異世界で 友達たくさん できました  ~気づいた時には 人脈チート~

やとり

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第九章

第137話 つまみ食い

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 温泉への旅行から帰って来た日から二日後、ソフィアの部屋を訪れていた。
 漫画の整理等いつもの作業をしに来た、というのもあるが、今日はもう一つの目的があった。

 現在は、
 
「……この、牛すじ煮込み。……おいしそう」

「そうですね。そちらの料理で使用しているのは、赤ワインですか」

 と、お酒を使った料理の漫画を集めているのだが、それは午後にここを訪れるアキナとレイの為でもあった。

 レイと水上都市に旅行へ行った時、異世界のお酒に関する知識を提供したが、その時にソフィアの漫画にも情報がある、みたいな話をした。
 今日は、アキナとレイがその漫画を読みにくるということで、わからないことがあれば俺に解説をお願いしたい、とのことだった。
 これがもう一つの目的だな。

 そして、それをソフィアに説明したところ、丁度いいのでお酒にあう料理、お酒を使った料理がメインで描かれた漫画をまとめよう、ということになり、今にいたっている。

 ソフィアは積極的にはお酒は飲まないため、普段はお酒を収納魔法でストックしていない。
 けれど、お酒を使った料理には前から興味があり、いつか挑戦しようと思っていたみたいなので、いい機会だったようだ。

 そして、今日も漫画を読みに来ていたメイも手伝っている、という感じだ。
 メイは元々食べるのが好きだし、最近は料理を手伝うようになったためか、どんな料理があるのか興味津々で、かなり積極的に手伝っている。



 ある程度整理が終わり、お腹も空いてきたということで、昼食を作ることにした。

 メニューは牛すじ煮込みがいい、となったのだが、さっき話題に上げたワインを使用するレシピではなく、ご飯によりよく合うよう、醤油やみりん、日本酒を使ったレシピだ。
 こっちもお酒を使う料理で、レシピもしっかりあったしな。

 下茹でも煮込みも、もちろんメイにおまかせで、トロトロの牛すじができた。
 後は、ご飯と、温泉旅行の話をした時に話題に出した温泉卵、汁物と箸休めを並べ、牛すじ煮込みの定食が完成した。

 味はもちろん格別で、味変で入れた温泉卵もほどよく固まっていて、こっちもおいしかった。
 ……こっちはソフィアが魔法を使って茹でたのだが、いつも通り料理に関しては流石だな。
 


 食事後、メイが

「おいしかった……。これ、レイに食べてもらいたい。……お酒のつまみにもなる」

 と言った。
 それに対して、ソフィアが

「それでしたら、アキナさんにも用意しなければかわいそうですね。私も手伝います」

 とのことで、二人でもう一度牛すじ煮込みを作ることにしたようだ。
 ……一品だけだし、流石に三人は必要ない、というかむしろ邪魔だよな。

 あ、そうだ。
 魔王に会ったことだし、そろそろ勇者と魔王の本を読んでみようかな。
 ちょうど、この教会の書庫にもあるみたいだしな。
 
 ソフィアから本の存在を聞いたのは、この世界に来てまだ一週間も経っていない頃だったな。
 ……我ながら、本当に全然読もうとしなかったなんだなぁ。
 
 というわけで、二人にはソフィアの部屋で本を読んでいると言い、教会の書庫から本を持ち出し、読んでみたのだが……

 「うーん。内容が中々頭に入ってこない……。何というか、難しい歴史小説って感じだ……」

 教会の書庫にある本は難しそうな本ばかりだったのだが、これも例外じゃなかったな……。
 うーん、前に言った本屋さんで、もっと簡単そうな本を探してみるかな。

 とりあえず、この本は元の書庫に返そうと顔を上げると、正面にいたアキナと目が合った。
 ……本に集中している内に、いつの間にか来ていたのか。

「おお、アキナか。すまん、本に集中していて気づかなかった」

「ハクト、こんにちは。それはいいのだけど、何を読んでいたのか聞いてもいいかしら? 文字を見た感じ、漫画ではなくてこちらの世界の本よね?」

「ああ。……前から読もうと思っていた、勇者と魔王の本だな。ただ、教会にあった本だからか、言い回しとか内容がちょっと難しくてな。とりあえずこの本は返却して、もっと読みやすい本を探そうかと思ったんだ」

 と言いつつ、アキナに表紙を見せた。

「なるほどね。その本は、起きたことをなるべく正確に記載しているけど、その分読みにくいのよね……。うーん。多少、いえ、かなり脚色されているけど、一般向けに書かれた本でもいいのであれば、そっちはかなり読みやすいわね。それなら、前行った本屋にあるわよ」

「あ、むしろそっちの方がいいかも。ありがとな」

「いえいえ。……むしろ、うちの系列店じゃないお店で買っちゃだめよ! なんてね」

 なんて、俺とアキナで話していると、

「……あの、ハクト。もしかしてこの前……。いや、ごめんなさい。ホムラに聞くのがいいわね」

 と、レイが何かを言いかけていた。
 ……ホムラって言っていたし、俺がマオ、つまり魔王と言われている存在に会ったかどうかを聞こうと思ったんだろうな。
 けど、アキナがいることで、聞くのをやっぱりやめた、って感じか。

「ホムラと言えば、変わった魔族に会ったな。色々と器用で、人間界から来た人たちの案内人もしてるみたいだったな」

 と、レイをちらりと見つつ話した。

「へー。もしかしたら、わたしも会っことがあるかもしれないわね」

「その魔族なら、よく知っているわ。……そう、あの子にあったのね」

 ……うん、レイにはきちんと伝わったみたいだな。



 それから、温泉街での旅行の話や、シーラの近況についての話で盛り上がっていると、ソフィアとメイが戻って来た。
 追加で作っていた牛すじ煮込みができたんだろうな。

「こんにちは。既にいらしていたのですね。漫画でおいしそうなおつまみを見つけましたので、そちらを試作してみました。帰宅の際に、持ち帰り用の容器に入れてお渡ししますね」

「……おいしくできた。……ご飯との相性も、確認済み」

 味見という名のつまみ食いだな。
 というか、さっき昼食で食べたのに、またご飯も食べたのか……。

 まあ、それは置いておいて、本来の目的であるお酒関連の漫画だな。
 
 異世界に飲み屋がある某作品は、俺のいた世界のお酒や料理を、こことはまた違った文化や環境ではあるが、異世界の人物が食べるということで、興味を引いたみたいだ。
 この世界に伝わっていたり、元々存在する似たような料理もあるため、二人ともついお酒が飲みたくなってきたようだ。

 また、バーテンダーが主人公の漫画もあり、こちらは様々なカクテル等が出てきた。
 ただ、こっちは出てくるリキュールは知らないものも多く、どんなお酒かは説明しにくいものも多かった。

 一応、漫画の描写や説明などから、多分これはこんな材料を使っていそう、みたいな説明ができるお酒もあった。
 それに、○○のような香り、とか、○○のような味、みたいな説明から、似たようなお酒を類推できたものもあったみたいで、色々と収穫はあったようだ。

 ある程度漫画を読み終わった後、二人とも何だか飲みたくなってきた、ということで、牛すじ煮込みとの相性を確認するというていで、持ち歩いているお酒を飲み始めた。
 
「うーん。わたしはビールかしら?」

「俺は、この焼酎との組み合わせが好きかな。炭酸で割って飲むと、さっぱりしていい感じかも」

「私は日本酒かしら。けど、他との組み合わせも悪くはないわね」

「……私は、やっぱりご飯」

「おいしく食べられるのが一番ですね。私は、どの組み合わせもおいしかったです」

 まあ、俺も含め、全員が食べたんだけどさ。
 ……これを見越していたのか、大量に牛すじ煮込みが作ってあったのには驚いたけど。

 そんな感じで程よくお酒もまわって来たので、今日は解散となった。

 さて、明日はさっそく本屋さんに行ってみるか。
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