異世界で 友達たくさん できました  ~気づいた時には 人脈チート~

やとり

文字の大きさ
126 / 161
第八章 さけたなか 湯けむりはれる 魔界旅

第118話 内装はまだないそうです

しおりを挟む
 魔界旅行から帰って来た翌日、俺はソフィアの部屋を訪れていた。

 というのも、教会の横に大きな家が建っていたからだ。

 あの後、リューナは妖精の件で魔皇の城に残るということで、俺一人で人間界に転移した。
 転移用の広場から教会を目指して歩き、泊っている部屋までそろそろだなー、と油断しているタイミングで見たので、思わず三度見してしまった。
 ……旅行からの帰りと言うこともあって、とりあえず見なかったことにした。

 そして翌日の今日、もしかして夢だったのでは? という俺の希望を打ち砕くかのように、教会横にそびえたっていた家を確認した後、すぐにソフィアの部屋にむかった。

 ……というか、魔界に旅行に行く前に、おまかせはするけど最終確認はしたい、って言っておいたよな?



「おはようございます、ハクトさん。すでに確認していると思いますが、教会横にハクトさんの家を建てました。まだ中はほとんど手を入れていませんが」

 ソフィアの部屋に行くと、一仕事やり終えたような雰囲気のソフィアに迎えられた。
 ……うん、やっぱり俺に内緒で家を建てた、とかじゃないよな。

「おはよう、ソフィア。……えっと、もう家を建てちゃったのか? というか、俺が旅行に行ってたのって三日なんだけど、この世界ってそんなに早く家を建てられるのか?」

「そうですね。建築用の魔法を駆使することで可能です。ですが、そうした技術を持った方々のスケジュールは、かなり先まで埋まっていることが多いです。幸い、仲間の天使に建築関係の魔法が得意な方がいますので、彼女にお願いしました」

 天使が二日間でやってくれました。
 ……いや、やらないでほしかったんだけどさ。

「……なるほど。……確か旅行に行く前に、家については俺の部屋以外はソフィアにお願いするけど、最終確認をさせてほしい、って言ったよな?」

「はい、そうですね」

 と、ソフィアが、もちろん忘れてませんよ? みたいな感じで答えた。
 ……うーむ。
  
「えっと、もう家が建っちゃってるんだけど……」

 それを聞いたソフィアが納得した感じで、

「ああ、そういうことでしたか。それは大丈夫です。先ほどの、建築の魔王が得意な天使にお願いすることで、すぐに修正が可能ですので。また、一度実物を見た方が、よりわかりやすいと思いまして」

 と言った。
 
 まあ、そうなんだけどさ。
 ……これも、異世界ギャップとかいうやつなのか?

 いや、流石にそれは違うか。



 まだ中はほとんどできていないということだったが、とりあえず確認しに行くことにした。
 改めて見ると、外見は質実剛健な感じで、横にある教会と並んでも違和感のないように西洋風になっているな。

 広さは、横にある教会ほどは大きくはないが、それでもそこそこの大きさだ。
 ……まあ、教会自体が結構な大きさなわけだけどさ。

 名前は忘れてしまったけど、前に東京で見た大聖堂くらいの大きさはあるし。

 ソフィアに魔道具の鍵を開けてもらい、一見シンプルに見えるが、どことなく高そうな扉を開け中に入ると、

「広っ!」

 そこにはサッカーコートの半面が入りそうなほど、巨大なスペースが広がっていた。
 ぽつぽつと仕切や柱、部屋ぽいのがあるくらいで、ほとんどは何もない感じだった。

 ……設計図から、かなり広いことはわかっていたけど、実際に見てみるとその広さが実感できるな。

 え、というかこれが、俺の家なの?
 豪邸ってレベルじゃなく広いんだけど……。
 
 こんなに広いスペース、絶対持て余すと思うんだけど……。

「なあ、ソフィア。この家のスペース、流石に広すぎないか? 絶対に持て余すと思うんだが……。それに、こんなに空間を拡張して何か問題とかないのか?」

「まず、空間の拡張に関してですが、専用の素材を使用していますし、今までに問題が起きたことはありませんので、大丈夫かと思います。また、スペースに関してなのですが、一階部分に関しては、必要な設備等を考えますと、これでも狭いくらいですね」
 
 え?
 これでも狭いって、何を作るつもりなんだ?

「……流石に、ソフィアの持っている本を全部棚に並べる、なんてことはしないよな?」

「そうですね。あまり多くても探すのが大変ですので。魔皇の皆さんに色々と話を伺ったところ、ハヤテさん、アオイさん、メイさんが広いスペースを希望しましたので、希望をすべて叶えようとしますと、この広さでは不可能でした」

 ハヤテは、たぶんノリかなんか、アオイは魔道具、メイは本関係だろうな。
 ……というか、魔皇の城にもまだスペースがいっぱいあると思うんだけど。

「そのスペース、俺の家じゃなくてもよかったりしない?」

「ええ、そのようでした。ですので……」

 と言いつつ、入口からほど近い場所にある部屋を指さした。
 ……後で聞こうと思ってたけど、一番気になってた場所だな。

「こちらに、魔皇の城と繋がる転移門を設置してみました」

 ……え、今、なんて?

「あー、えっと、色々とツッコミたいところがあるけど、そもそも魔界と繋がる転移門なんて、そんなに簡単に設置していいものなのか?」

「双方の所属している土地の代表者から、許可を得る必要がありますね。ただ、こちらは創造神様、あちらは魔皇がその対象ですので、簡単に許可が下りました。また、こちらの部屋にはすでに門が設置してあり、魔界側の準備が整えば使用が可能ですね」

 ……そりゃあ、簡単に許可が下りるだろうなぁ。
 というか、もう使えるようになってるって、作業が早すぎる。

「ってことは、これからは転移門のある広場じゃなくて、この門で帰ってくればいいんだな。……これから何度も魔界に行くし、それもあってはやめに設置してくれたのか?」

「そうですね。ハヤテさんから、ハクトさんが便利だから早く設置して欲しいと催促されましたので」

 ……それを言ったのがハヤテ、ってのがなーんかちょっと怪しい。
 なんて思っていたら、その部屋の扉が突然開いた。

「ふっふっふ。さて、それじゃあハクトをここに呼んでびっくりさせちゃおうかな~。……あっ」

 魔皇のハヤテが飛び出してきた!

 俺とハヤテは数秒見つめ合うと、

「や、やあハクト! き、奇遇だね~。……あ、ボク、用事を思い出しちゃった! またね~!」

 と、急いで部屋に戻っていった。
 ……なんだかなぁ。

「魔皇の城と、無事通じたようですね」

 ……そうだな、ソフィア。

 さて、ハヤテについては後でヒカリに報告するとして、俺の家についてだな。

「というか、今は吹き抜けみたいになってるけど、ここ、二階建てになるんだよな? それで、俺のスペースがそこ全部、だったよな?」

「そうですね」

「……それは、流石に持て余しすぎるな。この空間の中に、小さな小屋を建てたくなるくらいだよ」

「……なるほど、小屋、ですか。……その発想はありませんでした」

 ん?
 どういうこと?

「この中に小屋、といいますか、二階建ての部屋を複数配置する、というのはいいかもしれないですね」

 ……あー。
 アパートとかにたまにある、住居部分の中に階段があって、一戸建てみたいに二階とかがあるやつか。

「図書館も、本を配置する場所と読む場所などで分けられますし、そちらで再設計してみたいと思います。後で、仲間の天使に相談しないとですね」

 あ、俺の一言で、ソフィアの知り合いの天使への無茶振りが決定してしまった。
 ……なんか、すまん。

「ハクトさん。最終確認をする、とのことでしたが、度々報告してもいいでしょうか? 今回のように、また良いアイディアがいただけるかもしれませんので」

 ……完全に偶然の産物なんだよなぁ。

 まあけど、そうしたほうが良さそうだ。
 ……また、なんということでしょうなんということをしてくれたのでしょうソフィアの手によって、な事態が起こりそうだからな。

______________________________________
この家の設計図、コスト7以上の生物が最大4体くらい貰えそうですね()。

住居に関して主人公がイメージしたのは、ひとつの区画が二階層以上に分かれているメゾットタイプ、みたいなやつです。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

社畜の異世界再出発

U65
ファンタジー
社畜、気づけば異世界の赤ちゃんでした――!? ブラック企業に心身を削られ、人生リタイアした社畜が目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界。 前世では死ぬほど働いた。今度は、笑って生きたい。 けれどこの世界、穏やかに生きるには……ちょっと強くなる必要があるらしい。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。 そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。 しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの? 優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、 冒険者家業で地力を付けながら、 訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。 勇者ではありません。 召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。 でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

処理中です...