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第九章
第150話 魔族とドラゴン
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今回は、半分以上が”龍の冒険”の内容についてです。
_____________________________________
本を読み始めたところ、内容がおもしろかったこともあって、たまに休憩を挟みつつも一気に読んでしまった。
それと、休憩する時に皆の様子を見たけど、全員が本に集中していた。
……モニカも含め、やっぱり皆、本が好きなんだな。
本の内容としては、初めの方は王道的な展開だった。
序盤は、周囲の仲間よりも弱い龍がとある魔族と出会い、その魔族から与えられた様々な特訓をして段々と強くなっていく、といった過程が面白く書かれていた。
しかし、龍が十分に強くなり、周りの仲間にも認められたところで、その魔族は忽然と姿を消してしまう。
龍は仲間の反対を押し切り、その魔族を探して冒険に出ることにした。
冒険中、この龍は何度も壁にぶつかったり、くじけそうになったり、なんてことはなく、身につけた力で全てを解決していった。
そしてついに、目的の魔族を見つけたのだが……。
その魔族と出会ったのは、別の魔族から襲われていた時だった。
龍は襲っている魔族を難なく撃退し、その魔族に尋ねた。
何故、突然自分の前から姿を消したのか、と。
するとその魔族は少し悩んだ後、龍が十分に強くなり、それ以上に強くなる特訓内容を思いつかなかったから、と説明した。
続けて龍は、もう一つ疑問に思ったことを尋ねた。
相手は弱かったのに何故反撃をしなかったのか、魔力が尽きていたり調子が悪かったのか、と。
するとその魔族は、少しの間躊躇した後、ポツリポツリと話し始めた。
自分が実はとても弱い魔族であること、龍を見て偶然よい訓練を思いついたから、それを試しに言ってみたこと。
そして、それを見た自分も同じように強くなれるのでは? と努力したが、結局は駄目だったこと。
その話を聞いていた龍は、段々とその魔族に対し興味を失っていくのを自覚した。
強い自分は、その魔族よりもかなり偉い立場にいるとわかったこと。
特訓は偶然思いついたこと、これ以上自分を強くすることができない、つまり部下としても必要性を感じられなかったことが理由だ。
そして龍は、話を聞き終わった後で、その魔族の前から姿を消すため、何も言わず空へと舞い上がった。
なんというかこの辺は、主人公の龍がかなりドライに感じだな。
……おそらく、魔族の感性を反映しているんだろうな。
そして龍が上空に上がり仲間の下へと帰ろうとした時、さっき襲っていた魔族が、何人かの魔族と一緒にやってくるのが見えた。
そしてその集団は、先ほど襲われた魔族を見つけたようだった。
龍は魔力で聴覚を拡張し、その様子を伺っていると、その集団のリーダー格と思われる魔族が、龍はどこだ、教えろ、と迫っていた。
それに対して、あの魔族は何も答えなかった。
龍は、何故何も言わないのかを疑問に思ったが、それ以上に魔族の上に立つリーダー格に興味を持った。
魔族を従えている魔族はどれだけ強いのだろうか、と。
そして龍は、その魔族に勝負を挑んだのだが、相手は集団で戦ってきた。
数が多いことに加え、移動する速度が思いのほか速く、巨体である龍では上手く攻撃を捌くことができなかった。
そんな防戦一方であった龍に、突然念話が届き始めた。
それは、右から攻撃が来る、だとか、正面に素早い魔法をうて、などの指示だった。
訝しく思いつつも龍はそれに従い、段々と魔族の集団に対してかなり有利な状況になった。
そして勝てないとみるや、その魔族の集団は全力で逃げ出した。
龍はそれを追わず、念話の主である、あの魔族に尋ねた。
何故、前は使えなかった念話が使えるのか、リーダー格の魔族から聞かれた時に何も言わなかったのか、と。
念話は、以前龍が激しい特訓をしている時、声が届かないことがあったため、その時から練習していたこと、言わなかったのはさっき助けたもらったから、と答えた。
その答えは、龍にはあまり理解できないものだった。
それならと、もう一つ疑問に思ったことである、何故的確に自分に指示ができたのかと尋ねた。
すると、自分は弱いため、強い魔族から何かを得ようと観察する癖がついた。
おそらくこれが要因だろう、と。
龍は、自分に的確な特訓を指示できたのはこれが理由なのかもしれない、と考えた。
この会話で、再度その魔族に興味を持った龍は、魔族を部下とし、仲間の下に戻ることにした。
魔族を背中に乗せて飛び、仲間がいる場所にそろそろ辿り着きそうだ、という時、少し遠くに大量の魔物がいるのを見つけた。
これはいわゆるスタンピードのようなもので、それが仲間のいる場所に向かって言っているのがわかった。
この量では、流石に龍の集団でも大変なことになる、と龍は焦った。
その様子を感じ取った魔族は、自分たちなら何とかできるかも、と提案した。
龍は半信半疑に思いつつ、その魔族の提案にのることにした。
龍が複数体いても無理だと思われたそれを、魔族は的確な指示を出しつつ魔物のリーダー格から潰していった。
そして魔物たちはついに仲間たちの下へ辿り着いたが、それを難なく倒していった。
龍はそれを見て、強さとはなんだろうか、と疑問に思い始めた。
そもそも、この魔族に特訓をしてもらわなければ、自分は強くなれなかった。
そして、この魔族がいなければ、自分は魔族の集団に負けていたであろうし、この魔物の群れにも適切に対処できなかったであろう、と。
仲間の下に戻った龍は再会を喜びつつ、この魔族のおかげで魔物の群れに対処できた、と言いつつ仲間に魔族を紹介したのだが、そんなに弱そうな魔族が部下なのはおかしい、弱い魔族の指示に従うなんて、どっちが部下かわからない、というようなことを言われてしまう。
それを聞いた龍はさらに悩み、最終的にはその仲間と自分とは考えが違っている、と魔族と一緒にその集団から旅経つことにした。
そして二人は魔界中を飛び回り、いつしかドラゴンライダーと呼ばれた、という感じで物語が終わっていた。
◇
何というか、魔物と魔族の価値観の違い、魔族自体の価値観について触れている物語だったな。
……これを書いた魔族は、いったいどんな人物だったのだろうか、ちょっと気になってくるな。
なんてことを考えていると、俺の様子に気づいたリューナと本の感想会が始まった。
リューナは最後の、魔界中を飛び回ったこと、ドラゴンライダーと言われた部分に憧れを抱いたようだ。
……リューナ、このドラゴンライダーをやりましょう、とか言わないよな?
それと、この本には続編があるらしく、二人が魔界中を飛び回る話のようだ。
リューナは、この本の続編の方がよりお気に入りのようで、俺に積極的におすすめしてきた。
まあ俺も続きは気になるし、次はそれを読んでみようかな。
とはいえ、ずっと座っていたし一度体をほぐさないとなと思い、立ち上がったのだが、
「あれ? なんか思ったより全然体が凝ってないな」
と、思わず言ってしまった。
前に教わった、身体強化の魔法を弱めにかける、って対策をするのを忘れてたのに。
俺が疑問に思っていると、メイが本からぱっと顔をあげ、
「……この椅子が、魔道具になってる。……座っていると、体の魔力が循環する」
と説明してくれた。
この図書館、本を読むための魔道具が充実してるな。
「ああ、そういうことか。……この椅子、ちょっと欲しいな。どこかで買えたりする?」
「……後で、聞いてみる」
「あ、お値段次第なのですが、私もお願いしたいです。……ハクトさんと同じように、私も疑問に思っていたのですが、そういう事だったのですね」
と、モニカもこの椅子が気になったようだ。
……ソフィアはどうかな、と思ったけど本に集中しているみたいだな。
「……それと、そろそろお昼」
「あー。本に集中してたから気づかなかったけど、お腹が減ってるな。けど、ソフィアが本に集中しているみたいだ――」
「いえ、問題ないです。お昼休憩にしましょう」
うお、びっくりした。
……さっきまで本に集中していたのに。
おそらく、お昼、という言葉に反応したんだろうな。
_____________________________________
一つの物語を考えるのは楽しかったのですが、短くまとめるのは中々難しかったです……。
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本を読み始めたところ、内容がおもしろかったこともあって、たまに休憩を挟みつつも一気に読んでしまった。
それと、休憩する時に皆の様子を見たけど、全員が本に集中していた。
……モニカも含め、やっぱり皆、本が好きなんだな。
本の内容としては、初めの方は王道的な展開だった。
序盤は、周囲の仲間よりも弱い龍がとある魔族と出会い、その魔族から与えられた様々な特訓をして段々と強くなっていく、といった過程が面白く書かれていた。
しかし、龍が十分に強くなり、周りの仲間にも認められたところで、その魔族は忽然と姿を消してしまう。
龍は仲間の反対を押し切り、その魔族を探して冒険に出ることにした。
冒険中、この龍は何度も壁にぶつかったり、くじけそうになったり、なんてことはなく、身につけた力で全てを解決していった。
そしてついに、目的の魔族を見つけたのだが……。
その魔族と出会ったのは、別の魔族から襲われていた時だった。
龍は襲っている魔族を難なく撃退し、その魔族に尋ねた。
何故、突然自分の前から姿を消したのか、と。
するとその魔族は少し悩んだ後、龍が十分に強くなり、それ以上に強くなる特訓内容を思いつかなかったから、と説明した。
続けて龍は、もう一つ疑問に思ったことを尋ねた。
相手は弱かったのに何故反撃をしなかったのか、魔力が尽きていたり調子が悪かったのか、と。
するとその魔族は、少しの間躊躇した後、ポツリポツリと話し始めた。
自分が実はとても弱い魔族であること、龍を見て偶然よい訓練を思いついたから、それを試しに言ってみたこと。
そして、それを見た自分も同じように強くなれるのでは? と努力したが、結局は駄目だったこと。
その話を聞いていた龍は、段々とその魔族に対し興味を失っていくのを自覚した。
強い自分は、その魔族よりもかなり偉い立場にいるとわかったこと。
特訓は偶然思いついたこと、これ以上自分を強くすることができない、つまり部下としても必要性を感じられなかったことが理由だ。
そして龍は、話を聞き終わった後で、その魔族の前から姿を消すため、何も言わず空へと舞い上がった。
なんというかこの辺は、主人公の龍がかなりドライに感じだな。
……おそらく、魔族の感性を反映しているんだろうな。
そして龍が上空に上がり仲間の下へと帰ろうとした時、さっき襲っていた魔族が、何人かの魔族と一緒にやってくるのが見えた。
そしてその集団は、先ほど襲われた魔族を見つけたようだった。
龍は魔力で聴覚を拡張し、その様子を伺っていると、その集団のリーダー格と思われる魔族が、龍はどこだ、教えろ、と迫っていた。
それに対して、あの魔族は何も答えなかった。
龍は、何故何も言わないのかを疑問に思ったが、それ以上に魔族の上に立つリーダー格に興味を持った。
魔族を従えている魔族はどれだけ強いのだろうか、と。
そして龍は、その魔族に勝負を挑んだのだが、相手は集団で戦ってきた。
数が多いことに加え、移動する速度が思いのほか速く、巨体である龍では上手く攻撃を捌くことができなかった。
そんな防戦一方であった龍に、突然念話が届き始めた。
それは、右から攻撃が来る、だとか、正面に素早い魔法をうて、などの指示だった。
訝しく思いつつも龍はそれに従い、段々と魔族の集団に対してかなり有利な状況になった。
そして勝てないとみるや、その魔族の集団は全力で逃げ出した。
龍はそれを追わず、念話の主である、あの魔族に尋ねた。
何故、前は使えなかった念話が使えるのか、リーダー格の魔族から聞かれた時に何も言わなかったのか、と。
念話は、以前龍が激しい特訓をしている時、声が届かないことがあったため、その時から練習していたこと、言わなかったのはさっき助けたもらったから、と答えた。
その答えは、龍にはあまり理解できないものだった。
それならと、もう一つ疑問に思ったことである、何故的確に自分に指示ができたのかと尋ねた。
すると、自分は弱いため、強い魔族から何かを得ようと観察する癖がついた。
おそらくこれが要因だろう、と。
龍は、自分に的確な特訓を指示できたのはこれが理由なのかもしれない、と考えた。
この会話で、再度その魔族に興味を持った龍は、魔族を部下とし、仲間の下に戻ることにした。
魔族を背中に乗せて飛び、仲間がいる場所にそろそろ辿り着きそうだ、という時、少し遠くに大量の魔物がいるのを見つけた。
これはいわゆるスタンピードのようなもので、それが仲間のいる場所に向かって言っているのがわかった。
この量では、流石に龍の集団でも大変なことになる、と龍は焦った。
その様子を感じ取った魔族は、自分たちなら何とかできるかも、と提案した。
龍は半信半疑に思いつつ、その魔族の提案にのることにした。
龍が複数体いても無理だと思われたそれを、魔族は的確な指示を出しつつ魔物のリーダー格から潰していった。
そして魔物たちはついに仲間たちの下へ辿り着いたが、それを難なく倒していった。
龍はそれを見て、強さとはなんだろうか、と疑問に思い始めた。
そもそも、この魔族に特訓をしてもらわなければ、自分は強くなれなかった。
そして、この魔族がいなければ、自分は魔族の集団に負けていたであろうし、この魔物の群れにも適切に対処できなかったであろう、と。
仲間の下に戻った龍は再会を喜びつつ、この魔族のおかげで魔物の群れに対処できた、と言いつつ仲間に魔族を紹介したのだが、そんなに弱そうな魔族が部下なのはおかしい、弱い魔族の指示に従うなんて、どっちが部下かわからない、というようなことを言われてしまう。
それを聞いた龍はさらに悩み、最終的にはその仲間と自分とは考えが違っている、と魔族と一緒にその集団から旅経つことにした。
そして二人は魔界中を飛び回り、いつしかドラゴンライダーと呼ばれた、という感じで物語が終わっていた。
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何というか、魔物と魔族の価値観の違い、魔族自体の価値観について触れている物語だったな。
……これを書いた魔族は、いったいどんな人物だったのだろうか、ちょっと気になってくるな。
なんてことを考えていると、俺の様子に気づいたリューナと本の感想会が始まった。
リューナは最後の、魔界中を飛び回ったこと、ドラゴンライダーと言われた部分に憧れを抱いたようだ。
……リューナ、このドラゴンライダーをやりましょう、とか言わないよな?
それと、この本には続編があるらしく、二人が魔界中を飛び回る話のようだ。
リューナは、この本の続編の方がよりお気に入りのようで、俺に積極的におすすめしてきた。
まあ俺も続きは気になるし、次はそれを読んでみようかな。
とはいえ、ずっと座っていたし一度体をほぐさないとなと思い、立ち上がったのだが、
「あれ? なんか思ったより全然体が凝ってないな」
と、思わず言ってしまった。
前に教わった、身体強化の魔法を弱めにかける、って対策をするのを忘れてたのに。
俺が疑問に思っていると、メイが本からぱっと顔をあげ、
「……この椅子が、魔道具になってる。……座っていると、体の魔力が循環する」
と説明してくれた。
この図書館、本を読むための魔道具が充実してるな。
「ああ、そういうことか。……この椅子、ちょっと欲しいな。どこかで買えたりする?」
「……後で、聞いてみる」
「あ、お値段次第なのですが、私もお願いしたいです。……ハクトさんと同じように、私も疑問に思っていたのですが、そういう事だったのですね」
と、モニカもこの椅子が気になったようだ。
……ソフィアはどうかな、と思ったけど本に集中しているみたいだな。
「……それと、そろそろお昼」
「あー。本に集中してたから気づかなかったけど、お腹が減ってるな。けど、ソフィアが本に集中しているみたいだ――」
「いえ、問題ないです。お昼休憩にしましょう」
うお、びっくりした。
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