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10年後の世界で
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――――ドーン・・・ドーン・・・
地上から、爆発音が聞こえる。そのたびに、天井からパラパラと砂が落ちてきた。そして、そこら中から無数の足音と、叫ぶ声が聞こえる……
「急げ! もう第2層まで来ているぞ!」
軍帽をかぶった男は、床で黙々と魔方陣を書き続ける小柄な少女にそう言った。しかし少女は何も答えず、書き続ける。
「司令官! 第2層を突破されました!」
「クソッ!」
部屋に飛び込んできた若い男からの知らせに、司令官は壁を殴りつけた。壁はひび割れ、男の手からは赤い血が流れ出た。
「あともう少しだってのに! なんで今になってここがバレた!?」
司令官は、誰にと言うわけでもなくそう叫ぶ。
この地下基地は人類に残された最後の砦で、魔法によって幾重にも隠されていた。にもかかわらず、最後の最後、あと少しで目論みが上手くいくと言うときに、宇宙人達は攻め込んできた。
「おい! あとどれくらいで魔方陣は完成する!?」
「・・・あと・・・三分」
少女の言葉に、そこに居た全ての人間が絶望した。
この基地は4層構成で、すでに宇宙人達は3層目まで来ている。ここまで突破されるのに約二分。つまり、一層を突破するのに一分かかっている。
このまま行けば、彼らの居る第4層に敵がやってくるのは2分後。このままでは、少女が魔方陣を完成させる前にここに攻め込まれるだろう。
「敵の軍勢は!?」
「弐脚機動戦車が4! レプタイル型多数!」
部下からの情報に、司令官は唇をかみしめる。
弐脚軌道戦車。彼らがそう呼ぶその兵器は、正式名称を99式弐脚機動戦車と言い、宇宙人達の歴史で言うところの4990年代に作られた二足歩行の戦車である。
4門の10mm高出力ビーム砲を搭載していて、操縦は手先が器用なグレイ型宇宙人によって行われる。そして、恐るべきはその命中精度であり、AI照準により敵を判別し、亜光速のビームを発射する。
亜光速のビームを避けられるはずもないので、その攻撃は不可避。狙われたが最後、死ぬしかない。
その圧倒的火力と分厚い装甲を前に、人間達はなすすべがなかった。これまでに潰された基地のほとんどが、数台の弐脚機動戦車によって壊滅していた。
それが四台も攻めてきている。もはや彼らには、一縷の希望も残されていなかった。
部屋の中に『もう駄目か』という雰囲気が立ちこめる。司令官もまた、諦めたようにうなだれていた。
しかし、少女はそれでも魔方陣を書き続けていた。
「・・・お願いします」
それまで魔方陣を黙々と書き続けてた少女が、初めて口を開いた。少女は、視線を魔方陣に落としたまま、周りに居る男達に懇願した。
「諦めないでください。諦めないで戦ってください」
「・・・戦えだと?」
少女の言葉に、司令官は嘲るように笑った。
「敵は目前まで迫り、こちらは為す術もない。この状況でどうしろと?」
「・・・それでも・・・戦ってください」
「・・・無意味に死ぬとしてもか?」
「はい」
「いい加減にしてくれ!」
部屋に居た若い男が耐えきれずに怒鳴った。しかし少女は、そんなことに少しも反応せず、魔方陣を書き続けていた。
「俺たちは負けたんだよ! 何をしようと、これから起きることは変わらない! 全員が殺されておしまいだ! 無駄に死ぬだけなんだよ!」
叫ぶ若い男の言葉を、誰も否定しなかった。いや、出来なかった。彼らもまた、そう思っていたから。
しかし、少女だけは違った。
「変えられます。もし、あなたたちが命を賭けてくれるのなら」
「は!? 嘘言うな! この状況からどうやって・・・」
少女につかみかかろうとした若い男を、司令官は制止した。そして、少女に尋ねる。
「・・・なにか・・・あるのか?」
「はい。ただしそれを行うと、あなた方は確実に死にます」
「・・・・・・」
「これはただ単に、あなた方に『無意味な死』ではなく『意味ある死』を与えるだけの方法です。そして、死を与えるのはヤツらではなく僕です」
「・・・意味ある死・・・か」
司令官は周りの兵士達を見回した。数年もの間、共に戦ってきた仲間達。彼らは全員、平和になった世界で生きていくのを夢見て戦ってきた者達だ。
にもかかわらず、そんな彼らに与えてやれる選択肢はもう、無意味に死ぬか、有意義に死ぬかしかない。
そのことが、彼は何よりも悔しくてならなかった。
しかし、選ばねばならない。人類の未来のために、彼らを有意義に死なせることを。
「・・・いいか、これは最後の命令だ」
司令官は、ニッと笑った。
「お前ら全員、このお嬢ちゃんのために死んでくれ」
地上から、爆発音が聞こえる。そのたびに、天井からパラパラと砂が落ちてきた。そして、そこら中から無数の足音と、叫ぶ声が聞こえる……
「急げ! もう第2層まで来ているぞ!」
軍帽をかぶった男は、床で黙々と魔方陣を書き続ける小柄な少女にそう言った。しかし少女は何も答えず、書き続ける。
「司令官! 第2層を突破されました!」
「クソッ!」
部屋に飛び込んできた若い男からの知らせに、司令官は壁を殴りつけた。壁はひび割れ、男の手からは赤い血が流れ出た。
「あともう少しだってのに! なんで今になってここがバレた!?」
司令官は、誰にと言うわけでもなくそう叫ぶ。
この地下基地は人類に残された最後の砦で、魔法によって幾重にも隠されていた。にもかかわらず、最後の最後、あと少しで目論みが上手くいくと言うときに、宇宙人達は攻め込んできた。
「おい! あとどれくらいで魔方陣は完成する!?」
「・・・あと・・・三分」
少女の言葉に、そこに居た全ての人間が絶望した。
この基地は4層構成で、すでに宇宙人達は3層目まで来ている。ここまで突破されるのに約二分。つまり、一層を突破するのに一分かかっている。
このまま行けば、彼らの居る第4層に敵がやってくるのは2分後。このままでは、少女が魔方陣を完成させる前にここに攻め込まれるだろう。
「敵の軍勢は!?」
「弐脚機動戦車が4! レプタイル型多数!」
部下からの情報に、司令官は唇をかみしめる。
弐脚軌道戦車。彼らがそう呼ぶその兵器は、正式名称を99式弐脚機動戦車と言い、宇宙人達の歴史で言うところの4990年代に作られた二足歩行の戦車である。
4門の10mm高出力ビーム砲を搭載していて、操縦は手先が器用なグレイ型宇宙人によって行われる。そして、恐るべきはその命中精度であり、AI照準により敵を判別し、亜光速のビームを発射する。
亜光速のビームを避けられるはずもないので、その攻撃は不可避。狙われたが最後、死ぬしかない。
その圧倒的火力と分厚い装甲を前に、人間達はなすすべがなかった。これまでに潰された基地のほとんどが、数台の弐脚機動戦車によって壊滅していた。
それが四台も攻めてきている。もはや彼らには、一縷の希望も残されていなかった。
部屋の中に『もう駄目か』という雰囲気が立ちこめる。司令官もまた、諦めたようにうなだれていた。
しかし、少女はそれでも魔方陣を書き続けていた。
「・・・お願いします」
それまで魔方陣を黙々と書き続けてた少女が、初めて口を開いた。少女は、視線を魔方陣に落としたまま、周りに居る男達に懇願した。
「諦めないでください。諦めないで戦ってください」
「・・・戦えだと?」
少女の言葉に、司令官は嘲るように笑った。
「敵は目前まで迫り、こちらは為す術もない。この状況でどうしろと?」
「・・・それでも・・・戦ってください」
「・・・無意味に死ぬとしてもか?」
「はい」
「いい加減にしてくれ!」
部屋に居た若い男が耐えきれずに怒鳴った。しかし少女は、そんなことに少しも反応せず、魔方陣を書き続けていた。
「俺たちは負けたんだよ! 何をしようと、これから起きることは変わらない! 全員が殺されておしまいだ! 無駄に死ぬだけなんだよ!」
叫ぶ若い男の言葉を、誰も否定しなかった。いや、出来なかった。彼らもまた、そう思っていたから。
しかし、少女だけは違った。
「変えられます。もし、あなたたちが命を賭けてくれるのなら」
「は!? 嘘言うな! この状況からどうやって・・・」
少女につかみかかろうとした若い男を、司令官は制止した。そして、少女に尋ねる。
「・・・なにか・・・あるのか?」
「はい。ただしそれを行うと、あなた方は確実に死にます」
「・・・・・・」
「これはただ単に、あなた方に『無意味な死』ではなく『意味ある死』を与えるだけの方法です。そして、死を与えるのはヤツらではなく僕です」
「・・・意味ある死・・・か」
司令官は周りの兵士達を見回した。数年もの間、共に戦ってきた仲間達。彼らは全員、平和になった世界で生きていくのを夢見て戦ってきた者達だ。
にもかかわらず、そんな彼らに与えてやれる選択肢はもう、無意味に死ぬか、有意義に死ぬかしかない。
そのことが、彼は何よりも悔しくてならなかった。
しかし、選ばねばならない。人類の未来のために、彼らを有意義に死なせることを。
「・・・いいか、これは最後の命令だ」
司令官は、ニッと笑った。
「お前ら全員、このお嬢ちゃんのために死んでくれ」
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