異世界で 友達たくさん できました  ~気づいた時には 人脈チート~

やとり

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第八章 さけたなか 湯けむりはれる 魔界旅

第126話 酒とハヤテとシーラとレイと

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 アキナの話によると、そのとある人物は500年ほど前に活躍した人で、複数の言語を取得していたこともあって、通訳として重宝されていたようだ。

 500年前、つまりは魔族が人間界に攻め入って来た時代の人のようだった。

 そしてその事件の後、魔族の代表と話す前に人間界の代表者が集まり会議をすることになったのだが、段々と会議が紛糾していき、その結果様々な言語が飛び交ってしまい、会議がまとまることなく魔族の代表者と話すことになってしまった。

 しかし、魔界にはこの頃にも翻訳魔法が存在しており、魔族側からの説明は問題なく全員に伝えられたそうだ。
 翻訳魔法の存在もあってか、その話し合いは比較的スムーズに終わったらしい。

 その話し合いにも参加したその人物は、翻訳魔法の存在を知り、その必要性を強く感じた。
 そして、翻訳魔法が欲しいと強く願ったようだ。
 
 その願いは神様の元まで届き、試練を与えられられることになった。
 試練の内容は、各国を巡り、言語の違いだけではなく、その国や地域での文化の違いを知ること、だったそうだ。

 その試練の最中、言葉は通じているはずなのに、何故かうまくコミュニケーションが取れない場面に何度も遭遇した。
 そのような事がありつつも数多くの国を巡っていると、突然神様から、試練の達成と翻訳魔法を授けられたそうだ。

 その人物は翻訳魔法を授けられたことに喜びつつも、さらなる目標を掲げることにしたそうだ。

 それが、翻訳魔法の普及と共通語を生み出すことだった。
 最終的にその人物は、その考えに賛同した多くの人々と協力し、両方の目標を達成する事ができたようだ。

「それでね、その共通語を生み出す際、指導者が翻訳魔法を併用することで、ある程度簡単に取得できる方法も一緒に考え出されたの。……だから、人間界ではほとんどの人が共通語を話せるのよ」

 ……なんというか、すごい人がいたんだな。
 そして、当たり前ではあるんだけど、異世界にも異世界の歴史がある、ってことを感じだな。
 
「……とても、興味深い話でした。それに、翻訳魔法を併用した学習方法、ですか。……こちらは、後で色々と調べてみたいですね。アキナさん、ありがとうございました」
 
「どういたしまして! お礼なら、今井商会をどうぞ御贔屓ごひいきに、なんてね」

 もしかしたらこれをきっかけに、魔族が人間界の共通語を気軽に話せるようになったりして、なんてな。
 ……本当に、そうなったらいいな。

「ボクも面白かった~。それと、そんな共通語が話せるボクは、やっぱりすごいってことだね!」

 ……いや、まあ、そうではあるんだけどさ。

 と、そんな話をしている内にシーラとレイによる検証も一段落いちだんらくしたようだ。

 あ、そういえばシーラとアキナも会話が成立していたな。
 ……ということは、シーラも共通語を取得しているってこと、だよな?
 
 さっきまで話をしていた内容を説明しつつ、シーラに質問してみたところ

「人間界で酒巡りの旅に出ようかと考えて、少しづつ取得したのさ。……とはいえ、魔界こっちにもまだまだ飲んだことのない酒がいっぱいあってねぇ。そっちを追い求めていたら、未だに行けてない、ってわけさ」

 酒の為なら共通語も取得する、っていうのはすごい熱意だな。
 ……結局まだ行ってないみたいだけど。

「とはいえ、アキナのおかげで人間界の酒が手に入りそうだし、もうしばらくは行かなくてもいいかねぇ」

 ……さいですか。

「それよりも、だ。さっきは思わず酒の炭酸化に夢中になっちまったが、異世界の酒について聞いている途中だったねぇ」

「……ボクもおいしく飲めそそうなお酒とかあるかな~? そろそろお家に帰って、色んな炭酸ジュースを作ろうと思ったけど、ハクトの話を聞いてからにしよ~っと」

 ……他のお酒かぁ。
 ハヤテもいることだし、まずは甘いお酒について考えてみようかな。

 日本酒があるってことは、甘酒とかはありそうだよな。
 後は、甘い系のお酒で定番なやつは……、
  
「甘いお酒と言えば、コーヒーリキュールとか、カシスリキュールとかはあるか? コーヒーの方はミルクで割ったり、カシスの方は炭酸とかオレンジジュースとかで割って飲むのが定番なんだけど」

「あたいは、どっちも聞いたことがないねぇ。リキュールってことは、蒸留酒に漬ける、ってことだよなぁ。カシス、ってのは聞いたことがないし、コーヒー豆を酒に漬けるなんて、考えたこともなかったねぇ」

 ……詳しくないから知らなかったけど、リキュールって梅酒みたいな感じなのか。

「カシスっていうのは、聞いたことがあるわ。確か、薬草の一種みたいな扱いだったかしら。リキュールと言えば、薬草とか、一部の魔物とかをお酒に漬けたものは、昔から薬として飲まれているわ。それと、飲みやすくするために甘くしたものもあるわね」

「……そうなんだな。ああ、それと、カシスソーダとかはカクテルって呼ばれてて、色々なお酒とか果汁を混ぜてその場で作るみたいなんだ。全然詳しくはないんだけど、種類もすごくいっぱいあるみたいだったな」

「お酒に、色々な物を混ぜる……。今度、ジュースでやってみようかな~」

 あ、ハヤテが余計なことを思いついてしまったかも。
 ……まあ、子供がドリンクバーでやらかすみたいに、飲み物を無駄にする、ってことはしなさそうだけど。

「それは、興味深いわね。私も、ウイスキーをブレンドして、新しい味を作るってことはやっているけど、その発想は無かったわ。……もう少し詳しく知りたいのだけど、何か他に情報はないかしら?」

「うーん。……あ。ソフィアが持ってる本に、詳しく書いてある物があるかもしれないな」

 バーテンダーが出てきたり、主人公だったりする漫画があったはずだ。

「それなら、後でお邪魔しようかしらね。……それと、ハクトには解説をお願いしたいわ」

「あ、予定が合えばわたしも同席したいわ! 人間界にあるお酒に、似たものがあるかもだし! ……なにより、私の勘が商売になるって言ってるのよね」

 ……アキナの勘は、全く馬鹿にできないからなぁ。

「そのソフィアってやつは、人間界にいるみたいだねぇ。……あたいも同席してみたいけど、大丈夫かねぇ」

「そうね。とりあえず、後でソフィアに連絡してみるわね。……話を戻すけど、そのカシスとかコーヒーのリキュールは、どんな味がするのかしら?」

「コーヒーの方は、ミルクと砂糖が多めなコーヒーに、独特な風味がついた感じ、かな? お酒初心者の俺でもすごく飲みやすかったな。……ちょっと度数は高めだったけど」

「……ボク、ちょっと飲んでみたいかも~。それと、オレンジジュースを入れたっていう、カシスのカクテルもちょっと気になるかも~」

 ハヤテがお酒に興味を示したな。
 そして、それを聞いて目が光ったシーラとレイ。

 ……ハヤテの運命やいかに。

「えっと、まずカシスだけを割った味は、ベリー系の酸味と若干の苦味がある、甘酸っぱいお酒だったな。それで、カシスオレンジの方は、俺が飲んだやつはオレンジジュースの味が強めだったな。そこに、カシスの酸味とか苦味が加わった感じで、これも飲みやすくておいしかったよ」

「そうなんだ~。……ちょっと、甘いお酒に興味が出てきたかも~。今度飲んでみようかな~」

「ふふふ。それなら今度、色々と見てまわりましょ?」

 あ、レイにロックオンされた。

「えっ!? ……え~と、まずは自分で探してみたいかな~。……あ、それじゃあそろそろ戻るね~。新しいジュースの可能性を探りたくなってきちゃった! それじゃ、またね~」

 あ、転移した。

 それを見たレイとシーラは、

「あら、逃げられちゃったわね。……お酒の良さを知ってもらいたくて、少し焦り気味になってしまったかしら?」

「あたいも、気持ちはわかるけどねぇ」

 なんて、酒好き二人で共感しあっていた。

______________________________________

「まさか、呑まれるというのか……。この俺が、酒如きに……」

お酒は楽しく、飲み過ぎないようにしたいですね。

※気づいたら家に転移していて、その代償にスマホ等が無くなっていた、なんてことが無いようにご注意ください
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