
ユーレン
「...君達!?無事で良かったです。自力で帰ってこれたんですね。」
そう言って、安心したようにほっと胸を撫で下ろす。
アユミはユーレンの右手側の壁掛け棚に置かれているタオルを数十枚の内の人数分を取りだし、生徒達に両手で渡す。
アユミ
「さぁこっちへ、タオルでよく拭かないと風邪を拗らせますよ。」
ランス
「ありがとうございます。」
そうランスが言うと、6人はアユミからタオルを貰い、髪やジャージなど雨水で濡れた全身をそれぞれしっかりと軽く拭き取る。しばらくそれが続くと、ローゼは「あ...。」と室内を見渡した後にそう声に漏らす。そう、他の教官達がいないのだ。
それに気付いたローゼはふと、ユーレン教官に尋ねる。
ローゼ「あの、他の教官方は?」
ユーレン
「ユキムラ君達は君達のクラスメイトを探すために救助隊の人達と一緒に探索へと向かって...。」
と、言い終わる寸前でカスミが「あの...。」と咄嗟に口ずさむ。そう言えばと短時間の出来事なので忘れていたが、あれは流石に報告しない方がおかしいと思い、思い出したことをユーレンとアユミに伝える。
カスミ
「そんなことより、あまりの短時間の出来事で、えーっと...その何て言えば...。実は大雨が降る前に私達、見たこともない怪物と遭遇したんです、本当です。あれは一体...。」
アユミ&ユーレン「.....!」
そうか! 自分達を襲撃した彼女が”あの子達”と言う言葉を言っていたのはその事だったのかと咄嗟に理解した。しかし、あの者達の存在を直接ばらしてはいけないと思ったのか、一瞬見開いた表情はすぐに取り繕うように平常に戻す。
ソウタ
「そうです!俺も見たんです!しかも俺達を急に襲ってきてですねぇ!結局アギトが倒してくれたから皆無傷だったんですけど...。」
ダイスケ
「俺達よりもデカイ蜂でした...。教官、あんな怪物がイヤハル渓谷に住んでいるんですか?」
次々に聞かれる度にどう答えれば良いのか...。けれど、そんな人間を越えるくらいの大きさの蜂なんて居るわけがない。詰まり本当のことを言うと知らないと言う答えがベストになるはずと、ユーレンはダイスケが言い終わった後に適度なタイミングで言葉を返す。
ユーレン
「...すみませんが、そんな生物はじめて聞きましたよ。事実上、生物図鑑でも一切載っていないくらいですし、...でも、そんな珍しい物と遭遇できたのは考えてみれば奇跡じゃないですか?」
ユーレンはそう言うと、頭を悩ますような表情から自分のことのように嬉しそうに、そして、冗談っぽくそう言った。
ソウタ
「え?...それはぁ..まぁ。」
ユーレン
「はは、なんて...、けどよかった、皆無傷で...。」
ソウタも少し困ったような表情でそう答えると、ユーレンは愛想笑い浮かべた後、安堵したような表情でカスミ達の無事を心から感謝したのだった。
カスミ
(皆、大丈夫かな?フライヤ達はどうしてるのかな...ぁ....。)
カスミはそう思い、一旦俯き、右方向にある小屋の天井付近の窓を何となく心配そうに見上げる。
そして、視界が白くなる。
ーーカスミの中の記憶、巨大蜂と邂逅した時の記憶。
そんな怪物はその体の大きさ相応のサイズの羽をパタパタと浮遊させカスミ達に面と向き合うと、シャァっとやや金切り声にも近い、鳴き声を発した。
ローゼ「な、何?あのおぞましい怪物は...。」
ランス「くっ...羽があるから逃げるにしても追いつかれてしまう。」
そう言った後にその蜂は空腹に耐えられないと言わんばかりに全速前進にビューっと素早く空中移動をし、カスミ達にすぐさま襲い掛かる。
ダイスケ「...なら!ここは正々堂々と...え?アギト!」
ダイスケがそう言い終わり掛けるその瞬間、他のクラスメイトよりも一番怪物距離が近いアギトが、さらに怪物の方へと歩き出す。
”ブワァァァァァァ!”
全員「!......ッ!」
そして、至近距離まで迫ると、彼は素早く右手を真ん前に伸ばし、中指と人差し指を立て、それ以外の指を先から間接部の中心まで曲げると共に、魔術らしき合言葉を口ずさみ発動させる。
アギト「サディスティックストップ。」
その瞬間、アギトが消えたと同時に怪物の胸部から上まで下まで渦巻が発生した。
その後消えたと思っていたアギトがカスミ達から見て怪物の後ろにいつの間にか移動していた。お互い背中合わせと言う状態で、カスミ達からは彼の顔が見れず、背中しか見えない。しっかりとした姿勢で武器を持っている右手側のみ横一線で伸びている姿勢であった。
”ブヮァァァァァァァァァァ!”
カスミ「え......!?」
水しぶきが飛び散ると同時にその発生源の部位の所からパリンと割れた音が聞こえる。
一思いに苦し紛れに鳴き、ゆらゆらとその巨大を揺らす蜂。
それに対してカスミは思わず、え?と声を漏らす。
アギト「......ッフ。」
その愉快そうな漏れる声とは裏腹に瞳を閉じながらのその平然とした無感情は何処か冷たく冷淡であった。
そして、横一線に伸ばしていた右肘を一旦曲げ、潔く、パッと下に振り降ろす。すると、胴体に横に真っ直ぐな切り込みが入る。
”ブヮァァァァァァァァァァァァァ!!!”
蜂特有の最期の鳴き声を発した後にやがては切断された部位から鋭い光がバラバラにそれぞれ左右に回った瞬間に全身が光に包まれ、破裂し、小さく細かいオーブとなって消えた。
全員「.......。」
その一部始終の光景を目の当たりにした全員はずっと固まり唖然としてしまうのだった。ーー
カスミ
(....それにアギト君も、昔はカルマにあるエリート校の出身だったって言ってたけどあのとても大柄な蜂さんを出会って数秒で倒すのはおかしい気がする。しかも、攻撃を当てている様を見せずに、何か、...もやもやする。...アギト君...貴方はそんな冷たく虚無な眼をして何を考えているの?何故あの時私にあんなことをしたの?.....貴方は一体誰?)
ーー
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