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第九章
第151話 カレー出す一存(出店で)
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「それで、今日の昼食はどんな予定になってるんだ?」
まさか、食堂が図書館にあるとか?
……見渡した感じ、そこまで利用者がいる感じでもないし、それはないかな?
「……食事してもいい場所が、ある。……お弁当、作ってきた」
やっぱり食堂は無かったか。
いや、それよりも、
「作ってきたって、メイが作ったってこと、だよな?」
「……レイに、食材を切ってもらった」
「それ以外はメイが調理した、ってことでいいのか?」
改めてそう聞くと、メイはこくり、と頷いた。
「……自分で作れると、食べたいものが食べられる。……まだ、色んな種類は作れない。……けど、いつでも食べれるのは、嬉しい」
なるほど。
元々食べるのが好きだったし、煮込み料理も作れるようになっていたもんな。
そこからさらに、色々と挑戦し始めている、ってことか。
「わかります。私も、そのために料理をしていますので。ただ、手間がかかる料理は他の方にお願いしますが」
レシピをお店に提供したりしてな。
「……いいこと、考えた。……自分たちで、料理屋を経営すれば、どんな料理でも、食べれる」
「それは、よい考えかもしれません」
……いや、流石にそれは難しいんじゃないだろうか。
それに資金とか……、いや、ソフィアもだけど、魔皇であるメイもいっぱい持っていそうだ。
「……それなら、場所は、どうする?」
なんか、具体的な話を始めてるし……。
「って、まず先にお昼にしないか?」
「そうですね。ハクトさんの世界では、腹が減っては戦はできぬ、ということわざがありましたね。よいことわざだと思います。何事も、空腹では身に入りませんから」
「……まあ、そうだな」
ということで、食事用のスペースに移動した。
◇
食事用のスペースには、机と椅子のみというシンプルな物だった。
それと、食事中の読書は禁止、とでかでかと書かれていた。
……うん、それをやる人が多かったんだろうな。
リューナが食器を並べ終わったところで、メイが収納の魔法で大きな鍋を取り出し、机の横に置いた。
……かなり大きいな。
次に、大きなバスケットを取り出し、机の上に。
そして最後に、他のよりは小さ目な、タッパーのような容器を取り出した。
他はわからないけど、あの鍋から香ってくるこの匂いは、確実にカレーだな。
そしてリューナが、バスケットの中身を取り出し、全員の皿に配ってくれた。
「これは、なんでしょうか?」
「ナンですね」
「ナン、ですか?」
「ナンですね」
……いや、うん。
ソフィアは説明してるだけだよな。
いや、そもそも喋っている言葉が日本語じゃなかったな。
そしてカレーと、タッパーっぽい箱に入っていたサダラも配膳してもらった。
というわけで、メイが作って来たのは、カレーとナン、そして付け合わせのサラダだった。
「……どうぞ、召し上がれ。……おいしくできた、と思う」
メイは、少し不安そうな表情だな。
……焦らすのもあれだし、さっそくいただいてみるか。
それに、空腹にこの匂いは、弥が上にも食欲をそそるしな。
ナンをちぎり、カレーを付けて、パクリ。
「うん、うまい! 辛さもいい感じだし、ナン自体もうまいな」
「そうですね。お店で出しても大丈夫な味だと思います」
……ソフィアの感想、なんとなーく、さっきの出店の話に釣られている気がするのは、気のせいだろうか。
「……私は、ナン、というものを始めて食べたのですが、とってもおいしいですね。こちらのカレーも初めて食べる種類の味ですが、このナンによく合っていて、おいしいです」
「私は、以前エルフの村でいただいたことがありますが、ソフィアさんの言う通り、お店の味にも負けていないと思います。カレーはじっくりと煮込まれていて、それでいてお肉はかたくなっておらず、とてもおいしいです」
うん、皆も絶賛だな。
それを聞いたメイは、自分も一口食べて
「……うん、きちんとできてる。……よかった」
と、顔をほころばせた。
「メイさん。カレーには闇魔法を使用していると思いますが、もしかして、ナンの発酵にも使用しているのではないでしょうか? ナンだけを味わってみたところ、そう感じました」
「……流石はソフィア。……正解。……最初は、発酵しすぎちゃったりして、難しかった。……ヒカリに相談して、上手くできるようになった」
「そうでしたか。それですと、発酵が必要ないチャパティの方が、簡単に作れそうですね」
……まだ、お店について考えてそうだな。
「……もしかしたら、魔道具にできる、かも。……それと、ソフィア。……ナン、おかわり、あるよ? ……もちろん、カレーも。……それと、チーズナンも、作ってみた」
お、それは俺も食べたい。
皆も気になったようで、全員がチーズナンも食べていた。
それと、スパイスも自分で調合したようだ。
俺が前にお土産としてヒカリに渡したスパイスを分析して、そこからアレンジしたらしい。
……出店できそうな理由が、どんどん出てくるな。
◇
あー、おいしかった。
結構な量があるように思えたが、食べきってしまったな。
……まあ、主に食べていたのはメイとソフィアだけど。
それに、出店にはメイも乗り気みたいで、ナンを食べつつソフィアと色々と話し合っていた。
あの感じからして、本当に出店しそうだな。
……あっ! カレーで思い出した。
後で勇者と魔王の本について、聞こうと思っていたんだった。
今は食休みって感じな雰囲気だし、ちょうどよさそうだ。
「メイ、ちょっと確認したいことがあるんだが、いいか? この本についてなんだけど」
と、俺が本屋さんで買った例の本を見せた。
「……人間界の、本?」
「ああ。これは勇者と魔王の物語の本なんだけど、どうやら魔界に伝わっている本とかなり内容が違いそうなんだ。この辺り、読んでもらっていいか?」
「……わかった」
と、メイに確認してもらうと
「……次は、カレーライスを作る」
なんて言われた。
「いや、あの、メイさん?」
「……冗談。……確かに、魔界に伝わっている話とは、全然違う。……この本は、創作性が高い物語になってる。……それでいて、誰でも読みやすいよう、わかりやすく書かれている、と思う。……魔界の本は、もっと事実に近い感じ」
「やっぱり、そうなんだな」
「……それと、この本の著者は、魔族に好印象をもってそう、かも。……魔王に対しても、悪感情は、なさそう、かも?」
俺は、そこまでは感じ取れなかったな。
けど確かに、魔族や魔王に関して、悪い人、って感じでは書かれていない印象は受けたな。
それと、色々と本を読んでるだけあってか、本からそこまで読み取れるのは流石って感じだ。
「ってことは、その本を読んだだけだと、魔族に対しての印象は悪くはならなそうだな。……もしかしたら、人間族で魔族に悪い印象を持ってる人は、そんなにいないんじゃないか? 少なくとも、昔よりは減っていると思う」
「……そう、かな? ……もしそうなら、嬉しい、かも」
前も考えたけど、俺が出会った人の中で、魔族を悪く言っている人は一人もいなかったんだよな。
「なあ、メイ。魔皇たちって、度々人間界に行っているけど、魔族に対する話とかは聞かなかったのか?」
「……私は、あまり人間界に行かないから、ないかな。……ハヤテは、それを聞くのが苦手そうで、無意識に避けている、かも? ……ホムラは、長い目で見ているから、気にしていなさそう。……レイは、酒場とかも行くから、悪い話も聞いている、かも? ……けど、内容には偏りがありそう、かも。……アオイは、魔道具ばかりみてそう、かも」
……なるほど。
言われてみれば、その通りかもしれない。
もしそうだとしたら、今の人間族が魔族に対してどう思っているか、知るすべはあんまりなさそうかもな。
というか、
「もっと早く、メイに話を聞けばよかったかもな。皆のことよく見ているようだし、分析も的確な気がするし」
「……本を書くのに、参考にしているから。……もちろん、ハクトも」
「あー、そういうことか。……俺を元にした人物が本に出てくるかも、って考えると、ちょっと恥ずかしいかも」
「……大丈夫。……わかる人にしかわからないし、悪い人物としては出てこない」
「それならいい、のかな?」
まあ、俺を知っている人は人間界と魔界、どっちの世界にも少ないし、単なる物語の登場人物、で終わるだろうな。
まさか、食堂が図書館にあるとか?
……見渡した感じ、そこまで利用者がいる感じでもないし、それはないかな?
「……食事してもいい場所が、ある。……お弁当、作ってきた」
やっぱり食堂は無かったか。
いや、それよりも、
「作ってきたって、メイが作ったってこと、だよな?」
「……レイに、食材を切ってもらった」
「それ以外はメイが調理した、ってことでいいのか?」
改めてそう聞くと、メイはこくり、と頷いた。
「……自分で作れると、食べたいものが食べられる。……まだ、色んな種類は作れない。……けど、いつでも食べれるのは、嬉しい」
なるほど。
元々食べるのが好きだったし、煮込み料理も作れるようになっていたもんな。
そこからさらに、色々と挑戦し始めている、ってことか。
「わかります。私も、そのために料理をしていますので。ただ、手間がかかる料理は他の方にお願いしますが」
レシピをお店に提供したりしてな。
「……いいこと、考えた。……自分たちで、料理屋を経営すれば、どんな料理でも、食べれる」
「それは、よい考えかもしれません」
……いや、流石にそれは難しいんじゃないだろうか。
それに資金とか……、いや、ソフィアもだけど、魔皇であるメイもいっぱい持っていそうだ。
「……それなら、場所は、どうする?」
なんか、具体的な話を始めてるし……。
「って、まず先にお昼にしないか?」
「そうですね。ハクトさんの世界では、腹が減っては戦はできぬ、ということわざがありましたね。よいことわざだと思います。何事も、空腹では身に入りませんから」
「……まあ、そうだな」
ということで、食事用のスペースに移動した。
◇
食事用のスペースには、机と椅子のみというシンプルな物だった。
それと、食事中の読書は禁止、とでかでかと書かれていた。
……うん、それをやる人が多かったんだろうな。
リューナが食器を並べ終わったところで、メイが収納の魔法で大きな鍋を取り出し、机の横に置いた。
……かなり大きいな。
次に、大きなバスケットを取り出し、机の上に。
そして最後に、他のよりは小さ目な、タッパーのような容器を取り出した。
他はわからないけど、あの鍋から香ってくるこの匂いは、確実にカレーだな。
そしてリューナが、バスケットの中身を取り出し、全員の皿に配ってくれた。
「これは、なんでしょうか?」
「ナンですね」
「ナン、ですか?」
「ナンですね」
……いや、うん。
ソフィアは説明してるだけだよな。
いや、そもそも喋っている言葉が日本語じゃなかったな。
そしてカレーと、タッパーっぽい箱に入っていたサダラも配膳してもらった。
というわけで、メイが作って来たのは、カレーとナン、そして付け合わせのサラダだった。
「……どうぞ、召し上がれ。……おいしくできた、と思う」
メイは、少し不安そうな表情だな。
……焦らすのもあれだし、さっそくいただいてみるか。
それに、空腹にこの匂いは、弥が上にも食欲をそそるしな。
ナンをちぎり、カレーを付けて、パクリ。
「うん、うまい! 辛さもいい感じだし、ナン自体もうまいな」
「そうですね。お店で出しても大丈夫な味だと思います」
……ソフィアの感想、なんとなーく、さっきの出店の話に釣られている気がするのは、気のせいだろうか。
「……私は、ナン、というものを始めて食べたのですが、とってもおいしいですね。こちらのカレーも初めて食べる種類の味ですが、このナンによく合っていて、おいしいです」
「私は、以前エルフの村でいただいたことがありますが、ソフィアさんの言う通り、お店の味にも負けていないと思います。カレーはじっくりと煮込まれていて、それでいてお肉はかたくなっておらず、とてもおいしいです」
うん、皆も絶賛だな。
それを聞いたメイは、自分も一口食べて
「……うん、きちんとできてる。……よかった」
と、顔をほころばせた。
「メイさん。カレーには闇魔法を使用していると思いますが、もしかして、ナンの発酵にも使用しているのではないでしょうか? ナンだけを味わってみたところ、そう感じました」
「……流石はソフィア。……正解。……最初は、発酵しすぎちゃったりして、難しかった。……ヒカリに相談して、上手くできるようになった」
「そうでしたか。それですと、発酵が必要ないチャパティの方が、簡単に作れそうですね」
……まだ、お店について考えてそうだな。
「……もしかしたら、魔道具にできる、かも。……それと、ソフィア。……ナン、おかわり、あるよ? ……もちろん、カレーも。……それと、チーズナンも、作ってみた」
お、それは俺も食べたい。
皆も気になったようで、全員がチーズナンも食べていた。
それと、スパイスも自分で調合したようだ。
俺が前にお土産としてヒカリに渡したスパイスを分析して、そこからアレンジしたらしい。
……出店できそうな理由が、どんどん出てくるな。
◇
あー、おいしかった。
結構な量があるように思えたが、食べきってしまったな。
……まあ、主に食べていたのはメイとソフィアだけど。
それに、出店にはメイも乗り気みたいで、ナンを食べつつソフィアと色々と話し合っていた。
あの感じからして、本当に出店しそうだな。
……あっ! カレーで思い出した。
後で勇者と魔王の本について、聞こうと思っていたんだった。
今は食休みって感じな雰囲気だし、ちょうどよさそうだ。
「メイ、ちょっと確認したいことがあるんだが、いいか? この本についてなんだけど」
と、俺が本屋さんで買った例の本を見せた。
「……人間界の、本?」
「ああ。これは勇者と魔王の物語の本なんだけど、どうやら魔界に伝わっている本とかなり内容が違いそうなんだ。この辺り、読んでもらっていいか?」
「……わかった」
と、メイに確認してもらうと
「……次は、カレーライスを作る」
なんて言われた。
「いや、あの、メイさん?」
「……冗談。……確かに、魔界に伝わっている話とは、全然違う。……この本は、創作性が高い物語になってる。……それでいて、誰でも読みやすいよう、わかりやすく書かれている、と思う。……魔界の本は、もっと事実に近い感じ」
「やっぱり、そうなんだな」
「……それと、この本の著者は、魔族に好印象をもってそう、かも。……魔王に対しても、悪感情は、なさそう、かも?」
俺は、そこまでは感じ取れなかったな。
けど確かに、魔族や魔王に関して、悪い人、って感じでは書かれていない印象は受けたな。
それと、色々と本を読んでるだけあってか、本からそこまで読み取れるのは流石って感じだ。
「ってことは、その本を読んだだけだと、魔族に対しての印象は悪くはならなそうだな。……もしかしたら、人間族で魔族に悪い印象を持ってる人は、そんなにいないんじゃないか? 少なくとも、昔よりは減っていると思う」
「……そう、かな? ……もしそうなら、嬉しい、かも」
前も考えたけど、俺が出会った人の中で、魔族を悪く言っている人は一人もいなかったんだよな。
「なあ、メイ。魔皇たちって、度々人間界に行っているけど、魔族に対する話とかは聞かなかったのか?」
「……私は、あまり人間界に行かないから、ないかな。……ハヤテは、それを聞くのが苦手そうで、無意識に避けている、かも? ……ホムラは、長い目で見ているから、気にしていなさそう。……レイは、酒場とかも行くから、悪い話も聞いている、かも? ……けど、内容には偏りがありそう、かも。……アオイは、魔道具ばかりみてそう、かも」
……なるほど。
言われてみれば、その通りかもしれない。
もしそうだとしたら、今の人間族が魔族に対してどう思っているか、知るすべはあんまりなさそうかもな。
というか、
「もっと早く、メイに話を聞けばよかったかもな。皆のことよく見ているようだし、分析も的確な気がするし」
「……本を書くのに、参考にしているから。……もちろん、ハクトも」
「あー、そういうことか。……俺を元にした人物が本に出てくるかも、って考えると、ちょっと恥ずかしいかも」
「……大丈夫。……わかる人にしかわからないし、悪い人物としては出てこない」
「それならいい、のかな?」
まあ、俺を知っている人は人間界と魔界、どっちの世界にも少ないし、単なる物語の登場人物、で終わるだろうな。
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