異世界で 友達たくさん できました  ~気づいた時には 人脈チート~

やとり

文字の大きさ
161 / 161
第九章

第152話 元の龍の背に乗って(願望)

しおりを挟む
 さて、ちょっとメイから聞いた話を整理してみるか。

 まず、あの本を書いた作者は、魔族に対して好印象だと感じ取れた。
 そして、魔皇側は、今の魔族に対する印象について、あまりわかっていない、ってことだな。

 なんて考えていると、

「あの、少し良いでしょうか? 先ほどの話を聞いていますと、私たち人間族が、魔族の方に対してどのような印象を持っているか、が知りたいということでしょうか? ……あくまでも、私やその周りの方が、ということでしたら、お話しできます」

「え、本当か? ……モニカがいいなら、お願いしたいな」

 ここは魔界だし、あえて今はモニカに聞かなかったんだけど、話してくれるみたいだ。

「……わからない、というのが正直なところだと思います。まず、魔族の方を見かけることがほぼなく、パレードの時に遠目から魔皇の方を見る、位だと思います。それと、魔族の方が出てくる物語もありますが、こちらも実際に会って話したわけではありませんので」

「まあ、そうなるのか。……もしも答えにくかったいいんだけど、子供の頃に魔族について誰かから教えてもらう、といったことはないのか?」

「そういったことは、少なくとも私は知らないですね。身近にはいない存在ですので、その、そもそも話題に上がらないことが多いです」

 ……考えてみれば、そうか。
 例えば、俺が普段生活していても、遠くの国の人を話題に出すことって、何か切っ掛けがない限りはないもんな。

 そして、魔族は人間界に行く場合、魔法を使って魔族とわからないようにしている、と。

「なるほどな。確かに、魔族の印象を聞かれてもわからない、っていうのはその通りかもしれない。ありがとな」

「いえ。ただ、私の場合は、ハクトさんのお陰でメイさんを始め何人かの魔族の方と仲良くなる機会があったので、とても好意的な印象を持っていますよ」

「……私も、モニカ、好き。……ご飯、おいしそうに、食べてくれるから」

「え!? その、えっと、ありがとうございます?」

「……どういたしまして?」

 なんか最後は変な感じになっちゃったけど、モニカの話はかなり参考になった。

 ……まず、事の始まりは魔王、マオが人間界に乗り込んで迷惑をかけたのが交流の始まりだった。
 だから、魔族側からすると、人間界に対しての引け目がある、ってことなんだよな。

 それで、人間界では魔族とわからないようにしたり、人間族が魔界に旅行に来るときも、できるだけ安全に、そして悪い印象を抱かないように、ってことをしているんだと思う。

 その結果、ほとんどの人間族や魔族間で交流する機会がない、ってことなんだろう。

 つまり結局のところ、それぞれが交流する切っ掛けを作ればいい、って結論になると。
 ……何も進んでないかもだけど、少なくともそれが再確認できたし、色々と悩んで良かったかもな。



 食休みを終え、午後もまた読書タイムになった。
 ……というか、メイはそれ以外の予定は考えていなかったという事実が発覚した。

 夕食は、メイとリューナで適当に買いに行く予定だったらしい。
 そして寝る場所として考えていたのは、なんとこの図書館にある仮眠室だった。

 けど、前回アオイが魔皇の城に俺たちを案内したのを見たメイは、ソフィアたちに城を案内したい、と考えたようだ。
 その結果、宿泊場所を魔皇の城に変更することにしたらしい。
 
 ……メイの順番が、アオイの後でよかったよ。

 それと、魔族について色々と考えが整理できたことで、午後の読書はかなり捗った。
 午前中に読んだ本の続きを読んだのだが、リューナがおすすめするだけあって、続刊の方もかなり面白く感じた。

 龍に乗って魔界中を巡り、二人で喧嘩をしたり、困っている魔族の問題を解決したり、強敵と対峙したりと、様々なエピソードがあった。
 また、二人で考案した連携魔法なんてものもあり、強敵との戦闘シーンではそれが炸裂し、思わず興奮してしまった。

 魔界中を巡った二人は、自分たちと同じ境遇の魔族たちを何度も見て来た。
 そして終盤では、そんな魔族たちの為の街を作ろう、という流れになっていった。

 その途中、龍が元居た場所の仲間たちにも協力を要請するシーンがあったんだけど、そこもよかったな。
 特に、主人公の魔族が言った、「君たちは、自由に空を舞う翼を持っているのに、戦うだけでしか強さを表せないのか?」と言うセリフの前後はかなり好きな場面だ。

 最後は無事街ができ、その街の代表には一番強い魔族ではなく、主人公の魔族が選ばれ、話は終わった。

 本の舞台には、俺が魔界旅行で行った水上都市や温泉街、さらには魔道具の街まで出てきていた。
 この作者はおそらく、魔界中あちこちを巡ったのだろうな。
 流石に、魔皇の城は出てこなかったけどな。

 本を読み終わり、リューナが良ければ感想を言い合いたいな、何て思いつつ顔を上げると、リューナが何かを期待した目でこちらを見ていた。
 ……リューナも、感想を言い合いたいのだろうか?

 なんて、最初は思っていたんだけど、話が盛り上がったところで、俺がポロっと

「けどやっぱり、相棒である龍の背中に乗って魔界中を巡る、っていうのはちょっと憧れるなー」

 なんて言ったところ、

「やはり、ハクト様もそう思いますよね! ところで、私は龍に変身できるのですが、背中に乗ってみませんか?」

 なんて、かなり食い気味に言われてしまった。
 
 ……憧れる、とは言ったけど、実際に龍の背中に乗って飛ぶ、っていうのはかなり怖そうだ。
 興味はないわけじゃないんだけど、けどなぁ。

 ……うん、とりあえず

「万が一の為に、飛行魔法の制御が上達してからにしたいかな」

 なんて言って保留にすることにした。
 ……飛行魔法、最近は全然練習してなかったな。



 図書館でのんびりと過ごしていると、夕食時が近い、そろそろ魔皇の城に移動する、と言った。
 その時、ソフィアは本に集中していのたが、夕食、という言葉に反応していた。

 ……今度から、本に集中している時のソフィアに用がある場合には、食事の話をしてみることにしょうかな。

 それと、三日間ずっと読書というのは、流石のメイも長いと判断したようで、今回の旅行は一泊二日の予定みたいだ。
 考えてみれば、いつも二泊三日だったので、何となく短く感じるな。

 城では前回、いや、いつものように、魔皇の皆と雑談したり、食事を取ったりした。

 雑談中、俺が前にメイに話した、俺のいた世界では機械で本が読める、といった内容を元に、アオイに試作品をお願いしたという話題になった。

 機能としては、予め本の内容を魔道具に保存し、それを使用するとリンフォンみたいに頭に文字が浮かぶ、といったもののようだ。
 メイが使用した感想としては、最初は本を持たなくて楽だと思った、けど、話が頭に入ってきにくかったり、本の内容を魔道具に保存するのが大変、ということだった。 
 それに、本をめくるあの感覚も大事、ということもあり、やっはり本は紙で読むのがいい、という結論になったそうだ。

 開発者のアオイは、何か別の用途で使えそうかも、ということで、後で魔道具の街に展示してみることにしたようだ。

 俺も、スマホで本を読んではいるけど、あの紙をめくる感覚は結構好きだな。
 それに、所有欲的なものも満たせるし。

 とはいえ、本はかなりかさばるので、収納場所に困るという問題もあって、結局は電子書籍で読むことが多かった。
 サブスクとかもあるしな。

 サブスクはともかく、そんな話をメイにしたら、収納の魔道具があるから、それは問題ない、とのことだった。
 やっぱり、魔法って便利だよなぁ。 

 ……この魔道具、元の世界に持ち込めないかな?
 いや、誰かに見られると大変だし、やめておいたほうがいいな。

______________________________________
書いて読むコンテストの11に参加中です! がんばります!
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

社畜の異世界再出発

U65
ファンタジー
社畜、気づけば異世界の赤ちゃんでした――!? ブラック企業に心身を削られ、人生リタイアした社畜が目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界。 前世では死ぬほど働いた。今度は、笑って生きたい。 けれどこの世界、穏やかに生きるには……ちょっと強くなる必要があるらしい。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。 そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。 しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの? 優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、 冒険者家業で地力を付けながら、 訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。 勇者ではありません。 召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。 でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

処理中です...