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第九章
第138話 とんでもソフィアと魔王説得用メシ
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アキナたちが来てから三日後、今日はアオイと俺、リューナと同行者二名でアオイおすすめの旅行先に来ていたのだが……
「……ハクト君。少し、調子が悪いのではないかい? ここに来たばかりなのに、何度かうわの空になっているよ」
「昨日準備に伺った時も、様子がいつもと違うようでした。ただ、ハクト様は問題ないとのことでしたし、念のため魔法で確認したところ、体調も問題ないようでしたので、大丈夫だと思ったのですが……」
アオイにリューナ、そして同行者二人も心配そうな表情でこちらを見ていた。
……さて、どう言ったものか。
「あー、えっと。まずは、心配させてすまん。何というか、自分の中で考えをまとめたいことがあってな。つい、無意識にそれを考えてしまったみたいだ。……すまんがリューナ。もしまたそうなってたら気づかせてほしいかも。この旅行も楽しみたいからさ」
「わかりました。まずは、体調が悪いようでなくてよかったです」
「そうだね。……私も、上手く動作しない試作品がある時に、似たようになっていると指摘されるよ。それに、これからは悩む時間も与えないくらい、面白い物を色々と見ることになるから、そっちも心配いらないさ」
と、アオイが言ってくれた。
……うん、今色々と考えても仕方ない内容だし、あんまり考えないようにしないとな。
何故こうなってしまったかというと、切っ掛けは一昨日に読んだ本の影響だ。
◇
その日は、色々と必要な物を買いつつ、本屋さんへと向かっていた。
昨日アキナに教えてもらった、勇者と魔王の本を買いに行くためだ。
本屋さんでは、目的の本は目につく場所に置いてあったため、簡単に見つけることができた。。
やっぱり、有名な本なんだろうな。
他にも気になった本と一緒に購入し、宿泊場所に戻ったところでさっそく読んでみたのだが……
「うーん。なんというか、囚人のジレンマみたいな話みたいというか……」
途中までは、前に聞いた魔王の話にある程度沿いつつ、正義の勇者が悪者の魔王を退治する、っていうよくある勧善懲悪な話だった。
けど、その後の話は完全に創作になっていた。
魔王を懲らしめた勇者は、力で支配するよりも、協力する方がより良い結果となること魔王に説いた。
例えばここ人間界では、各国が協力し合うことで、様々な物を手に入れることができる。
そして、そのおかげで生まれた物も色々とあるのだと。
そう言いつつ勇者は、魔王にカレーライスを差し出した。
……この部分を読んだ時は、何故カレーなんだ……という感想と、ソフィアの顔が浮かんだ。
多分、いや、ほぼ確実に何かしら関係しているだろうな。
まあそれは置いておいて、勇者はそれぞれの具材を差しては、これは暖かい○○という国、これは寒い○○という国から持ち込まれたのだ。
そして、お互いの仲が悪ければこれらの食材は手に入らず、この料理は完成しない、と魔王に説明した。
それを聞いた魔王は、ならばすべての地域を支配し、それを作れと命令すればいい、と答えた。
それに対して勇者は、まずはそれを食すよう魔王に告げた。
魔王は、カレーを一口、食べたと思ったらすごい勢いで平らげると、こんなにうまい料理は初めてだ、と言った。
そして勇者は魔王に対し、君が仮にカレーライスを作れと命令したとして、ここまでおいしいカレーライスができるのか、作る人自らがおいしいカレーライスを作ろうと思わなければ、そうはならないと私は思う、と反論した。
魔王はそれに対して答えられず、その様子を見た勇者は、命令するのではなく、協力し合うことのメリットを話していく、といった感じだった。
そして、協力し合うことの良さを学んだ魔王は、自ら進んで魔界で罰を受けると宣言し、勇者は協力し合う大切さを証明するため、魔王とともに魔界へと旅立った。
魔界には、魔王よりも強い力を持つ、魔界をまとめる存在たちがいたが、あの魔王を改心させた勇者を信用し、人間界との交流を始めることにした。
そして現在では、魔界から様々な食材や素材が持ち込まれ、私たちはその恩恵を受けている、といった感じで話は終わった。
……うーん。なんというか、後半部分に関しては、勇者と魔王の歴史というよりも道徳的な話、って感じだったな。
この本は、小さい子でも読めるように書かれているし、それもが一番の目的ってことなのかな。
そういえば前にホムラが、魔界と人間界が繋がった後では、人間界では戦争はしていないらしい、って言っていた。
そういった色々な背景があって、今の話になったのかもしれないな。
ただ、気になる事があった。
この本を読んだ感じ、魔王は最初は悪い存在だったけど、最後は勇者によって改心した、みたいな話になっていた。
そして、魔界とは友好的な関係を築き、それが今でも続いている、って感じだった。
魔界をまとめる存在、つまり魔皇については、魔王より強い、くらいの情報しかなかったし、怖い存在だという感じで書いてはいなかったな。
……こっちは実在する本人たちに配慮して、ってことかもしれないけど。
うーむ、この本を読んだだけでは、魔族が怖い、って印象になりにくい気もするんだけど……。
そうだ、前に褐色のエルフであるメレスに会った時、リューナの正体を明かしても、元ドラゴン、ってところには驚いていたけど、魔族だということはあまり気にしていなかったな。
魔族は出会う機会がほとんどないから、警戒するも何もない、とも言っていたな。
いや、けど、この国の王様に会った時は、魔族と一般市民同士では難しい問題が残っている、みたいなことを言っていたな。
……すべての家庭で、というわけではないが、魔族は怖い存在として親から教えられている、とかなんだろうか?
だからあえて、勇者と魔王を題材にして道徳的な話を書いた、とか?
……というか、メレスの話を聞いた時に、他の色んな人にも話を聞いてみようと思ったんだった。
なぜ、それを忘れていたんだろうか?
……ああ、そうだ。
ソフィアがいつの間にか俺の家の設計図を作成してて、しかもそれがとんでもない内容だったから、その衝撃で忘れていたのか。
とりあえず、今まで俺が出会ってきた人たちの反応を思い出してみるか。
クレアやパティオさん、ユズとかは大きな反応を示していたな。
一方で、ベイラとかディニエル、イズレとかはそうでもない印象だった。
……後者は、本人たちの性格から、とも思っていたけど、違っていたのだろうか?
うーむ、全然わからない……。
◇
とまあ、こんな感じでその日は色々と悩み、今もそれを考えてしまっている、って感じだ。
この旅行が終わった後に、またお城に集まって話し合いをしよう、ってことになっているから、そこで色々と聞いてみよう、って結論を出したんだけど、ふとまた考えてしまうんだよな。
……よしっ!
旅行に集中するために、旅行に来た現状を再確認するか。
まずは、今日の旅行先だ。
到着してすぐに、ここは様々な魔道具を生活に活用している、アオイが責任者となっている街だと説明してくれたな。
それと、時差についても説明があったな。
俺のいた街では朝だったけど、こっちは夕暮れ時だった。
この街は、魔道具のおかげで夜でも快適に過ごせるようで、レイやホムラと違って時差は気にしなかった、ということだった。
……ハヤテの名前がなかったのは、まあ、言わずもがなだろう。
後は、同行者だな。
魔道具ということで、一人目はもちろんベイラ。
そして二人目なのだが、ディニエルだった。
水上都市での話をリューナから聞いたことで、魔族の服装に興味を持ったこと、この街は様々な種族の魔族が暮しているらしいこと、知り合いであるベイラが一緒であること、といった理由で同行することにしたようだ。
……そしてイズレは、こちらへの同行を断られてしまった、と。
なんて考えていると、
「ハクト。また考えてる」
と、ディニエルに指摘されてしまい、結果として本末転倒なことをしてしまったな。
……うん、周りの景色を楽しむ方向にした方がいいかもな。
「……ハクト君。少し、調子が悪いのではないかい? ここに来たばかりなのに、何度かうわの空になっているよ」
「昨日準備に伺った時も、様子がいつもと違うようでした。ただ、ハクト様は問題ないとのことでしたし、念のため魔法で確認したところ、体調も問題ないようでしたので、大丈夫だと思ったのですが……」
アオイにリューナ、そして同行者二人も心配そうな表情でこちらを見ていた。
……さて、どう言ったものか。
「あー、えっと。まずは、心配させてすまん。何というか、自分の中で考えをまとめたいことがあってな。つい、無意識にそれを考えてしまったみたいだ。……すまんがリューナ。もしまたそうなってたら気づかせてほしいかも。この旅行も楽しみたいからさ」
「わかりました。まずは、体調が悪いようでなくてよかったです」
「そうだね。……私も、上手く動作しない試作品がある時に、似たようになっていると指摘されるよ。それに、これからは悩む時間も与えないくらい、面白い物を色々と見ることになるから、そっちも心配いらないさ」
と、アオイが言ってくれた。
……うん、今色々と考えても仕方ない内容だし、あんまり考えないようにしないとな。
何故こうなってしまったかというと、切っ掛けは一昨日に読んだ本の影響だ。
◇
その日は、色々と必要な物を買いつつ、本屋さんへと向かっていた。
昨日アキナに教えてもらった、勇者と魔王の本を買いに行くためだ。
本屋さんでは、目的の本は目につく場所に置いてあったため、簡単に見つけることができた。。
やっぱり、有名な本なんだろうな。
他にも気になった本と一緒に購入し、宿泊場所に戻ったところでさっそく読んでみたのだが……
「うーん。なんというか、囚人のジレンマみたいな話みたいというか……」
途中までは、前に聞いた魔王の話にある程度沿いつつ、正義の勇者が悪者の魔王を退治する、っていうよくある勧善懲悪な話だった。
けど、その後の話は完全に創作になっていた。
魔王を懲らしめた勇者は、力で支配するよりも、協力する方がより良い結果となること魔王に説いた。
例えばここ人間界では、各国が協力し合うことで、様々な物を手に入れることができる。
そして、そのおかげで生まれた物も色々とあるのだと。
そう言いつつ勇者は、魔王にカレーライスを差し出した。
……この部分を読んだ時は、何故カレーなんだ……という感想と、ソフィアの顔が浮かんだ。
多分、いや、ほぼ確実に何かしら関係しているだろうな。
まあそれは置いておいて、勇者はそれぞれの具材を差しては、これは暖かい○○という国、これは寒い○○という国から持ち込まれたのだ。
そして、お互いの仲が悪ければこれらの食材は手に入らず、この料理は完成しない、と魔王に説明した。
それを聞いた魔王は、ならばすべての地域を支配し、それを作れと命令すればいい、と答えた。
それに対して勇者は、まずはそれを食すよう魔王に告げた。
魔王は、カレーを一口、食べたと思ったらすごい勢いで平らげると、こんなにうまい料理は初めてだ、と言った。
そして勇者は魔王に対し、君が仮にカレーライスを作れと命令したとして、ここまでおいしいカレーライスができるのか、作る人自らがおいしいカレーライスを作ろうと思わなければ、そうはならないと私は思う、と反論した。
魔王はそれに対して答えられず、その様子を見た勇者は、命令するのではなく、協力し合うことのメリットを話していく、といった感じだった。
そして、協力し合うことの良さを学んだ魔王は、自ら進んで魔界で罰を受けると宣言し、勇者は協力し合う大切さを証明するため、魔王とともに魔界へと旅立った。
魔界には、魔王よりも強い力を持つ、魔界をまとめる存在たちがいたが、あの魔王を改心させた勇者を信用し、人間界との交流を始めることにした。
そして現在では、魔界から様々な食材や素材が持ち込まれ、私たちはその恩恵を受けている、といった感じで話は終わった。
……うーん。なんというか、後半部分に関しては、勇者と魔王の歴史というよりも道徳的な話、って感じだったな。
この本は、小さい子でも読めるように書かれているし、それもが一番の目的ってことなのかな。
そういえば前にホムラが、魔界と人間界が繋がった後では、人間界では戦争はしていないらしい、って言っていた。
そういった色々な背景があって、今の話になったのかもしれないな。
ただ、気になる事があった。
この本を読んだ感じ、魔王は最初は悪い存在だったけど、最後は勇者によって改心した、みたいな話になっていた。
そして、魔界とは友好的な関係を築き、それが今でも続いている、って感じだった。
魔界をまとめる存在、つまり魔皇については、魔王より強い、くらいの情報しかなかったし、怖い存在だという感じで書いてはいなかったな。
……こっちは実在する本人たちに配慮して、ってことかもしれないけど。
うーむ、この本を読んだだけでは、魔族が怖い、って印象になりにくい気もするんだけど……。
そうだ、前に褐色のエルフであるメレスに会った時、リューナの正体を明かしても、元ドラゴン、ってところには驚いていたけど、魔族だということはあまり気にしていなかったな。
魔族は出会う機会がほとんどないから、警戒するも何もない、とも言っていたな。
いや、けど、この国の王様に会った時は、魔族と一般市民同士では難しい問題が残っている、みたいなことを言っていたな。
……すべての家庭で、というわけではないが、魔族は怖い存在として親から教えられている、とかなんだろうか?
だからあえて、勇者と魔王を題材にして道徳的な話を書いた、とか?
……というか、メレスの話を聞いた時に、他の色んな人にも話を聞いてみようと思ったんだった。
なぜ、それを忘れていたんだろうか?
……ああ、そうだ。
ソフィアがいつの間にか俺の家の設計図を作成してて、しかもそれがとんでもない内容だったから、その衝撃で忘れていたのか。
とりあえず、今まで俺が出会ってきた人たちの反応を思い出してみるか。
クレアやパティオさん、ユズとかは大きな反応を示していたな。
一方で、ベイラとかディニエル、イズレとかはそうでもない印象だった。
……後者は、本人たちの性格から、とも思っていたけど、違っていたのだろうか?
うーむ、全然わからない……。
◇
とまあ、こんな感じでその日は色々と悩み、今もそれを考えてしまっている、って感じだ。
この旅行が終わった後に、またお城に集まって話し合いをしよう、ってことになっているから、そこで色々と聞いてみよう、って結論を出したんだけど、ふとまた考えてしまうんだよな。
……よしっ!
旅行に集中するために、旅行に来た現状を再確認するか。
まずは、今日の旅行先だ。
到着してすぐに、ここは様々な魔道具を生活に活用している、アオイが責任者となっている街だと説明してくれたな。
それと、時差についても説明があったな。
俺のいた街では朝だったけど、こっちは夕暮れ時だった。
この街は、魔道具のおかげで夜でも快適に過ごせるようで、レイやホムラと違って時差は気にしなかった、ということだった。
……ハヤテの名前がなかったのは、まあ、言わずもがなだろう。
後は、同行者だな。
魔道具ということで、一人目はもちろんベイラ。
そして二人目なのだが、ディニエルだった。
水上都市での話をリューナから聞いたことで、魔族の服装に興味を持ったこと、この街は様々な種族の魔族が暮しているらしいこと、知り合いであるベイラが一緒であること、といった理由で同行することにしたようだ。
……そしてイズレは、こちらへの同行を断られてしまった、と。
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